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本編
来てくれてありがとう
しおりを挟むその後も三人で屋台を回って、花火が上がる時間を待った。そろそろ始まるみたいだから見やすそうな場所を見つけて茜を挟んで三人で座った。
伊織からメッセージで今ついたと連絡があったからここの場所を伝えたけど、あいつ間に合うか?
「桐原、間に合いそうか?」
「知らね。もう間に合わねぇかもしれねぇから花火始まったら途中で俺どっか行くよ。そん時に告れ」
「えっ!秋山どっか行っちゃうのか!?」
「やっぱ二人きりの方がいいだろ。伊織いねーんじゃ意味ねぇし。告白上手く行っても行かなくても電話くれよ。近くで待機してっから」
「う、うん。分かった」
緊張したような顔してる茜。きっと上手くいくよ。
二人と過ごして分かったけど、桃山は本当に茜の事を大事にしてるから。一見タイプの違う二人だけど、笑顔で笑い合ってるとことかすげぇお似合いだなって思うし、桃山が他の奴を好きになったりしたらそん時は俺がぶん殴ってやればいい。
「お、始まったな」
「うわ、綺麗」
「おー花火だー」
とうとう花火が始まって辺りが少し静かになる。
初めは小さいの。そして派手なやつから凝ったやつ。いろいろな花火が上がって行ってそろそろ二人切りにしようとした時、いきなり後ろから誰かに抱きつかれた。
伊織だった。
「ックリしたー!」
「待たせて悪かったな」
顔だけ振り向くと走って来たのか伊織の呼吸が乱れているのが分かった。ってか伊織も浴衣着てるし!紺色の、走って乱れたのは浴衣もだったらしく、胸元が開いていた。
「お前はだけ過ぎ!」
「あ、乳首見えた?」
「見てねーから!」
「あ、いーくんだ」
「よう、桃山。それと二之宮。遅くなって悪い」
「気にしないでくれ。急に誘ったのはこっちだから。来てくれてありがとう」
「おせーよ!もう始まっちゃっただろー!」
「だからごめんって♡俺がいなくて寂しかったのか?可愛い奴だなぁ♡」
「んな訳あるか!てか離れろ!」
俺に抱き付いてそのまま後ろから抱える感じで座った伊織から離れようとするけど、がっしり両腕で固定されていた。
「秋山、少し声抑えろ」
「そうだぞー?みんな花火見てるんだから」
「だって、お前が……くそ」
茜に注意されて、伊織に口を押さえられた。
仕方なく俺は伊織に抱き抱えられたまま過ごす事にした。
それから伊織は周りを気にして小声で話し始めた。
「まさか貴哉と花火見れるなんてな」
「…………」
「貴哉?遅れて来たの怒ってんの?」
「そうだよ。俺じゃ茜の力になれねぇから、お前の事頼ったのに」
「嬉しいなそれ。でもさ、俺らの力なんていらないんじゃね?ほら二人見てみ」
「は?どう言う事だよ?」
隣にいる二人を見てみると、仲良く手を繋いでいた。うわー、茜ってばあんな可愛い顔して笑ってるしー。後はちゃんと告白出来るといいな。
「二之宮と桃山なら大丈夫だろ。二之宮は真面目だし、桃山は変人だけど、好きになったら一途だから」
「他を好きになったりしないのか?」
「それは二之宮次第じゃね?桃山って俺の事一年の時からずっと好き好き言ってたんだぜ?どんなに突き放してもな。だから二之宮が変わらない限り続くだろ」
「お前も大変だったな」
「まぁな。俺のファンに危害加えたりしてたみてぇだけど、そんな奴らなんか他にもいるし、桃山だけが悪いとは言い切れねぇんだ」
「誰でも好きな奴の事は独り占めしたいもんなー」
「そうそう♡今日は俺が貴哉を独り占めー♡」
「苦しいって。それに暑いからそろそろ離れろよ」
「やだよ。せっかく早川いねぇんだから」
「いなくてもやめろよ」
「今日ぐらいいいだろ?早川いる時は我慢してるんだし」
「本当に我慢なんかしてるのかぁ?」
「してるしてる。その気になれば全然奪えるけどしてねぇもん」
「随分余裕だな」
「貴哉だって俺の事少しは気になってんだろ?じゃなきゃキスなんか出来ねぇだろ」
「あれは……忘れてくれ」
「忘れられる訳ねぇだろ。こう見えて俺誰かとキスなんか初めてだったんだぜ?すげぇ興奮した♡」
「嘘つけ!いつも誰かとしてるんだろ!モテ男め」
「ほんとだって。怜ちんとかに聞いてみろよ。俺意外とそういうの誰にでもしたりしねぇから」
「本当なのか?」
信じられなくて振り向いて聞いてみる。この性格で、この見た目で何年も誰ともしてないだと?嘘に決まってるだろ。
それが本当なら伊織の株が上がるだろうけどよ。
俺にピッタリ張り付く伊織の顔がすぐ後ろにあり、優しい笑顔にドキッとした。
俺も伊織相手に何でドキドキすんだよ。きっと伊織マジックってやつだな。これでみんな洗脳されて信者になっちまうんだ。
「本当だよ。貴哉だけだ」
「…………」
「まぁ俺達って会ったばかりだし、信じられないのは分かるよ。だからさ、これから一緒に過ごして俺の事知ってってよ。貴哉の為ならどこにだって飛んでくからさ♪」
「そう言えば今日他に予定あったのか?無理して来たんじゃねぇの?」
「予定ってか中学の時の友達に飲みに誘われたんだよ。貴哉んちから帰ってからさ。ちょっと顔出してすぐこっち来たけど。浴衣に着替えてたら遅くなっちまった」
「そうだったのか。そりゃ悪かったな。浴衣、似合ってるよ」
「嬉しいー♪貴哉に花火大会誘われたから張り切ったんだよ♪少しでも良く思われたいからさ」
伊織の声で本当に嬉しいのが伝わって来た。まさかそんな事考えてくれてたなんて。確かに浴衣着てるのには驚いたし、いつもと雰囲気変わっていいじゃんとも思った。
俺だったら面倒くさいからそのまま行くだろうな。
「来てくれてありがとう。俺も嬉しい」
「ん」
俺が素直に言うと、伊織は優しくほっぺにキスをして来た。恥ずかしかったけど、嫌じゃなかった。
俺は空と付き合ってなかったら伊織と付き合ってたのかな。
夜空に上がる花火を見ながらそんな事を考えていた。
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