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プロローグ
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その日は、とても強い雨が降っていた。
そう、とても、とても強い、目の前すら見えづらいほどの強い雨。
それなのに、轟々と燃えていた。
悲鳴が、悲鳴が上がる。断末魔があがる。
屋敷が、人が、全てが燃えた。そして、そんな叫びすら消し去るような雨が降り続く。
煤だらけになって、木の虚に膝を抱えて座っていた。
「生き残りは、お前だけか」
そう声をかけた人がいた。
あれだけ暗かった空が明るくなり始め、その金髪が反射して輝いた。瞳は逆光だからか、紫の瞳が暗い色にも見える。私とそう変わらない年頃の少年が、私に手を伸ばした。
「お前の名は?」
聞かれても私は答えることは出来なかった。
一度も呼ばれなかった名前。名前という単語を識っていようとも、自分の名前は知らない。教えられたことはなかった。屋敷にいる誰一人として呼ばれることさえなかった。
何も答えない私にしびれを切らせた少年は、私の腕を掴んで虚から引っ張り出した。
目の前一杯に美少年と言っていいほど顔が整った少年の顔が迫る。その、紫の瞳からどうしても目を放すことが出来なかった。
「……名がないというのなら、俺がつけよう。リエンティア。それが、今日からお前が名乗る名前だ」
それが後に王太子だと紹介される少年、アルフォン様と私、リエンティアの出会い。
アルフォン様の瞳が泣きそうに揺れたところを見たのは、その時、ただ一度だけだった。
そう、とても、とても強い、目の前すら見えづらいほどの強い雨。
それなのに、轟々と燃えていた。
悲鳴が、悲鳴が上がる。断末魔があがる。
屋敷が、人が、全てが燃えた。そして、そんな叫びすら消し去るような雨が降り続く。
煤だらけになって、木の虚に膝を抱えて座っていた。
「生き残りは、お前だけか」
そう声をかけた人がいた。
あれだけ暗かった空が明るくなり始め、その金髪が反射して輝いた。瞳は逆光だからか、紫の瞳が暗い色にも見える。私とそう変わらない年頃の少年が、私に手を伸ばした。
「お前の名は?」
聞かれても私は答えることは出来なかった。
一度も呼ばれなかった名前。名前という単語を識っていようとも、自分の名前は知らない。教えられたことはなかった。屋敷にいる誰一人として呼ばれることさえなかった。
何も答えない私にしびれを切らせた少年は、私の腕を掴んで虚から引っ張り出した。
目の前一杯に美少年と言っていいほど顔が整った少年の顔が迫る。その、紫の瞳からどうしても目を放すことが出来なかった。
「……名がないというのなら、俺がつけよう。リエンティア。それが、今日からお前が名乗る名前だ」
それが後に王太子だと紹介される少年、アルフォン様と私、リエンティアの出会い。
アルフォン様の瞳が泣きそうに揺れたところを見たのは、その時、ただ一度だけだった。
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