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3.懐かしくて愛おしい
しおりを挟むそいつと再会した時には既に他の男と付き合っていたな。再会する以前からそいつがここら辺を通るのを見かけた事があったけど、いつも派手な髪をしているチャラそうな男と自転車で二人乗りをしていた。俺の他に仲の良い友達が出来たのかと少し寂しく思っていたけど、再会した時にその男と付き合っている事を知って俺は愕然とした。
理由は俺が一度そいつに告白をして振られているからだ。
そいつの名前は秋山貴哉。
貴哉とは小学校五年生の頃からある事をきっかけに仲良くなりそれからずっと一緒に過ごして来た。それまでは俺は大人しく控えめな性格からクラスでは目立たない方で、逆に貴哉はクラスでは目立つ方で、性格が明るいとかそういうんじゃなく、一言で言えば不真面目で、いつも先生に叱られていたのを良く覚えている。
それでも貴哉の周りには常に人がいた。本人に自覚はないみたいだけど、人を惹き寄せる魅力があるんだ。
俺もその魅力に引き込まれた一人だ。
貴哉との昔話を思い出して急に寂しくなった。
もう貴哉は他の男と付き合っている。
再会したばかりの時は早川と言うチャラ男だったけど、今では他校の俺でも知ってる桐原さんって言う二年生の人と付き合っているらしい。
やっぱり貴哉はモテるな。
それは一番側にいた俺が良く知ってる事だ。
だからこそ悔しかった。何故今貴哉の隣にいるのは俺じゃないのか。
貴哉が他の男と笑顔でいるのを見るとそこは俺の場所なのにっていつも思うんだ。
きっと想いを伝えるのが早過ぎたんだ。
貴哉なら応えてくれると勝手に思い込んでいた。でもそれは間違えてたんだ。
貴哉の事は諦めようと何度も思った。仲直り出来ただけでも十分じゃないか。でもまた貴哉と過ごすようになり、やっぱり好きという気持ちがなくならない事を再確認した。
貴哉に会いたい。
その気持ちは日に日に強くなる一方で、俺はいつもスマホで貴哉のメモリを表示させては通話ボタンを押せずにいた。
俺が会いたいって言ったところでどうなるって言うんだ。今貴哉には恋人がいるのに。
「おーい!そこのピンク頭~」
「……?」
遠くでそんな声が聞こえて俺はキョロキョロしてみる。すると、小さい川に掛かった橋の向こうでこちらに向かって手を振る男が一人。
上に分厚いパーカーを羽織ってるけど、あれは城山高校の制服だ。嘘だろ。あれって、貴哉じゃん……
俺は今正に会いたいと思っていた男が目の前にいて何とも言えない気持ちになった。
貴哉は寒そうに巻いてたマフラーに顔を埋めてこちらに近付いて来た。
「やっぱり楓だ!お前髪切ったんだな!すげぇ短くなってるし~」
へへと笑う貴哉に自然と笑顔になれた。
いつもと変わらない貴哉に安心した。
「ああ、気分転換にな」
「いいじゃん♪長くて縛ってるのも似合ってたけど、俺は短い方が男らしくて良いと思うぜ~?」
「そ?貴哉が言うならこまめに切るわ♪てかお前とこんな時間にここで会うなんて珍しいよな。部活は?」
そもそも貴哉が一人でいるのが珍しい。最近は会うと必ず恋人の桐原さんがいたのに。
「なんかダルいから帰って来た。文化祭も終わったし、そこまで忙しくねぇからな」
「桐原さんは?」
「伊織は部活出てるよ」
「そっか。てかダルいってマジなやつ?風邪か?」
「んー、わかんねぇ。熱はないと思うけど、何か寒気がするんだ。最近いろいろ頑張ったから疲れてんのかもな~」
自分のおでこを触りながらそんな事を言ってるけど、本当に体調が良くないなら早く帰さないとだな。
せっかく会えたしもっと話していたかったけど、俺は桐原さんの代わりに貴哉を送って行こうと思った。
「風邪だったらマズいだろ。送ってくから帰って寝ろよ」
「あ、そんじゃ一緒に帰るか?楓と一緒に帰るのとか中学以来だなー」
隣で笑う貴哉は本当にあの頃のままだった。
それが懐かしくて俺は貴哉がとても愛おしくなった。
少しでも長く一緒にいたくて、俺は貴哉の体調を気にする素振りを見せながらゆっくり歩いた。
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