【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ3rd season

本編

それ俺にも送っておけよー

　空が助っ人に行った美術部はそのまんま美術室だろ！って事で少し遠いが美術室まで来てみた。
　さてと、空はちゃんと仕事してるかな？
　美術室の中がやたら静かだから、まずはそーっと覗いて見ることにした。ドアを少しだけ開けて、隙間から中を……


「貴哉！」

「うわぁ！？」


　中を覗こうとしている所に後ろから名前を呼ばれてビックリしちまって思わず声が出た。
　慌ててドアの隙間を閉じて振り向くと何と空がいた。そして空の隣には怜ちんも。


「貴哉ってばここで何してんだ？」

「お前こそ、怜ちんとどっか行ってたのか！？驚かせやがって！」

「お昼食べに行ってたんだよ。で、貴哉は？もしかして会いに来てくれたのか？」


　ぐいっと俺に近付いて目をキラキラと輝かせて見てくる空。
　何だか機嫌が良さそうだな。
　怜ちんはそんな俺達の横を通って美術室のドアを開けた。


「空くん、俺は先に戻ってるよ～。ごゆっくりどうぞ～♡」

「あ、俺もすぐ戻るからー」


　怜ちんがいなくなって廊下に俺と空の二人きりになった。二人共知らない間に仲良くなってね？いい事だけどよ。


「なぁ貴哉♪会いに来てくれたんだよな？」

「おう！うるせーのがいなくなった隙に抜けて来た。バレたら怒られるからすぐ戻るけどな」

「嬉しい♡なぁぎゅってしていいか？」

「ここでか！？ま、まぁ人いねぇし少しなら……」


　俺が言い終わらない内に空に深く抱き締められた。うわ、何か久しぶりにこうされる気がする。
　居心地が良くて、暖かい……
　会いに来て良かったなって思えた。


「貴哉ー♡会いたかったよぉ♡お昼は演劇部の人と食うって言うから昨日、今日って俺寂しかったんだぞ」

「おー、悪かった。来週からは一緒に食おうな。俺の指導してくれてるうるせーの紹介してやるよ」

「うん。紹介して欲しい♪でも、迷惑じゃないか？部外者の俺が入って」

「何で迷惑になるんだ？昼飯一緒に食うだけじゃん。空、何かあったのか？」

「何もないよ。貴哉も演劇部の方頑張ってるみたいだからそっちの人との交流も大事にして欲しいんだ」

「はぁ？？」

「……へ？」

「変！」

「え？」

「お前変だぞ！やっぱり何かあったんだろ！？あ！桐原だな！あいつまた空の嫌がる事を……」

「違う違う！貴哉早まらないでくれ！」


　今すぐにでも桐原に文句言ってやる！何てったってあいつは今俺のパシリだからな！
　桐原の所へ行こうとすると空に腕を引かれて止められた。


「桐原さんには何も言われてねーよ！俺が自分で反省したんだ。貴哉も自分の事で頑張ってるのに、俺がつまらないやきもちやいて困らせるのは間違ってるなって」

「空……」

「それに、ほら明日はお泊まり会だろ？俺はそん時に貴哉を独占出来ればいいからさ。あ、でも浮気はダメだからな？」

「はは！バーカ！浮気はお前の方だろ～。この女好きが」

「もう違うしー。今は貴哉好きだしー」

「分かったよ。空がそう言うなら俺は演劇部の方頑張るよ。空も寝ないように頑張れよな～。じゃ戻るなー」

「それはマジで頑張る。あ！待って」


　茜に見つかる前に戻ろうとすると、空にまた止められた。
　俺の横に来て顔がくっ付くんじゃねってぐらい近付いて来てスマホの画面を向けられた。あ、写メ撮る気だなこいつ。


「貴哉笑って♡」

「いきなりとかやめろよなー！ほらさっさと撮れ！」


　誰かと写真を撮るのはいつ振りだ？ガキの頃は母ちゃんと良く撮ったけど、あー、中学の時にカメラ担当の奴いたっけな。楓とならこういうの撮った事あるかも？
　でも、彼氏と撮るのは初めてだな。
　少し照れるが俺は空の事を考えて笑顔を作ってみた。


「わーい♡貴哉とツーショットゲットー♡って貴哉めちゃくちゃ写真映り良くね！？うわーイケメンー！」

「元が悪りぃって言いてぇのか？」

「ちげーって！貴哉は元々綺麗だけどさ、何かこの笑顔……待ち受けにしよーっと♡」

「やべ！茜から電話だ！マジで怒られるからまた後でな！あ、それ俺にも送っておけよー！」


　さすがに抜け出したのがバレたか！茜からの着信に慌てて空と別れて演劇部の部室まで戻った。
　
　廊下を走りながら会いに行って良かったと思った。何となくいつもと違う空だったけど、俺の事を好きって言うのは変わらないみたいでちゃんと伝わって来たし、何より俺の事を応援してくれたのが嬉しかった。
　はは、俺も空の事好きなんだなって思ったら笑えた。