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第一部
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◇◇◇
次の日。
普段騒がしい生徒会室はカタカタとキーボードを叩く音が響く。生徒会室には会長のアランと副会長のクライヴだけで、他の役員の姿はない。
それは朝早くから生徒会役員全員で作業をしていたが、アランの計らいで現在三年以外の役員全員を教室へと戻した。
その際ディアナが抗議していたが……それに関してはクライヴも心の中で同意していた。
どうせ、後輩たちにまでこの膨大な書類を押し付けることは自分の矜恃に反する。なんて、思っているのだろう。
だがそれは少々違うようだ。何故なら同学年のクライヴに作業を分担することはなく、一人で全ての書類を抱えている姿を見るとーー矜恃というより、自分さえしんどければそれで良いなんていう自己犠牲に等しいものだ。
薄らだが、象徴するような目元のクマに疲れきった顔。クライヴは密かにため息を吐いた。これはもうストップを掛けるべきだと。
「アラン、少し寝てください」
キーボードを叩く音が止む。
「これ以上無理しては身体を壊します。ですからーー」
「俺様が休んだら一体誰が仕事をするんだ」
「私がいるじゃないですか」
「お前にまで任せられん」
何がお前にまでだ。現在進行形で一人で全ての書類を抱え込んでいる人が言う台詞じゃない。
そもそも生徒会長であるアラン自身が目に通さなくてはならない書類は膨大な数があり、普段はそれに判を押したり纏めたりとするだけで半日は過ぎてしまうのだ。
それに加えて他役員が担当していた書類も抱えている。
……一体何日寝ていないんだ。
一人で捌くのには到底無理である膨大な書類作業に加えて、転校生であるアリスティアのデュオとして授業にも出なくてはならない。アランの疲労は限界突破寸前だ。
眠気覚ましにと、既に5杯目に到達したコーヒーを飲むアランに言葉を掛ける。
「アラン、一度仮眠を取ってください。どうせ昨夜も寝ていないのでしょう?」
聞き分けの良い子であれば素直に寝るがーーーー
「何故寝なくてはならない。まだ仕事が残っているだろ」
ひねくれているアランが素直に寝るわけはなかった。
この仕事中毒者が。これ以上コーヒー飲むとカフェイン中毒になるだろ。貴方は温かいココアでも飲んで癒されてろ。
なんて言えるわけもなく、心の中で悪態をつく。
ならーー奥の手だ。
「これ以上仕事をするのならリルを呼ぶしかありませんね」
ため息混じりのクライヴの言葉に、再度キーボードを叩こうとした両の手が止まる。
「リルならきっと今の状況を楽しむかのように取材に来るでしょうし、頭の回らないアランから何か色々聞き出そうとしそうですね。あ、でも息抜きが大事だとアランを連れ回しそうですし、そして後日『スクープ!! オフの日の生徒会長特集』なんていう新聞がーーーー」
「分かったっ! 寝てくればいいんだろ! 寝れば!!」
半ば逆ギレをしていたが、思惑通りアランは仮眠室へと姿を消した。
「……案外上手くいきましたね」
今度リルに差し入れでもしましょうかと、書類に手を出したーーその時。
コンコン。
生徒会室の扉から響く軽い音。
誰でしょうか、とクライヴが扉を開けるとそこにいたのはーー
「おはようございます。クライヴ様」
ぱっちりとまんまるな青い瞳に、 プラチナブロンドの髪。見間違えるわけもない、転校生のアリスティアがそこにいた。
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