けもみみ幼女、始めました。

暁月りあ

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ネフリティス村

15特殊付与にょ

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「それじゃあ、早速試してみるかにょ」

 ごそごそと懐からラピスラズリを取り出したエテルネルを見て、アルモネの表情が一気に明るくなる。エテルネルの技能レベルが高いからか、これから行われることを察したのだろう。
 ペンダントに嵌め込める【特殊付与】は2つ。
 これは作品の精巧度で変わるのだが、あえて言うのならば天啓人が作れば枠は最大3つ。しかし、NPCが作れた枠は1つだけだった。それを考えるならばあの青年は本当に腕が良いと言えるだろう。

【生産技能《メイキングスキル》:特殊付与】

 まずは技能を発動させると、対象のペンダントが淡く光って魔法円のようなものが浮き上がる。きらきらとダイヤモンドダストのような光を振りまく光景はいつみても綺麗だ。

【特殊付与指定:補助技能《アシストスキル》:周囲感知】

 続いて目の前に現れた透明なパネルは【特殊付与】する技能の選択画面だ。これはエスと変わらない仕様らしく、エテルネルが取得した技能がずらりと並んでいた。その中から選んで決定すれば魔法円がラピスラズリの中に吸い込まれ、パキンッと心臓に悪い何かが折れたような音のあとにパネルに成功の文字が浮かぶ。

【第二特殊付与指定:補助技能《アシストスキル》:鑑定】

 それを確認してからふたつ目の技能を選択して決定すると、再び現れた魔法円はひとつ目と同じようにラピスラズリの中へ吸い込まれて成功した。技能が未熟だと何かが爆発したようなエフェクトのあとにパネルに失敗と浮かぶのだが、今回設定する技能が初歩的なものなので失敗はまずない。

「あら、その技能なら必要ないんじゃないの」
「ほんとならそうにゃ。これはただ私が天啓人じゃないっていうアピールのためのものってだけにょ」
「本当は使えるけど、態とそうするってことね」

 持っている技能にも関わらず付与するという行為にようやく理解したらしい。また、低レベルの技能のためにそこまで熟練度は必要ではない。それに少しばかりがっかりしたようだ。
 天啓人なら持っていて当たり前の技能の中には絶対に必要なものもある。状況によっては【能動技能《オートスキル》】と呼ばれる自動的に発動する技能もすべて発動させないようにOFFへ切り替えしなければならないだろう。また、いくつかこのペンダントと同じようなものを作る必要がありそうだ。

「だにょ。持っている技能は【直進矢】だけにするつもりだからにょ」
「……それだけで済めばいいわね」
「済むといいんじゃない。済ませるんだにょ」

 きりっとすまし顔で言ってみたものの、エテルネルの言葉にアルモネは深い溜息をついた。
 アルモネがなんと思おうともそう心がけることが一番大切なのである。余計な騒動に巻き込まれるのは嫌だと言いつついつも巻き込まれるのは不可抗力なのだと心のなかでエテルネルは言い訳した。

「まあ、こんな簡単な【特殊付与】じゃあ満足しないだろうからにょ。これあげるにょ」

 貸しは作るよりも作られたい側のエテルネルである。この程度の【特殊付与】で満足しないだろうアルモネには勿論他の方法を用意してあった。
 インベントリから取り出した指輪を見て、アルモネが上げそうな悲鳴を必死に抑えているところを見て満足する。

「これ、エレクトラムリングじゃない……!?」

 宝石とは別に、鉱石のなかでレア度が低い順に、カッパー、シルバー、ミスリル、エレクトラム、ゴールドとなる。その上も存在するにはするだろうが、鉱石を使用するような指輪やネックレス、鎧など特定の装備は【生産技能《メイキングスキル》】の中でも【鍛冶】と【彫金】が割合を占めている為、2つの技能を上げていないエテルネルはよくわからない。
 なぜ、その2種類の技能が必要なのかというと【鍛冶】で土台を作り【彫金】で装飾を施すのだ。鉱石は指輪にせよ鎧にせよ触媒や装飾となる宝石と違って土台部分となる。
 中でもミスリルまでの鉱石は比較的採取しやすいのだが、エレクトラムやゴールドになると廃人がいくような高レベルダンジョンの最下層にあるようなものだ。一般プレーヤーが手の出ないそれにアルモネが驚くのも無理はない。

「それにゃ、月下天津げっかてんしんが【鍛冶】と【彫金】の熟練度あげるときに大量に作ったうちの一つなんにょ。しばらくそのままオークションに出してたんだけど、相場がおかしいくらいに崩れてエールに怒られてからは黙々と私達に押し付けるか倉庫にいれてたにょ」

 月下天津とは同じギルドにいた巨人族のカンストプレイヤーのことだ。エテルネルと同じように不可抗力で運営から不名誉な称号を渡された天啓人。優れた鍛冶師としても有名で、彼は戦うというよりも生産メインで活動していた。山の奥深くにある洞窟で必要な材料を採取しながら大量に装備を作っては天啓人が主に使用するオークションで流して相場を崩し、クレームを受けてエテルネルの実弟であるエールが説教をするという流れがあった。もちろんカンストしているだけあって、戦争があるときには最前線で戦っていった一人である。

「エレクトラムリングにも驚きだけど【特殊付与】の内容も【補助技能《アシストスキル》】の【物理防御力上昇5】【魔法防御力上昇5】、それに【体力持続回復5】ってどこに戦争にいくのよ」
「持っていて損はないにょ。この世界に来てすぐ【身体強化3】を試したんだけど、5は攻撃過多だったし。その2つで【身体強化3】程度の効果だからまだ扱いやすいはずにょ」
「っていうけど【物理防御力上昇】は【身体強化】だし、【魔法防御力上昇】は【精神強化】の前提技能じゃないの。本当に特別なときにしかおいそれと出せないわこれ……」

 それを使わなければならないような事態になることはまずあり得ない。しかし、この世界ではすでにエテルネル達天啓人が存在している時点であり得ないことが在り得ているのだ。用心に越したことはない。

「まあ、子守の代金としてもらうとするわ」
「ん、その子守って私のことかにょ。喧嘩売ってるなら買うにょ?」
「本気にするな馬鹿」

 ズビシッと音がなるくらい強烈なチョップをくらったが、HPバーは1%も減らず、すこしばかり揺れた程度だった。

 それから数日後、アルモネと商隊はまた次の街へと旅立った。
 この世界の住人らしく【召喚技能《サモンスキル》】を使った方法で手紙を送り合おうと一方的に約束されて。筆不精なエテルネルが返信を書くかは不明であるが。
 商隊から稼ぎ、そして揃えた冬支度で変わらない日課を繰り返し、冬は窓下まで雪がつもり、屋根の雪下ろしをしたり。そして、ついに春がやってくる。

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