【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?

咲雪

文字の大きさ
9 / 23

9.苺プリンとポロリ


 私がこの世界に召喚されてから3ヶ月近く経った。


 今日は、クリスと王都から2時間ほど離れた湖に行くことになった。


 朝からサンドウィッチとミートパイを作ってピクニック気分だ。本来の目的は、スケッチなんだけどね。


 今日はクリスの愛馬"ロッド"に乗っていく。私は前に乗って荷物を落とさないように抱え、後ろからクリスが私のお腹に腕を回し、体を支えて馬を走らせた。何度か一緒に乗ったけど、未だにドキドキする。疾走することで生じる冷たい風が火照った顔をひんやり冷ましてくれる。


 あ、ほのかにシダーウッドの香りがする。まるでクリスに包まれてる気がする。独占欲の塊みたいじゃない!なんて物をプレゼントしたんだ、私!羞恥心で死んじゃいそう!



 目的地に着いた。湖の水面に山が映り込み、上下が反転したように見える。まるで逆さ富士みたい。


 湖のほとりに腰掛けスケッチをしていると、クリスが興味津々で覗き込む。ううっ、描きづらい。


「へー、すごくうまいな。俺は絵が下手だから、尊敬する」

「ありがとう。お世辞でも嬉しい」

「お世辞じゃないよ。心から言ってる」

「へー、そうなんだ。照れるなー。
 でも、あまり覗き込まないで。緊張するから」

「ごめんごめん。なるべく見ないように善処する」

「ふーん、努力しなければ見るんだ」

「あ、気づいた?」

「うん、そりゃね」

「じゃ、しばらくあっちの方にいるよ」

「退屈させてしまってごめんね」

「気にしなくていいよ」



 何やら白い花が咲いてる方に向かって歩き出した。


 さあ、少しでも長くクリスとの時間を過ごせるように集中して描こう。





 描き終え伸びをしてるとクリスが戻ってきた。


「はい、花冠」


 と、シロツメクサで出来た花冠を私の頭に載せた。


「クリスは手先が器用なんだね。意外。かわいい花冠ありがとう。なんだか照れるね、お姫様みたいで」

「さあ、お姫様、お手をどうぞ。あちらで食事にしよう」


 あー、顔が熱い熱い。




 シートを敷き、昼食だ。


 クリスは、うまいうまい、とぱくぱくとサンドウィッチとミートパイをば食べている。


「ミートパイは出来立てだともっと美味しんだけどね」


 と私が食べてると


「セイラ、ソースが付いてる」


 クリスは、私の口元に付いたソースを親指で拭い取り、それをペロリと舐めた。


 !!!


「もー、なにしてんの!」


 クリスは、いたずらっ子みたいに『ニッ』と笑った。


 何度顔真っ赤にさせるの!
 こんな甘々だと勘違いしそうになるから、やめて。




「そろそろ帰ろうか」


 ああ、もう時間か、残念。


 私たちは手を繋いでロッドの元に向かった。



 ビュッ、と強風が。土埃が舞った。


「痛っ」


 思わず目をゴシゴシした。


 ぽろっ


「!セ、セイラ、目が溢れ落ちた!大丈夫か!?」


 しまった!


 私はバッと片目を手で覆った。


 クリスは、目敏く私の服に張り付いたカラコンを見つけ手に取った。


「これは‥‥、なんだ?」


 ああ、バレちゃうなぁ。まあ、もうカラコンのストックほとんど残ってなかったから、近いうちにカミングアウトしなきゃいけなかったし。
 私は観念して、覆った手を退けた。


「!セイラ‥‥、目が‥‥黒い‥‥」


 クリスは大きく目を見開いた。


「ごめんね、びっくりしたよね。クリス、実は私の目は黒いの。ごめんね、内緒にしてて」

「‥‥最近気になってたんだが、髪の根元が黒いのは、ひょっとして‥‥」

「うん、地毛も黒いんだ。
おしゃれで髪は染めてて、目はカラーコンタクトレンズっていうのを入れてるの」

「髪の染め粉はあるが、目のおしゃれなんて瞳の色を変えられるのがあるのか」

「やっぱりこっちの世界にはないよね」


 クリスが真剣な顔になった。


「やっぱり‥‥セイラが大聖女なんじゃないか?まだカレンは覚醒していない」

「たまたま黒髪黒目なだけだし、花恋だってまだ時間がかかってるだけかもしれないし」

「‥‥」


 あー、うるうるしてきた。泣くな!私!


「‥‥城や神殿に連れていくの?いやだよ、行きたくない。どんな扱いされるかわからない、怖い‥‥」

「酷い扱いはされないと思うが、そう思うってことは、それだけまだ不信感があるということなんだろうな」

「‥‥うん」

「前にカレンがいう覚醒するか様子見ることにしたが、流石にいつまでも待つというわけにはいけない。セイラはどうしたい?」


 クリスが困った顔してる。そんな顔させたいわけじゃない。


「‥‥召喚されてから1年経過する日まで待ってくれる?それまでに、花恋が覚醒しなかったら自分で神殿に行く」

「それでいいのか?」

「仕方ないでしょ。あと、行く場合は私1人で行くから。匿ってたのバレたら、クリスの立場がヤバくなるでしょ?そんなの絶対やだ!」

「俺のことなんか心配しなくていい」

「ううん、もう決めた!1人で行く!」

「はぁ、セイラは頑固だからな。仕方ない、そうすることにしよう」

「ありがとう!クリス!」


 嬉しくってクリスにぎゅっと抱きついた。


 クリスもぎゅっと抱きしめ返してくれた。


 ごめんなさい、クリス。聖騎士だから国に忠誠を誓ってるはずだよね?それに背くようなことさせちゃって。でも、もうしばらくそばに居させて‥‥。




 帰宅する前に商会に寄り、ピンクブロンド(アッシュピンクより明るくなっちゃうけど、仕方ない)のウィッグと伊達メガネを購入した。





感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです

籠の中のうさぎ
恋愛
 日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。 「はー、何もかも投げだしたぁい……」  直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。  十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。  王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。  聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。  そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。 「では、私の愛人はいかがでしょう」

モブが乙女ゲームの世界に生まれてどうするの?【完結】

いつき
恋愛
リアラは貧しい男爵家に生まれた容姿も普通の女の子だった。 陰険な意地悪をする義母と義妹が来てから家族仲も悪くなり実の父にも煙たがられる日々 だが、彼女は気にも止めず使用人扱いされても挫ける事は無い 何故なら彼女は前世の記憶が有るからだ

異世界に逃げたシングルマザー経理は、定時退勤だけは譲れない

木風
恋愛
DV夫から一歳の娘を抱えて逃げた鈴木優子は、光に飲まれて異世界の王宮へ転移してしまう。 生きるために差し出した武器は簿記と経理経験――崩壊寸前の王宮会計を『複式簿記』で立て直すことに。 ただし譲れない条件はひとつ、「午後五時の定時退勤」。娘の迎えが最優先だからだ。 その姿勢に、なぜか若き国王ヴィクトルが毎日経理室へ通い始めて――仕事と子育ての先に、家族の形が芽吹いていく。

友人の好きな人が自分の婚約者になりそうだったけど……?

しゃーりん
恋愛
ある日、友人リリスに好きな人ができたと告げられた。 協力するという他の友人たち。私クレージュも「思いが通じるといいね」と言った。 それからわずか数日後、父から告げられた婚約する予定の令息ロメオはリリスの好きな人だった。 でも、これは政略結婚。友人の好きな人だから嫌だと言うつもりはなかったが、顔合わせをしたロメオの印象はあまり良くなかったこともあり、少し調べることになった。 リリスには正式に婚約することになったら話そうと思っていたが、翌日に学園でロメオに話しかけられて婚約するかもしれない相手だと知られてしまう。 なのにリリスがロメオに告白。なぜかロメオに責められる私。自分が悪者にされて呆れるというお話です。

出会ってはいけなかった恋

しゃーりん
恋愛
男爵令嬢ローリエは、学園の図書館で一人の男と話すようになった。 毎日、ほんの半時間。その時間をいつしか楽しみにしていた。 お互いの素性は話さず、その時だけの友人のような関係。 だが、彼の婚約者から彼の素性を聞かされ、自分と会ってはいけなかった人だと知った。 彼の先祖は罪を受けず、ローリエの男爵家は罪を受け続けているから。 幸せな結婚を選ぶことのできないローリエと決められた道を選ぶしかない男のお話です。

《完結》悪女と噂されたわたくしのざまぁ

ヴァンドール
恋愛
悪女と噂のわたくしとの結婚なら、どれほど軽んじても問題はないと思っていた旦那様。 ところが……。

振られたから諦めるつもりだったのに…

しゃーりん
恋愛
伯爵令嬢ヴィッテは公爵令息ディートに告白して振られた。 自分の意に沿わない婚約を結ぶ前のダメ元での告白だった。 その後、相手しか得のない婚約を結ぶことになった。 一方、ディートは告白からヴィッテを目で追うようになって…   婚約を解消したいヴィッテとヴィッテが気になりだしたディートのお話です。

安らかにお眠りください

くびのほきょう
恋愛
父母兄を馬車の事故で亡くし6歳で天涯孤独になった侯爵令嬢と、その婚約者で、母を愛しているために側室を娶らない自分の父に憧れて自分も父王のように誠実に生きたいと思っていた王子の話。 ※突然残酷な描写が入ります。 ※視点がコロコロ変わり分かりづらい構成です。 ※小説家になろう様へも投稿しています。