だからっ俺は平穏に過ごしたい!!

しおぱんだ。

文字の大きさ
51 / 78
第一部

50


 スっと引き止める間もなくセドリックはアリスティアから離れる。

「いちびんのも大概にしときや」

 伸ばし損ねた手の先にいるセドリックの声色が怒気を含んでいた。
 そこにはいつものヘラヘラしているセドリックはおらず、まるで二重人格なのではと思うほどの様変わりした表情。

「それなら自分があんたらに同じこと……やってやるで?」

 ボキッと拳を鳴らす。
 自分に向けられたわけではないのに、アリスティアは息を呑む。
 そうだ。セドリック様は時より人が変わったかのような態度になる。
 そして、風紀委員会の中では一番の腕っ節の持ち主だ。
 闇雲に暴れまくる猪突猛進のジェラールよりも、確かな腕を持つ。

「なんや、どうしたん? あんたらが言ったんやろ? 殴り飛ばさないと気が済まないって」
「……そ、その……」
「ん?」

 首を傾げた刹那。

「いやぁぁぁ!!!」

 親衛隊たちは突然悲鳴をあげながら蜘蛛の子のようにこの場から逃げ出した。

「ちょっと!? 待ちなさい!! 私を置いて行くなんてっ!!」

 一足遅れて、権力者である女子生徒もこの場から逃げ出した。
 ぽつんと、二人取り残されたこの空間。


「せ、セドリック様?」

 おずおずと、言葉を投げ掛ける。

「いやぁ~、ほんまびっくりしたわ。もし相手が襲いかかってきたら一大事だったわぁ。流石に女の子に手を出す訳にもいかんし」

 セドリックはアリスティアの方へ顔を向けると、その表情はいつも通りヘラヘラとしていた。
 先程とのあまりのギャップに、アリスティアは動揺を隠せなかった。

「……アリスティア? 大丈夫か?」

 ゲームの世界ならばヒロインを守るなんてかっこいい~なんて思ったと思うけれど、実際この場にいるとあの殺伐とした空気に押しつぶされそうになる……。
 そもそもセドリック様は人間不信。ヒロインであるわたくしに向けられているこの微笑もきっと紛い物だろう。
 でも……今はそうだとしても、いつかゲームのHappy Endのような笑顔を見せてくれると信じてる。

「……えぇ、大丈夫。ありがとうございます。セドリック様」

 ——だって、わたくしはヒロインなのだから。

「あっ!! そうよ、セドリック様!! ジェラール様は今どうしていらっしゃるの??」

 そう、このイベントは本来ジェラールの出会いイベントのはずだったのだ。

「ジェラール副委員長? それなら、ディラン委員長と一緒に風紀委員室にいるはずやで?」

 エリオットと会う前、一人風紀委員室に寄っていたセドリックは確かに二人はいたはずだと思い返す。

「そ、そうなんですか……」

 ジェラール様が動いていないとなると、やはりバグということなのかしら。
 それとも何か……ゲームには存在していなかったバグとなるイレギュラーな因子がこの学園内にある、とかでしょうか?
 でも、それならそれで仕方がない。他の人に手当り次第アタックすべきっ!!

「セドリック様、本当にありがとうございました!!」
「お、おぅ……」

 アリスティアは意気揚々と、この場を後にした。
感想 12

あなたにおすすめの小説

処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる

猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。 しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。 当然そんな未来は回避したい。 原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。 さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……? 平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。 ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)

メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗
BL
 前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。  サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。  どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。  ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。  世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。  どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!  主人公が老若男女問わず好かれる話です。  登場キャラは全員闇を抱えています。  精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。  BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。  恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。

聞いてた話と何か違う!

きのこのこのこ
BL
春、新しい出会いに胸が高鳴る中、千紘はすべてを思い出した。俺様生徒会長、腹黒副会長、チャラ男会計にワンコな書記、庶務は双子の愉快な生徒会メンバーと送るドキドキな日常――前世で大人気だったBLゲームを。そしてそのゲームの舞台こそ、千紘が今日入学した名門鷹耀学院であった。 生徒会メンバーは変態ばかり!?ゲームには登場しない人気グループ!? 聞いてた話と何か違うんですけど! ※主人公総受けで過激な描写もありますが、固定カプで着地します。 他のサイトにも投稿しています。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

【柳原学園】いやいや、俺は『俺様生徒会長』だから

西園 斎
BL
家の都合で『俺様』を演じてる生徒会長が、生徒会やら風紀やら教師やらから好かれるお話。 演技俺様会長総受け(愛され)/後固定CP *10年以上前の作品を、やや加筆修正していきます

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?