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本編
※光児さんならどうする?
しおりを挟む※空side
俺は昔から何に対しても淡白な性格だと思っていた。それを悟られないように外見や言動行動などで作っていたけど、それは周りから嫌われたくないからだ。一人になりたくないから。
でも淡白な所は無意識に出てしまうらしく、ちょっと前までの女関係がいい例だ。
少し声を掛けられれば仲良くなり、そしてベッドイン。そのまま付き合う者もいれば、一夜限りなんてのもたくさんあった。段々好きとかどうでも良くなって、見た目さえ良ければ誰とでも寝たし、誰とでも付き合って来た。
もしその女がちょっとでも他の男を見てたり褒めたりしたらすぐに切ってたりもした。
そのお陰で恨まれたり殴られたり、時には他の男を使って仕返しに来るねちっこい奴なんかもいたけど、そこは俺の人脈で何とかやって来てたんだけど、その行いが祟ってかやっと本気になれた恋愛で苦しめられている俺。
しかも今恋愛してる相手が男って言うね。
別に俺自身男が好きって訳じゃない。彼だけにはそういう目で見る事が出来た。
そして彼だけには他を見てたり、他を好きだと言われてもすぐに切る事が出来ずにいた。
淡白な俺どこ行ったんだ……
「おい弟はいつまでここに居座るつもりなんだよ。初めはちゃんと手伝ってて偉いと思ってたが、あれじゃ邪魔なだけだぞ」
「どうやら彼氏と喧嘩したみたいなんだよな~。お兄ちゃん心配」
兄貴の雪とバーのマスター光児さんはカウンターでため息をつく俺を見て言った。
貴哉と気まずくなってから俺は毎日ここに通っていた。初めは無理矢理手伝わせてもらってたけど、今では言われたら動くだけ。それ以外はひたすらカウンターに座ってボーッとしていた。
ここのバーは昼間も開いてるけど、本格的に忙しくなるのは夕方以降。そろそろ追い出される時間だ。俺は帰ってもやる事もないし、かと言って気軽に遊べるような友達もいない。昔の女は全部切ったから連絡先も知らないし。
だからゲーセンで興味の無いゲームやったり、ファーストフード店入り浸ったりして過ごしていた。
そんな生活がもう一週間も続いていた。でもそろそろ……
「貴哉に会いたい……」
俺がボソッと呟くと、光児さんはそっとオレンジ色のカクテルを出してくれた。光児さん特性カクテル。もちろん俺に出すのはノンアルコールだ。
そしてダラダラしてる俺に言った。
「そんなに会いたいなら意地張ってねぇで会いに行きゃいいだろ。それ飲んだら帰りな」
「でも……」
「許しちゃダメだろ。浮気なんて。それに聞けば前にもあったとか言うじゃん。俺は別れろって言ってるんだけど」
「そんな簡単に別れられねぇ程好きなんだな。いいじゃん。若いんだからたくさん悩め悩めー」
「光ちゃん!他人事だからっていい加減な事言わないで!」
「おー怖。別にいい加減に言ってる訳じゃねぇよ。空もお前と同じぐらい可愛がってる後輩だからな。でも起こっちまった事は仕方ないだろ。いつまでもうじうじしてる方が俺は勿体無いと思うぜ」
兄貴には貴哉との事を話した。そしたらめちゃくちゃ怒ってた。今すぐ連れて来いとか言って殴り込みに行こうとしてたからさすがに止めた。
そして兄貴が出した結論は、距離を置け。そしたら俺も諦めるとでも思ったんだろうけど、むしろ貴哉の事ばっか考えちまって、他に手が付かなくなるわでため息しか出なくなった。
「光児さんならどうする?」
「俺か?俺なら許すかな~?俺がそいつの事を本当に好きだったらな。人間誰でも間違いは起こすもんだし」
「光ちゃん!余計な事言わないでってば!」
「許す、かぁ」
一度は許したけど、それでもダメな場合はどうすりゃいいんだよ。桐原さんの事まだ好きとか言ってるし……俺はどうしたらいいんだ……
「空!絶対許しちゃダメだぞ!また繰り返すだけだからなっ」
「まったくお前は過保護だなぁ。恋愛ぐらい好きにさせてやれって。空が好きな奴の為に髪まで切るぐらいなんだぞ。むしろ応援してやれよ」
「いくら空が好きでも向こうがろくでもない奴じゃダメだろ!浮気するような奴、絶対に許さない!」
「分かった分かった。俺からはもう何も言わねぇから少し落ち着けって」
光児さんになだめられて兄貴はふんっと奥の扉の向こうへ消えて行った。
ろくでもない奴か……それは貴哉の事じゃなくて、今までの俺の事を言われてるようで何も言い返せなかった。
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