緋色の月と破滅の炎

睦月夜風

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第五章 孤独を照らす藤の花

第6話 厄神の姉

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「····あの野郎····何で此処に」
「し、知り合いなの?」
「俺が殺し屋をしていた時、常に俺に勝負を仕掛けてくる奴だ····くそ、油断した、いつもなら気付いていたのに」
月龍つきりゅう君····」
「俺、助けに行ってくる」
「····おう、そうか」
月龍つきりゅう君、あの人が言う昔に戻ったらダメだよ····それに、殺したらダメだよ」
「分かってる、アイツと約束したんだ」





私は木に磔にされていた
刀と弓は取られた
「うっ··」
「さぁ、来い、睦月夜風むつきよかぜ、今度こそ殺してやる」
「どうして、そこまでして月龍つきりゅう君を殺そうとしてるの···」
「ふん、そんなの当然、俺は何度も負けたからなその分のかりを今、此処で返してもらう」
月龍つきりゅう君は···もう、人を殺さない···そう約束した····人殺しをやめたのよ?」
「そうか、お前との約束でか!」
男は刀を握って近付いてきた
「ならば、お前を殺さないとな」
「ひっ····」
その時
緋桜龍ひざくらりゅう!」
ザン!ザン!
「ふん!」
カン!
「来たか!」
「···返せ」
「ふん!なら俺を殺せ」
「それは出来ない」
「この女の約束でか?」
「いや、違う、元の仲間を殺したくない」
「っ!」
「だから、俺はお前を殺したくない···」
「そうか、なら!」
男は私の首元に刀を当てた
「この女の首が無くなるぜ?」
「····お前、本当に残酷だな」
「あ?」
「弱者救済 強者斬殺」
「!やめて!月龍つきりゅう君!!それをしたら貴方は!貴方は!」
彼岸之朧龍ひがんのおぼろりゅう
ザン!
月龍つきりゅう君は男の腕を斬った
「ぐおっ!?」
そして私の縄を斬った
「うわっ!」
「大丈夫か?」
「つ、月龍つきりゅう君····」
「てめぇ···」
「もう、やめろ、腕が無いのにどうやって戦うんだよ」
「····」
宗古そうこ、すまない、こいつの悪行を許してくれないか?」
「もちろん、許すよ」
「な、舐めるな!」
「だから、動くなって」
「ふざけるな!貴様ら!戦え!」
「俺は戦うのはもうあんまり好きではない」
「くっ、なら、そこの女!」
「私も···」
「こんなんなら、死んだろうが良いぜ···」
その時
「そ、なら、遠慮なく殺してあげる」
「「!」」
ザシュ!
男の首が斬られて落ちた
龍獣りゅうじゅう!?」
「だ、誰?」
その時目の前に白い着物を着て刀を持っている女性が現れた
「初めまして、弟を殺した巫女さん」
「弟?」
ほむらの事よ」
「え!?」
「こんにちわ」
「···」
「そんな用心しないで下さい、敵討ちに来たわけではありませんから」
「え?」
「弟が本当に申し訳ないことをしました」
 女性は頭を下げた
「あ、い、いや、わ、私の方こそ、だ、大事な弟さんを···」
「お墓、作ってくれてありがとうございます」
「···え?」
「貴女ですよね?あの小さなお墓を作ったの」
「え、ええ、来世はこんな残酷な少年じゃなくて優しい少年になってくださいと祈って」
「···あそこまでひどい仕打ちをしたと言うのに···貴方は優しいですね」
「····」
「そして、そこの、優しい殺し屋さん」
「·····」
「いつも手加減してくれて、ありがとう」
「え?手加減?どういう事なの?月龍つきりゅう君」
「···今まで、俺はアイツと戦うときは手加減してたんだ」
「な、何で?」
「····」
「···巫女さん、実は私ね」
「う、うん」
「この子、月龍つきりゅう君に殺されたの」
「え!?」
「····」


それは夜の夏の出来事だった
ほむら、そろそろ寝ましょう?」
「うん!姉ちゃん」
私達は小さな小屋に住んでいた
「····姉ちゃん、俺達ってずっと一緒に居られるの?」
「ええ、ずーっとね」
「···」
ほむらは私に抱きついた
「····」
「どうしたのよ」
「·····何でもない」
その時
ザン!
扉が真っ二つに割れた
「え!?」
ほむら!下がって!」
私はほむらを後ろにいかせた
目の前には
血のような赤色の目、黒色のパーカーを着ていて、血痕がついているナイフを持つ黒色の短髪の少年が立っていた
「···あ、貴方は 睦月夜風むつきよかぜ!」
「······」
「姉ちゃん!」
ほむら!逃げなさい!今すぐに!」
「で、でも姉ちゃんは?」
「私も直ぐに行くわ、だから早く!」
そう言った時
ザシュ!
「····え?」
私は首元を刺された
「姉ちゃん!」
「····」
私は首元を押さえた
「ちっ、頸動脈を斬ったつもりだったんだかな」
「···貴方、何でこんな事をするのよ」
「上からの命令だ」
「····」
「おい、そこのお前」
「な、なんだよ!」
「今すぐに視界から失せろ、そしたら殺さないでやる」
「っ!舐めんなよ!」
「やめて!ほむら!」
「で、でも!」
「貴方が戦って勝てる相手じゃない···見逃してくれるみたいだし今すぐに逃げなさい!」
「······ちっ!」
ほむらは逃げた
「···」
「さて···最後に言い残す事は?」
「···」
「無いのか?」
「弟を···見逃してくれてありがとう」
「······そうか、じゃあな」
ザン!




「それで、私は首を切り落とされたの」
「····」
月龍つきりゅう君···」
「···」
「ひとまず、家に帰ろうよ」
「···そうする」
「そ、それじゃあ、私達は帰ります」
「···ええ····月龍つきりゅう君、一つ言っておくわね······その子を大切にしなさいよ」
「······」




私達は家に帰った
「······」
「つ、月龍つきりゅう君」
「·······」
月龍つきりゅう君は一言もしゃべらず私とも目も合わせようとせずに刀を見ていた
「·····」
そしていつの間にか夜になった
村人の人々には私が月龍つきりゅう君が1人になりたいらしいから行けないと伝え、それ以降私はずっと傍に居た
「····」 
「ね、ねぇ、そろそろ、ね、寝ようよ」
「····ああ」
私達はそれぞれ布団を敷いて中に入って眠りについた

私は夜中に目を覚ました
「····寝れない」
私は横を見た
月龍つきりゅう君は手を私の所まで置いていた
「····ふふっ」
私はその手を掴んで眠りについた


翌朝
「うーん」
私は目を覚ました
「おはよう、月りゅ····あ、あれ!?」
隣に寝ていた月龍つきりゅう君は居なくなっていて布団も畳まれていた
「····ど、何処に行ったの···探さないと!」


川岸
「······」
月龍つきりゅうは川岸の前で佇んでいた
「····俺は····」
その時
夜風よかぜ···」
ドランペがやって来た
「···何だよ」
「····お前、宗古そうこちゃんは?」
「···家で寝てると思う」
「はぁ」
「····ドランペ、お前ってさ」
「なんだ?」
「俺の父さんだよな」
「····バレたか」
「当たり前だ」
「····はぁ、言っとくけど宗古そうこ、起きてお前の事、めっちゃ探してるぞ」
「····そっか」
「お前、早く戻れ」
「ヤダ」
「···何故だ」
「···宗古そうこに顔を合わせたくない」
「は!?何でだよ!お前、まさか、宗古そうこの事····」
「····もしかしたら嫌いになったのかもな」
「お前···!」
「···はは、最低だな俺···あんなに心配してくれる奴を邪魔くさいと思うなんて」
「····」
「···父さん、宗古そうこにこう伝えといて」
「何だ?」

















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