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第一部
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「…………は?」
思わず声が漏れてしまうほど、目の前で起こっている出来事が信じられなかった。
「お邪魔するで」
「ご一緒させて頂きますわ」
授業終了後。
エリオットは食堂でフレディを待っていたのだが、現れたフレディは一人ではなく──あの関西弁厨二病なセドリックに、自らのことをヒロインと言っていた頭の中お花畑のアリスティアと共に現れた。
……絶対に関わりたくない二人と来るなんて、一体どういう経緯でそうなったんだよ!!
「ごめんね、エル。断ろうとしたんだけど……上手く断れなくて……」
フレディは申し訳なさそうに、コソッと耳元で言葉を発した。
……まあ、フレはお人好しな一面もあるからなぁ。
これは仕方がないかと、エリオットは割り切ることにした。
それでもフレディは罪悪感を感じているようで、エリオットに言葉を掛ける。
「今日のデザートの苺プリンあげるから。エル、好きだったでしょ?」
「え……いや、流石に悪いよ」
今現在起こっている出来事はフレディには一切非がない。
けれど、フレディは一切引かなかった。
「ううん、僕があげたいんだ。だから、受け取って欲しいな」
「そ、そうか……そこまで言うなら貰うよ」
「うん!」
「……あの~お二人さん? 二人っきりの世界に入らんといてや」
おずおずと口角に手を添え、セドリックはそう言うと、それに続くかのようにアリスティアが言葉を発した。
「そうですわ。わたくしは御二方と仲良くしたいというのに……仲間外れは嫌ですわ」
別に俺は仲良くしたくないけどな!!
もしお前がフレのことが好きだったとしても、影から妨害してやる。
まるで嫉妬をしている彼女かのように、エリオットはプクッと頬を膨らませた。
「せやけどな、アリスティア。エリオットは人見知りするんやて。こら仲良くなるのに時間が掛かるで」
「あら、そうでしたの? でもわたくし……どうしても仲良くなりたいので、これからはこうしてたまにでもご一緒に食事をしたいですわ」
「え?」
タッチパネルを操作し終わったフレディは、吃驚した様子で目を見開いた。
まあ、その反応はするよな。
俺だって、軽く素で叫びそうになったからな。
「もしかして……ご迷惑ですか?」
「……え、その……」
フレディはどうしようと、助けを求めるかのようにエリオットへ目線だけで助けを求めた。
かくいうエリオットも、どうすればいいのか分からずにいた。
本音は断りたいが……真正面から断ってしまうと確実に面倒なことになるだろう。
例えばセドリックが「何でや!? お二人さん自分らこと嫌いなん!? そんなの酷いわぁ」と言ったり。
逆にアリスティアは「どうしてそんなことを言うんですか。……わたくしはただ、御二方と仲良くなりたいだけだというのに……」と、泣く可能性がある。
まぁ、その涙が虚偽である可能性も否めないけどな。
それからこの転校生は性格上何かしら問題を起こすだろうし、それに加え了承してしまうと必然的にこの風紀委員であるセドリックとも共に食事をする羽目になってしまう。
ただ食事をするだけならば、なんとか耐えてみせよう。
だが少しでも交流を深めてしまうと、確実にこの二人は学校内や敷地内にいる限りは目の前に現れるだろう。
断っても地獄、了承しても地獄だな。
額に皺を寄せ、どうすればいいのか当惑していると、意外にもセドリックが口を開いた。
「こらこら、アリスティア。流石にいきなり二人の間に入るのはあかんで? せめて、お邪魔するのは週に二日にすべきやで?」
まあ、まだ連日のように来られるよりはマシか……って、なに俺は頷いているんだっ!!
「そうですか……」
「せや。それに、自分も風紀委員の仕事もあるさかいしな」
「風紀委員は委員会の中だと、生徒会の次に忙しいからね」
そういえば、フレも委員会に入っていたんだっけ?
一体どの委員会に所属しているのかは知らないが、関わりたくない生徒会と風紀委員以外だと……学園内でのニュースを新聞にしたり、パンフレット作成などを手掛けている広報委員会。
体育祭で企画実行を担当する体育委員会。
庭園での花の手入れや水やりをする、緑化委員会。
怪我をした場合の治療や怪我人を運ぶ、保健委員会。
確か他の委員会はこの四つだろう。
生徒会や風紀委員に所属していない特待生約三名ずつが他の委員会に所属しているが、それだけでは人数が足りないため立候補者や推薦された者が数名抜擢されていたはず。
……これを踏まえると俺以外の特待生は全員、何かしらの委員会に所属していることになる。
……何故、俺は委員会所属を免れているのだろうか。
何らかの理由で、特別に免除されているのか?
黙考に耽っていると、注文した料理が運ばれてくる。
各自料理に手を付けると、アリスティアが口を開く。
「あの、フレディ様の好きな食べ物は何ですか?」
「え、僕? ……そうだね。僕は肉類全般が好きだよ」
「肉類、ですか?」
そういえばフレ。また生姜焼きを食べているな。
肉料理の中でも、生姜焼きが一番の好物なのだろうか。
「では、セドリック様は?」
「自分? そりゃたこ焼きやで」
セドリックは鼻を鳴らすと、皿に大量に盛り付けられているたこ焼きを箸で掴むと、口内に投げ入れる。
「それなら、エリオット様は?」
「……俺、か……」
まあ、この流れ的に自分の番が回ってくるとは思っていたが……問われると案外浮かばないものである。
なら、最近食べて美味しかったものは……。
「……強いて言うなら、オムライスと甘いものかな」
この間食べたオムライス、凄く美味しかったなぁ。
今日は新規開拓として肉じゃが定食だが、これもなかなかいける味だ。
「そうですか。……訊いた感じ、好きな食べ物はゲームとは変わっていないようね。なら、他の情報もきっと……」
アリスティアは一人何か呟いていたようだが、エリオット達は気にとめることもなく食事を進めていく。
意外にも食事中は問題が起こることもなく無事に終わり、午後の授業も平和に受けることが出来た。
魔法の授業も今回は出力を調整し、目立つこともなく終えると、フレディと共に寮へ帰る。
自室へ帰宅するとカツラと丸眼鏡を取り、部屋着へ着替える。
台所へ行き、ペットボトルの飲料水を取り出すとソファーへ腰を下ろす。
「遂に明日か……新入生歓迎会」
エリオットは危惧していた。
何かしらの問題が起こるのではないかと。特にあのアリスティアの周りで。
それに巻き込まれることだけは避けなくては。
だが、明日の新入生歓迎会は一年のみではなく全校生徒が参加する行事だ。
なら、その人混みにフレディと共に紛れ込んでしまえばいい。
流石のアリスティアも、全校生徒の中から俺らを探し出すことは不可能であろう。
エリオットは飲料水を飲み干すとゴミ箱に捨て、お風呂場へ向かったのであった。
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