【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ4th season

pino

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1章 写真ばら撒き事件

※ 違うっこれは嬉し涙だっ!

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 ※茜side

 仕方ないから着替え終わるまで裏方の仕事の見学でもしてるかと作業している人達を見る。
 すると、そいつらはサッと俺から見えないように死角を作って作業を始めた。

 そうだよな。俺がいたらみんな嫌がるよな。
 この部屋にだって小平がいたから入れたんだし。
 俺は後ろの壁の方を向いてみんなを見ないように背中を向けて目を閉じた。

 こういうのに慣れている筈なのに、何だかとても辛かった。きっと秋山や湊といるせいで、人といる事に慣れたからだ。
 誰かに相手にされない辛さを思い出して俺は落ち込んでいた。

 しばらくすると、閉じた目の辺りが暖かくなって、俺の真後ろに誰かが立ったのが分かった。
 いきなりだったので驚いて目を覆う物を手で触ると、誰かの手だと分かった。


「な、なんだ!?」

「だーれだっ♪」

「あ、その声、犬飼か?」

「正解~♡」


 俺の目を覆う手が外れて首だけ振り向くと、ニッと笑う犬飼がいた。
 そうか、犬飼は裏方のリーダーだったな。
 ここにいてもおかしくはないか。


「茜ちゃんが見えたから飛んで来ちった♪」

「あ、邪魔して悪かったな。すぐに出て行くから」

「いやいいよ。ゆっくりしてってよ。それと約束してただろ?ちょうどいいから今やるよ」

「約束?」


 犬飼は俺から離れてみんなの方を向くと大きな声で控え室にいる全員に呼び掛けていた。


「おーい!お前ら良く聞けー!ここにいるのは演劇部副部長様の二之宮茜様だー!俺と茜ちゃんは和解して今はちょー仲良しだ。だから茜ちゃんに変な事言ったり変な態度取った奴は俺が直々に処刑してやる。これからは普通にしろよー!後、茜ちゃんの後輩の秋山貴哉にもだ!分かったな!?」

「……あ」


 そう言えば犬飼が裏方の連中に改めて俺を紹介すると言っていたな。まさかそれを覚えていて今してくれたのか!
 しかも秋山の事まで!

 俺はその犬飼の行動に感動して泣きそうになった。


「茜ちゃんから何か言いたい事あるー?ちゃんと大人しく聞かせっから何でもいいよー♪」

「……い、いや、俺からは……よろしく……」

「可愛い♡よーし、お前ら作業続けろー!」


 俺は涙を見られたくなくて、いつものように堂々と出来ずに下を向いてしまった。
 とても恥ずかしい!

 それにしても犬飼はリーダーとしてしっかりやっているんだな。みんなも大人しく聞いていたし、少し強引な感じはあったけど、凄くリーダーっぽかったぞ。

 そして泣いてる俺に気付いて犬飼が心配そうに俺の周りをウロウロし始めた。


「あ、茜ちゃん!今の嫌だった!?ごめんって!泣かないでよ~」

「違うっこれは嬉し涙だっ!犬飼が、良い奴だから、嬉しくて……本当にありがとう」

「茜ちゃん……♡」


 涙を拭いてお礼を言うと、犬飼はポケーっと俺を見ていた。
 俺ももっとしっかりしなくちゃな!

 自分に喝を入れて気合を入れていると、更衣室のカーテンから小平がひょこっと顔だけ出して引いた目で犬飼を見ていた。
 

「ちょっと今の何ー?二之宮茜様ぁ?ちょー仲良しぃ?誠也ってばこないだから頭おかしくなっちゃったのー?」

「って!七海ちゃんいたのかよ!?何してんだそんなとこで!」

「今衣装合わせしてたのー!二之宮、着替えたよ~」

「お、そうか。じゃあこっち出て見せてくれ」

「やー!二之宮がこっち入って?」

「何甘えてんだよ七海ちゃん~?俺らにも見せてくれよ♪」

「黙れ犬!早く二之宮だけ入って!」

「怖っ!何で怒ってんの!?」


 訳の分からないのは犬飼だけじゃなく、俺もだったけど、きっと恥ずかしいんだろうな。女装した姿なんて笑い物にされるのがオチだもんな。
 俺は周りに見えないようにカーテンを最小限に開いて中に入った。

 そして案の定小平は、恥ずかしそうに水色のドレスを着て立っていた。


「ど、どうかな?」

「綺麗だ……」


 小平は男の筈なのに、何故かそのドレスが妙に似合っていて、俺は見惚れてしまった。
 これはみんなに見せても笑い物にされないぞ!
 自慢していい出来だ!

 そこにいるのはまるで可愛い女の子で、キュッとしまったくびれが色っぽかった。今は付けていないけど、これに更に女性物のロングヘアーのカツラを付けるんだけど、それを付けてメイクをしたら完全に可愛い女子だ。
 絶対この作品をやらなきゃダメだ!薗田さんに取り上げられてたまるか!と思った瞬間だった。

 俺の口から出た素直な感想に、照れていた小平の顔は更に赤くなり、顔を両手で押さえていた。
 その仕草や行動が女子のようで、さすが演劇部のエースだなと思った。


「嬉しいっ二之宮に最初に見て欲しかったの……」

「ああ、俺も最初に見れて嬉しいよ。でもこの出来なら文句無しだ。みんなにも見せよう」

「必要ない!もう着替えるから出てって!」

「な、何でだ?せっかく着たのに」


 追い出される形で更衣室から出ると、まだそこにいた犬飼も不思議そうな顔をしていた。


「なぁ、俺七海ちゃんに嫌われるような事したかぁ?」

「さぁ?」


 まぁこれからも衣装合わせはすると思うし、みんなには本番で見せられるしな。
 小平のあの姿を見たらみんな驚くだろうな。

 俺はそんな事を考えワクワクしていた。


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