45 / 78
第一部
44
一歩後ろに下がった刹那、目の前にいる三人は頭を勢いよくぶつけるように土下座をし、謝罪をする。
あまりにも異常な光景に、エリオットは口をあんぐりと開けた。
「本当に申し訳ございませんでした!」
「もう二度としません!!」
「……は? へ? そもそも誰?」
エリオットには目の前の生徒たちが一体誰なのか思い当たる節かなかった。
そもそも自分はいじめられっ子であるため、その関連の誰かだと思う……のだが。
だめだ。記憶の糸を辿っても、誰なのか分からない。
それほど、自分にとってはどうでもいいことなのだろうが……如何せん、この場で土下座なんてされていたら目立って仕方がないっ。
「俺たちは取り返しのつかないことをしてしまいました」
「もう二度としないと誓います。一生掛けて償いますので、どうか許してくださいっ!!」
「許すって……何を?」
エリオットの言葉に、目の前の三人は目を丸くした。
「え、いや……新入生歓迎会のこと……なんだけど」
「風魔法で……崖下に落ちて……」
「あー、あのことか」
そういえば、風魔法で背中を押される形で転落したんだっけ。
ということは、この目の前にいる三人が犯人か。
まぁ、だとしても——
「別にいいんじゃね? 俺、生きてるし。そんなに気にしなくても」
面倒事はごめんだと軽くあしらったが、目の前の三人は突如大きな声を上げた。
「はぁぁぁーー!!???」
「ちょっと待ちなさいよ!! 生命を落としそうになったというのに、何よその反応!!」
「そうだそうだ!!」
「えぇ……別にあれくらいどうって事ないし」
前世の世界なんか、あの出来事と比にならない事件に巻き込まれることなんてざらにあったからなぁ……。
天使様だと崇められていたが、それを良く思わない者は一定数いる。
だから生命を狙われることなんて日常茶飯事だ。
それは魔神王の配下だけではなく、守るべき存在である市民にだって生命を狙われることがあった。
その度に自分で対処したり、守人たちに守ってもらっていたな……。
そういえば、守人の一族はまだ存在しているのか……?
そもそも、守人が誰だったのか思い出せない……せめて家名だけでも思い出せれば……。
けれど、何度記憶の奥底を掘り返しても思い出せなかった。
それに……守人たちは俺がいなくなってどうなったんだろうか。
幸せになったのだろうか。
生命を落とすこともなく、生涯を終えたのだろうか。
一人、しんみりとしているエリオットのことには気が付かず、三人の生徒は何やらギャーギャー言っていた。
そんな異様な空間の中、金髪の男子生徒が口を開いた。
「……すげぇ、かっけぇ……」
「……は?」
一体何が? と、疑問を抱いたが、それは直ぐに氷解する。
「何をされても、絶対生き残るという確かな自信っ!! そんなのかっこよすぎだろ!!」
「はぁ……?」
突然きらきらとした目でこちらを見据え、エリオットの顔は若干引き攣った。
その金髪の男子生徒に続くように、他の二名も声を上げた。
「確かに、その通りかも……」
「漢の中の漢!!」
「……えぇ……」
一体何を言っているんだと、呆れ気味にため息をつく。
このまま会話を続けていても面倒だと、三人の横を通り抜けようとしたその時だった。
「これはもうっファンクラブを作るしかない!!」
「————は?」
咄嗟に足を止める。
「それは名案ね!」
「一生ついて行きます!! エリオットの兄貴!!」
「いやいや、ちょっと待て!!」
一体こいつらは何を口走っているんだ。
ファンクラブ? 兄貴? 一生ついて行くとか、ハッキリ言って迷惑でしかない。
「そんなの、迷惑だ。やめてくれ」
「しかし、兄貴は命の恩人なんです!!」
「せめて、何か……」
命の恩人? やった側がどうして生命の危機に晒されるようなことがあったんだ?
疑問を抱いたが、自分には関係ないと頭を振る。
「こうなったら舎弟として、一生お供致します!!」
「それも面倒臭いからやめてくれ!!」
暫く一悶着あったが、結果携帯電話のアドレスと電話番号を交換し、必要以上に付きまとわないということで決着がついた。
正直アドレスも電話番号も交換したくなかったが、平穏な日々を脅かす脅威を取り払うためには必要な犠牲だったんだ。
ちなみに金髪の男子生徒は、アベル。
緑色の髪の女子生徒は、ジナ。
青色の髪の男子生徒はラトレルと言うらしい。
まぁ、覚えていられるかは何とも言えないが……。
あなたにおすすめの小説
処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる
猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。
しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。
当然そんな未来は回避したい。
原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。
さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……?
平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。
ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)
メインキャラ達の様子がおかしい件について
白鳩 唯斗
BL
前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。
サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。
どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。
ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。
世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。
どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!
主人公が老若男女問わず好かれる話です。
登場キャラは全員闇を抱えています。
精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。
BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。
恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。
聞いてた話と何か違う!
きのこのこのこ
BL
春、新しい出会いに胸が高鳴る中、千紘はすべてを思い出した。俺様生徒会長、腹黒副会長、チャラ男会計にワンコな書記、庶務は双子の愉快な生徒会メンバーと送るドキドキな日常――前世で大人気だったBLゲームを。そしてそのゲームの舞台こそ、千紘が今日入学した名門鷹耀学院であった。
生徒会メンバーは変態ばかり!?ゲームには登場しない人気グループ!?
聞いてた話と何か違うんですけど!
※主人公総受けで過激な描写もありますが、固定カプで着地します。
他のサイトにも投稿しています。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
【柳原学園】いやいや、俺は『俺様生徒会長』だから
西園 斎
BL
家の都合で『俺様』を演じてる生徒会長が、生徒会やら風紀やら教師やらから好かれるお話。
演技俺様会長総受け(愛され)/後固定CP
*10年以上前の作品を、やや加筆修正していきます
転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが
松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。
ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。
あの日までは。
気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。
(無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!)
その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。
元日本人女性の異世界生活は如何に?
※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。
5月23日から毎日、昼12時更新します。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?