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1章 写真ばら撒き事件
いつも見ていてくれてありがとうございます!
しおりを挟むチャイムが鳴り終わってから他のおっさん達も合流した。伊織の担任と、二年の学年主任だ。どっちも見た事ない先生だけど、俺から見たらみんな同じおっさんだ。ただ、伊織の担任だけは比較的若めで、見た目も普通。二十代とかか?
「それじゃあ全員揃ったから進めようか。鈴木先生どうぞ」
「えーっと、二人からはこの写真に写っているのは本人達で間違いないと確認が取れました。これは不純同性交遊に値します。本校では禁止とされているんです。中には部活動の一環での写真も確認出来ました。よって相応の処分を下したいと思います。異論はないですね?」
バーコードが嫌な言い方で他の先生達にうんと言わせようとしていた。
すると、俺の担任が手を挙げて言った。
「待って下さい。処分、と言いますとどんな処分でしょうか?」
「それはこの後決めます。処分が出るまでは二人には今日から自宅謹慎をしてもらいます」
「自宅謹慎?」
聞き慣れない言葉に俺は隣にいた伊織に聞こうとしたけど、相変わらず澄ました顔してこちらを見ようともしなかった。それに対して俺もフンッと反対側を向いて絶対口きいてやるかと思った。
「はぁ、そうですか……分かりました」
担任はガックリ肩を落としていた。
そしてニコニコ教頭が俺と伊織を見て聞いて来た。
「最後に、二人に聞きます。話しておきたい事とかはありますか?」
俺が自宅謹慎って何?って聞こうとしたら、先にずっと黙ってた伊織が手を挙げた。そして教頭に指名されて立ち上がって喋り始めた。
「今回の件で騒ぎを起こしてしまった事、心から反省しています。処分もキチンと受けます。ただ、その写真に写っている事は全て俺が秋山くんに対して一方的にした事です」
「……え?何?」
伊織が喋ると会議室の空気が変わった。一瞬俺は理解出来なくて聞き返したけど、伊織はそのまま続けた。
「周りからもてはやされて調子に乗って無理矢理手を出しました。この事も反省しています。以後秋山くんには近付きません。もちろん他の生徒にも手は出しません」
「おい!伊織!さっきから何言ってんだよ!」
「秋山くんは俺が怖いんだよな。悪かったよ。無理矢理あんな事をして。本当にすまなかった」
伊織はやっと俺の方を向いたと思ったらまるで人形のような顔して頭を下げて来た。
こいつ、俺を庇ってんのか?
だって、全部俺も伊織としたかったからした事だぞ?そんなの伊織だって分かってる筈だ。なのに何で俺を庇うんだよ!
俺もだけど、この伊織の突然の発言に、動揺したバーコードは恐る恐ると言った感じで話し始めた。
「え、えっとー、桐原くん?君は成績も生活態度も優秀だし、他の先生方や生徒達からも人望があるのはみんな分かっているんだよ。そんな秋山を庇うような事を言っても……」
「庇ってません。俺はそういう男です」
違う。伊織はそんな男じゃない。
そんなの俺だって分かってる。いや、ここにいる全員が分かってる事だ。
「うーん、写真を見る限り無理矢理してるとは思えませんけどね~。でも桐原くんがこう言ってるし、それも視野に入れて考えましょうか」
「待ってくれよ!伊織は嘘ついてる!俺は伊織に無理矢理されてなんかねぇよ!」
「秋山くんの言い分も分かりました。処分はなるべく早く出すようにしましょう。ではここまでにします」
最後は教頭が締めて終わらせようとしてるけど、俺は納得出来ねぇ。すぐに隣にいる伊織に声を掛けようとすると、逃げるように立ち上がって会議室から出て行った。
後を追おうとすると、俺は担任に呼び止められた。
「秋山、ちょっと残れ」
「チッ」
俺に拒否権はねぇんだろ。言われた通りそのまま椅子に座っていると、ぞろぞろと先生達が会議室から出て行った。
そして教頭が俺の横を通り過ぎようとした時、ニコッと笑い掛けて立ち止まった。
「秋山くん」
「な、なんだよ?」
「学校は楽しいかね?」
「は?」
「コラ秋山!敬語!」
「た、楽しい、ですっ。でも、こんな事があって、みんなに迷惑掛けて……悔しいです……」
本音を言うと、教頭は頷いていた。
そして優しい口調のまま続けた。
「その心を大事にしなさい。そうすれば君も桐原くんに負けないぐらい周りから慕われる存在になるでしょう」
「きょ、教頭!秋山はこんな性格で、頭も悪いし、生活態度だって最低です!でも、誰よりも頑張っていると思います。そして、教頭が言うように、既に慕われ始めています。秋山にはこう言う時に助けてくれる友人が沢山いるんです。だから、必ず反省させますので、その事を加味してどうか処分の方を決めて下さい!お願いします!」
「た、担任……」
担任は深々と頭を下げて教頭に言った。
あの担任が、俺の事を目の敵にしている担任が、俺の為に頭を下げて……
ここで俺はやっと自分のやった事の重大さに気付いた。誰かのせいにばかりしたけど、まずは自分が反省する事が必要だったんだ。
「担……玉山、先生!いつも見ていてくれてありがとうございます!これからもよろしくお願いします!」
「秋山ぁ、お前っ」
「いや~二人には参ったね。玉山先生のお気持ちは良く分かりました。そして秋山くん、君の事は人伝にしか聞いていなかったけど想像以上に面白いね。この件の処分は僕が責任を持って考えよう」
教頭は最後に俺の頭をポンとしてニッコリ笑ってから会議室から出て行った。
残されたのは俺と担任だけ。
ちょっと気まずかった。
「秋山っお前!やっと俺の気持ちが分かってくれたかぁ!」
「ち、ちげーよ!ああ言わなきゃいけねぇ雰囲気だっただろ!だからだよっ」
「それとお前、俺の名前知ってたんだな。嬉しかったぞ♪」
担任に褒められるとか恥ずかしすぎる!
俺は照れた顔を見られたくなくて、ふいっとすると、担任の笑う声が聞こえて来た。
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