【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ4th season

pino

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1章 写真ばら撒き事件

空っ!俺ん家に行くぞ!

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 茜達は電車で帰るので駅で別れる事に。
 そして空と歩く。昨日空とは別れて友達の関係に戻った。友達に戻ってからあまり意識してなかったけど、変わらず側にいてくれるし、変わらない気がした。
 変わったのは、空が俺に触れなくなった事。気使ってるんだろうけど、元々空は人前ではあまりベタベタしてくる方じゃなかったから変わらないと思う。


「貴哉、明日起きられるか?」

「分かんね。でも朝一って言ってたし遅刻は出来ねぇから頑張るわ」


 伊織はきっと来ないと思う。最後向こうからあんな事言って来たからな。
 仕方ないから朝まで寝ないで過ごそうとか無謀な事を考えていた。


「嫌じゃなければ迎えに行こうか?」

「…………」


 言うと思った。でも伊織がダメなら空。みたいで気が進まなかった。


「いや、自分で起きる」

「大丈夫なのか?」

「うーん、分かんねぇけど、やるしかねぇ」

「そうだ♪電話しようか?起きるまでずっと鳴らしてあげる♡」

「お、それいいかもな。頼むわ」

「わーい♪朝から貴哉と電話出来るなんて嬉しい~」

「いや、起きたら切るぞ?」

「えっちょっとぐらい話そうって!」

「仕方ねぇな。少しだけだぞ」


 嬉しそうに笑う空。あまりにも変わらない関係に、俺はつい勘違いしちまいそうになる。
 空とはもう付き合ってないのに、こうしているのが当たり前みたいに思うなんて、どうかしてる。
 早く友達としていられるように切り替えねぇとな。
 そうじゃないきゃ甘えちまいそうで怖い。


「あのさ、ちょっと聞いてもいいか?」

「なんだ?」

「写真の事だけど、俺が知らないやつはあれは桐原さんからか?それとも貴哉?」

「っ!?」


 まさかその事を聞かれると思わなくて驚いちまった!空もこの話題は避けるかと思ったのに……
 嘘ついても仕方ねぇし、本当の事を言う事にした。
 俺の顔を見て慌てて空が手を横に振った。


「あ、もう怒るとか無いからな!ただ気になったからさ」

「俺が見たやつは二枚だけなんだけど、一つは花火大会の時のだ。伊織が浴衣着てるやつ。初めはそういうのじゃなかったんだけど、一緒にいたらつい……ちなみにこの後空にカミングアウトしたんだ。あと一枚は演劇部のBBQ大会の時のやつだ。あん時俺が二年にいじめられたって言っただろ?あれ結構ヤバかったんだ。伊織が助けてくれたんだけどよ、その後そういう雰囲気になって……なぁ?」

「なぁ?じゃねぇだろ!まったく貴哉は浮気性だなぁ」

「あー!怒ったー!怒らないって言ったのにー!」

「俺は貴哉にもっと自分を大事にして欲しいんだ!誰とでもしちゃダメって事!」

「何言ってんだ?俺、好きな奴としかしねぇぞ?」

「ぐっ……この子はここぞと言う時に天然炸裂するんだからっ」

「本当だって、俺、空と伊織としかしてねぇって」

「分かったよもう!ちなみに俺諦めてねぇからな」

「何を?」

「貴哉の事だよ。また惚れさせて彼氏になる♡だから小さい事気にしてらんねぇんだよ」

「……懲りないなお前も。俺なんか辞めればいいのに」


 本当に今の空は変わったよ。出会った頃の空はとにかくチャラかった。
 いつも女と電話してて、そこら辺歩いてるだけで誰だか知らない女に声掛けられて愛想良くしてたのに、今では俺ばっかじゃん。
 勿体ねぇよ。ホント。


「そんなけ貴哉の事が好きだからな♪卒業したら同棲するってのも俺の中では進行形だから、貯金するぜ~♪」

「勝手に言ってろ。うんと惚れさせてみろよ。俺が他と浮気しねぇぐらいにな」

「うん♡楽しみにしてて♡」

「空、ありがとうな」

「…………」

「あんな事になっちまって、やべーなってなったけど、みんなが助けてくれて嬉しかった。でも一番嬉しかったのは空、お前が俺を探してくれてた事だ。酷い事したのに、見捨てないでくれてありがとう」

「貴哉ぁ」

 
 とうとう泣くか?俺の言う事に感動してるのか、何を考えてるのかは分からないが、今にも泣きそうで、何かを我慢しているようにも見えた。


「見捨てる訳ない。貴哉の事、何よりも大事だから」

「ん。それと、また傷付けてごめんな」

「もういいって。どんな事をされても貴哉の事が好きって分かったし……さっきの聞いて分かった。俺、もっと良い男にならなきゃって。貴哉が他の奴に惹かれないぐらい良い男になるから」


 この時俺は、見慣れたはずの空の笑顔がとても大人びていて、知らない空に感じた。
 お前は十分良い男だよ。
 でも言ってやらない。こいつは調子に乗るからな。


「なぁ、貴哉ぁ~。ちょっとだけお願いがあるんだけどさぁ」

「なんだよ?言ってみ」

「少しだけでいいから、抱き締めさせてくれないか?」


 せっかくここまで我慢してたのに、とうとう言いやがった。
 でも俺はそんな空が愛おしくて仕方がなかった。
 だって、すげぇ辛そうな顔してんだもん。
 
 そんな顔見せられたら俺だって今日あった出来事思い出すじゃねぇか。
 何が起きたのか分からなくて、分かった時には伊織に突き放されて、担任からは明日呼び出されるとか言われて、俺、本当は逃げ出したかったんだ。
 自分が悪いのに、全部投げ出して、人任せにして、どこかに逃げたかった。
 みんながいてくれたから今こうして立ってられると思う。でもそんなの一時的なだけで、明日になったら学校なんて辞めてるかもしれない。


「空っ!俺んちに行くぞ!」

「うん!」


 俺は走って家に向かった。空も付いて来た。
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