緋色の月と破滅の炎

睦月夜風

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第三章 凍てつく大地

第12話 青炎の武士

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「此処がろうちゃんの部屋なの?」
「うん」
月龍つきりゅう君をそこのベッドに寝かせてあげていい?」
「うん····痛いところ無い?」
「ああ、ありがとう」 
 ろうちゃんは月龍つきりゅう君をベッドにそっと置いた
「····それでさ、お前の言う恋人って何してる人なんだ?」
「武士」
「武士····まぁ、戦士か」
「····うん」
「変な術って具体的にどんなの?」
「青色の炎」
「青炎の術ってこと?」
「····多分」
「そして、青髪····うーん、誰····あっ!ろうちゃん、その人ってさ、あの村で一番強かった?」
「うん」
陽炎青龍かげろうせいりゅう?」
「··!そう」
「あー、あの人なんだ」
「知ってるの?」
「うん、一応、師匠みたいなもんだからね」
「···そうなんだ、今、何処に居るの?」
「ごめん、わからない」
「え?」
「あの人、ある日突然消えたの」
「そ、そうなの?」
「うん」
「····そうなんだ、貴方は····知るわけないか」
「まぁな」
「····」
「···楼華ろうか···お前は陽炎かげろうさんを心配しているのか?」
「···うん」
「じゃあ、なんでさ自分の感情や表情を消した?」
「···え?」
「感情はたしかに普通だけど表情はどうして無表情のままなんだ?」
「····」
「心配しているのは分かったけど、ろうちゃんがそんなのだと陽炎かげろうさんも心配すると思うよ?」
「····」
「それにベザットちゃん達もろうちゃんの事物凄く心配してたよ?」
「···」
「ろうちゃん···私、前のろうちゃんが大好きだったの、だからさ···だから···前みたいに笑ってよ、楽しくお喋りしようよ····」
「そうちゃん···」
 私はろうちゃんを抱き締めた
「お願い····ろうちゃん」
「····うん、良いよ」
 その時ろうちゃんの真っ黒だった瞳が空色に変化して私を抱き締めて泣いた
「ごめんね、そうちゃん···私···私···!」
「私も友達なのに、そんなことになってるなんて知らなくてごめん」
「ううん、そうちゃんは謝らないで」
「うう、でも」
「私はそうちゃんや周りの事をどうでもいいやって思ってたの···だから···」
「···感情無かったら意図しなくてもそうなるけどな」
「そうなの?月龍つきりゅう君?」
「ああ、俺も実際花日はなひが死にかけてもどうでも良いって思って助けなかった時があったからな」
「へ、へぇ」
「あれ?つき君も感情失ったの?」
「つき君って····まぁ、それなら良いか、まぁ、うん、俺は元々殺し屋をやってて··」
 その時、月龍つきりゅう君から涙がこぼれた
「あ?え?」 
「あ···ごめん、つき君」
月龍つきりゅう君、貴方、さっきの戦いで殺意をかなり使ったんだから····そりゃ、そうなるよ」
「あ···えと、ごめん」
「大丈夫、心配かけてごめん」
「さっきから私達謝ってばかりね」
「たしかにw」 
「謝らないと気が済まん」
「あはは!」
 そして私達が笑っていると
「あら?楼華ろうかちゃん···もしかして」
 女王様がやって来た
「あ!女王様、ごめんなさい!今まで冷たい態度をとったりして」 
 女王様はろうちゃんを抱き締めた
「良かった····本当に···」
「ご、ごめんなさい、女王様」
「私の方こそ、何も出来なくてごめんね」 
「いやいや!そんなこと無いです!」 
「ごめんなさい····」 
「「····」」


「おお!そうか!戻ったのだな!」
 王様はろうちゃんを抱き締めた
「はい!王様!」
「良かった、本当に良かった」
 王様は涙を流しながらそう言った
 ベザットちゃんも泣いていた
「うう···良かった」
「ろうちゃん··みんなに愛されてたのね」
「そうだな」 
 その時王女様がやって来た
「皆、町に行ってきたら?」
「え?町に?」
「ええ、ベザット貴女も···」
「私は行かない」
「え?」
「絶対に」
「で、でも」
「···ベザットちゃん、町で何かあったの?」
 その時私はあることを思い出した
「(まさか···町でも苛められているの?)」
「···分かったわ、好きにしなさい」
「うん、3人で楽しんできて」
 そう言ってベザットちゃんは行ってしまった
「···ベザットちゃん」
「···皆、着替えよっか」
「····うん」
「執事、月龍つきりゅう君を」
「はい、分かりました、こちらえ」
「あ、はい」


 着替え室
「はい、宗古そうこちゃん」
「ありがとうございます····何でベザットちゃん町にいくのをいやがっているのですか?」
「さぁ、私にも分からないわ」
「そうですか····苛められていないと良いんだけど···」
「そうね」
「ベザットちゃん、私にあんだけの優しくしてくれたから苛められるわけないと思うんだけど···」
「優しい人でも苛められるときは苛められるよ···月龍つきりゅう君もそうだったらしいし」
「あんなに優しいのに···殺し屋ってのは可哀想ね」
「そうね」




「···」
「どうかなされましたか?」
「あ、いや、その···」
「お嬢様の事ですか?」
「···うん」
「お嬢様は····苛められているのです、町でも」
「···何故?」
「分かりません、よく町でたら殴られた跡があり、さらにはよく、お金は全部使って来るのですが何も買って無いのです」
「ってことは···」
「盗られたのでしょうね、そして私も一度住民に聞いたのですが···」
「ですが?」
「皆、知らないと申しておりました」
「···成る程、分かった」
「言っておきますが、殴ったりするのは···」
「いや、全員、閻魔の裁きを受けさせる、俺は次期閻魔だ、窃盗は犯罪、この時点で牢屋送りは確定する」
「そ、そうなのですか、ですが苛めているのが子供だったら」
「そんなの知るか、その親がなんと言おうと閻魔の裁きを受けさせる」
「····分かりました、ですが」
「?」
「町も楽しんできて下さいね?」
「はいはい」



そして私達はお金をもらってお城から出て町に行った
「うわぁ、綺麗」
私は町を見て思わず呟いた
「そうだね、そうちゃん」
町には氷の銅像や氷の木等がいろいろ装飾されていた
「凄いな、ここ」
私は氷になっている木を見た
「どんな仕組みなんだろう」
「それは氷の魔法で作ったのですよ」
私が振り向くとお婆さんが居た
「あ、こんにちはお婆さん」
「こんにちはお嬢様達」
「僕、男ですよ?」
「あら、そうのかい、それで皆さんは町に遊びに来たのですか?」
「はい、王様や王女様にそうして来なさいって言われたので」
「あら、ベザット様はいらっしゃらないの?」
「はい、何故か来ないって言って」
「何でかしらね」
「···お婆さん」
「なんだい?坊や」
「ベザットさんが殴られたりしている奴を見たことがありますか?」
「え?殴る?ベザット様を?」
「はい」
「そんな奴、知りませんよ、ってか誰なんです?そんな無礼な事をする奴は?」
「分かりませんが、本人が苛められていると執事から聞いたので」
「知らないわね、もし居たら、お城に言っておくわね」
「お願いします」
「ええ、それじゃ、皆楽しんで」
「「「はい!」」」




「おいおい、見たか?」
「ああ、今度は3人分の小遣いが貰えるとはな」
「さっさと殴って金盗ろうぜ」
「そうだな」


私達が雑談をしながら歩いていると
「おい!止まれ!」
「あ?」
高校生くらいの連中に囲まれた
「な、なに?」
「おい、お嬢さん達よぉ、殴られたく無かったら金、全部おいて帰るんだな」
「な、なんなの?」
その時高校生は私達に雪玉を投げてきた
「きゃあ!」
ろうちゃんは体制を崩し倒れた
「ほら!早く出せ!」
高校生はろうちゃんに殴りかかった、その時
ガチッ
月龍つきりゅう君が腕を掴んだ
「な、なんだよ、お前!」
「····閻魔様、ご許可を」
(裁判を許します)
「?まあ、良いや 閻魔の裁き」









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