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29:アンナの報告 その1
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皆様おはようございます。
ラフェネスタ侯爵家に使えるアンナと申します。
幼い頃に孤児であった私は道端でボロ雑巾のようになっているところをマサ様に助けて頂いた縁で仕えさせて頂いております。
この家の天使であるコーラルお嬢様がお生まれになってからはお嬢様付きの侍女として過ごしております。専任侍女ですので、結婚しなかった際はずっとお嬢様に付き従う所存です。
最も、孤児の生まれである私が良縁に恵まれる機会などないと思われますが。
私のことはともかくお嬢様のことです。
お嬢様は普通のお子様とはどこか違う雰囲気をもった方でいらっしゃいます。
いくら同じ種とはいえ、こうも早く大人の話す言葉を理解する子供がいるでしょうか。
夜はきっちりと同じ時間に睡眠をとられる為、たまたま帰宅なさった旦那様に呼ばれます。
お嬢様を寝かしつけてからでしたので私が最後のようです。
先にいつもの方々がいらっしゃいました。
家政婦長であり侍女長でもある男爵夫人のマサ様。
現在不在であられるラフェネスタ家の女主人を変わりに勤めていらっしゃいます。
庭師であるサムさん。
お年を召した方でいらっしゃいますが攻撃する隙のない方です。
お嬢様付きは私しかおりませんので護衛としてもお役に立てるようマサ様から鍛えていただいているのですが……まだまだ成長する過程です。いつかは勝つつもりではいます。
料理長であるダンテさん。
この方はある日突然旦那様が連れてこられた方ですね。
当時はかなりボロボロでしたが筋肉質なところと体捌きからしてあちらこちらにいる傭兵よりも強そうです。
「遅れて申し訳ございません」
「大丈夫だ。今集まったところだしな」
頭を垂れる私に旦那様はそうおっしゃいます。
旦那様がこの時間帯に戻ってこられること自体珍しいことです。
実に数ヶ月ぶりでしょうか……。
「コーラルは寝たのかな」
「恙なくぐっすりと」
ご子息であるファウル様の問いかけにさっと応えました。
ラフェネスタ家にはそういう血でも流れているのでしょうか。
御年9歳でいらっしゃいながらも既に領地経営に携わっていらっしゃいます。
旦那様が経営に疎く……げふんげふん。
ちょっとマサ様の視線が痛いので誤魔化しましょう。
旦那様は剣を振ることがお好きとのこと。
ですので現在の職である騎士団長というのはとても身にあっているのでしょう。
忙しい旦那様の代わりに旦那様の弟様が領地経営をなさっています。
ファウル様が5歳の頃から既にその教育は始まっているのだとか。
旦那様の弟様は温厚な方ですが、どこかつかめない方でもいらっしゃいます。
早くファウル様に領地を任せて温泉旅行に行きたいとこぼしていたとかなんとか。
かと言ってファウル様も全てを捨ててコーラル様と一緒にいたいとかおっしゃいますし。
ラフェネスタ家ってそういう方ばかりなんでしょうか。
「では、この前の報告からいこうか」
口火を切ったのはファウル様。
一応書面ではご報告している内容です。
お嬢様のスキルについて。
私から報告ですね。
「最近お昼寝の時間、一人になられた頃にお嬢様が部屋から消えていることがありました。始めは拉致の疑いも持ちながら捜索しておりましたが、どうやらお昼寝の時間を削って隙間の世界へ行かれているようでした。最近では時間感覚があるのかお昼寝が終わる時間に帰ってこられます」
「アンナの報告を受けて見守ることになったのです。まさか一日目で行くとは思いませんでしたが」
流石に部屋から消えていたら気付くというものです。
ファウル様にご報告したところ関係者全員でお昼寝中のお嬢様を見守ることになったのですが、ファウル様がご担当された初日に隙間の世界へ行かれました。
恐らく入手先は隙間の世界でしょうか。
棚の下に隠してあった取っ掛かりのある木の棒で器用に扉を開けていたのです。
場所は衣装部屋への続き扉。
そちらを一定時間、隙間の世界へ繋がる扉にしていらっしゃいました。
まさか2歳のお子様がそこまでされるなんて誰が思うでしょうか。
お嬢様天才では……とは思いましたが、1人で行くなんて危険なことはさせられません。
一応転移という魔法は存在します。
お嬢様のしたことはそれとは別に恐らく隙間の世界のスキルを元にした派生魔法でしょう。
隙間の世界限定の転移魔法ということです。
「コーラルは『はざまのとびら』とそう唱えていたように思います」
「お嬢様は隙間の世界を狭間と呼んでいらっしゃるのでしょうか」
隙間の世界と呼ばれることはお嬢様の目の前で説明がありましたしね。
しかし、狭間なんて難しい言葉をどこで知ったのでしょうか……。
ラフェネスタ侯爵家に使えるアンナと申します。
幼い頃に孤児であった私は道端でボロ雑巾のようになっているところをマサ様に助けて頂いた縁で仕えさせて頂いております。
この家の天使であるコーラルお嬢様がお生まれになってからはお嬢様付きの侍女として過ごしております。専任侍女ですので、結婚しなかった際はずっとお嬢様に付き従う所存です。
最も、孤児の生まれである私が良縁に恵まれる機会などないと思われますが。
私のことはともかくお嬢様のことです。
お嬢様は普通のお子様とはどこか違う雰囲気をもった方でいらっしゃいます。
いくら同じ種とはいえ、こうも早く大人の話す言葉を理解する子供がいるでしょうか。
夜はきっちりと同じ時間に睡眠をとられる為、たまたま帰宅なさった旦那様に呼ばれます。
お嬢様を寝かしつけてからでしたので私が最後のようです。
先にいつもの方々がいらっしゃいました。
家政婦長であり侍女長でもある男爵夫人のマサ様。
現在不在であられるラフェネスタ家の女主人を変わりに勤めていらっしゃいます。
庭師であるサムさん。
お年を召した方でいらっしゃいますが攻撃する隙のない方です。
お嬢様付きは私しかおりませんので護衛としてもお役に立てるようマサ様から鍛えていただいているのですが……まだまだ成長する過程です。いつかは勝つつもりではいます。
料理長であるダンテさん。
この方はある日突然旦那様が連れてこられた方ですね。
当時はかなりボロボロでしたが筋肉質なところと体捌きからしてあちらこちらにいる傭兵よりも強そうです。
「遅れて申し訳ございません」
「大丈夫だ。今集まったところだしな」
頭を垂れる私に旦那様はそうおっしゃいます。
旦那様がこの時間帯に戻ってこられること自体珍しいことです。
実に数ヶ月ぶりでしょうか……。
「コーラルは寝たのかな」
「恙なくぐっすりと」
ご子息であるファウル様の問いかけにさっと応えました。
ラフェネスタ家にはそういう血でも流れているのでしょうか。
御年9歳でいらっしゃいながらも既に領地経営に携わっていらっしゃいます。
旦那様が経営に疎く……げふんげふん。
ちょっとマサ様の視線が痛いので誤魔化しましょう。
旦那様は剣を振ることがお好きとのこと。
ですので現在の職である騎士団長というのはとても身にあっているのでしょう。
忙しい旦那様の代わりに旦那様の弟様が領地経営をなさっています。
ファウル様が5歳の頃から既にその教育は始まっているのだとか。
旦那様の弟様は温厚な方ですが、どこかつかめない方でもいらっしゃいます。
早くファウル様に領地を任せて温泉旅行に行きたいとこぼしていたとかなんとか。
かと言ってファウル様も全てを捨ててコーラル様と一緒にいたいとかおっしゃいますし。
ラフェネスタ家ってそういう方ばかりなんでしょうか。
「では、この前の報告からいこうか」
口火を切ったのはファウル様。
一応書面ではご報告している内容です。
お嬢様のスキルについて。
私から報告ですね。
「最近お昼寝の時間、一人になられた頃にお嬢様が部屋から消えていることがありました。始めは拉致の疑いも持ちながら捜索しておりましたが、どうやらお昼寝の時間を削って隙間の世界へ行かれているようでした。最近では時間感覚があるのかお昼寝が終わる時間に帰ってこられます」
「アンナの報告を受けて見守ることになったのです。まさか一日目で行くとは思いませんでしたが」
流石に部屋から消えていたら気付くというものです。
ファウル様にご報告したところ関係者全員でお昼寝中のお嬢様を見守ることになったのですが、ファウル様がご担当された初日に隙間の世界へ行かれました。
恐らく入手先は隙間の世界でしょうか。
棚の下に隠してあった取っ掛かりのある木の棒で器用に扉を開けていたのです。
場所は衣装部屋への続き扉。
そちらを一定時間、隙間の世界へ繋がる扉にしていらっしゃいました。
まさか2歳のお子様がそこまでされるなんて誰が思うでしょうか。
お嬢様天才では……とは思いましたが、1人で行くなんて危険なことはさせられません。
一応転移という魔法は存在します。
お嬢様のしたことはそれとは別に恐らく隙間の世界のスキルを元にした派生魔法でしょう。
隙間の世界限定の転移魔法ということです。
「コーラルは『はざまのとびら』とそう唱えていたように思います」
「お嬢様は隙間の世界を狭間と呼んでいらっしゃるのでしょうか」
隙間の世界と呼ばれることはお嬢様の目の前で説明がありましたしね。
しかし、狭間なんて難しい言葉をどこで知ったのでしょうか……。
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