【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ4th season

１章 写真ばら撒き事件

※さすがに坊主はやだからさ

　※紘夢side

　俺は貴ちゃんちに泊まった次の日の朝、学校へ行く為に家に帰った。

　本当はしばらく学校には行かないつもりだったけど、貴ちゃんに元気を貰ってみんなに謝る決心をしたんだ。

　昨日葵くんから来たメッセージに今返事をする。
「今日の昼に葵くんに会いに行きます」
　するとすぐに葵くんらしい返事が来た。
「了解」
　たった二文字だったけど、葵くんらしくて俺は学校へ行くのが楽しみになった。

　今からなら普通に行けば間に合うけど、昼と言ったのには訳がある。
　学校へ行く前にやっておきたかった事があったんだ。

　タクシーで家に帰る前に途中でドラッグストアに寄ってやっておきたかった事に必要な物を買った。
　本当は自分でやりたくないけど、急だったから後日ちゃんとプロにやってもらおうと思っている。

　そして家に帰って買って来た物を開けて準備を始める。
　そこへ的羽がやって来た。


「お坊ちゃん帰ってたんです？てか朝から何してるんですか？」
　
「えー、ちょっとイメチェンしようと思って～。ちょうどいいや。的羽手伝ってよ♪」

「イメチェンって……え、黒！？」

「本当に反省してますってアピールするなら黒かなって。さすがに坊主はやだからさ」


　的羽が驚いて俺が買って来た物を見てた。
　そう、俺はこれからこの銀色の髪を黒染めするんだ♪

　これは俺なりのけじめだ。
　こんな事で許されるなんてこれっぽっちも思ってないけど、新しい一条紘夢としてやって行く為の第一歩だと思ってね。


「反省って、まさか本家に謝りに行くんです？」

「な訳ないでしょ。とりあえず学校のみんなに謝るんだよ。俺悪い事いっぱいしたからみんなにまとめて謝るつもりー。ねぇ早くやってよ」

「へー、お坊ちゃんてば面白い事しますね。このまま本家にも謝りに行けばいいのに」

「的羽ー！これやったら送ってってよ」

「嫌ですよ。俺今日予定あるんですから」

「お前本当に本家に戻りたいと思ってるのか？そんなんじゃ父さんに叱られるぞ」

「安心して下さい。こんな態度はお坊ちゃんにしか取りませんから♪」

「まぁいいや。ゆっくりタクシーで行くよ」


　的羽はいつも俺に対してこんな感じだ。
　変に畏まられるよりは楽でいいから何も言ってない。
　きっと俺はこうやって対等に話してくれる人を求めていたんだと思う。

　だから今のこのボロ屋敷での暮らしは結構気に入っていた。

　的羽に手伝ってもらい、シャワーから出て髪を乾かす。
　久しぶりに見た自分の黒髪姿を見て、幼くなったなと思った。


「あら、結構お似合いですよ？高校生らしくて俺は好きですね」

「そう？的羽の趣味なんかどうでもいいけど、似合ってるなら良かった」

「俺の趣味知りたいです？」

「お前は人の話聞けないのか？てかお前何歳なの？」

「二十歳です」

「やっぱりな。若いとは思ってたけど、予想通りだ。何でうちに就職したんだ？的羽が採用された理由は分かるけどな」


　俺の世話役兼監視役をさせるからだ。
　一条家の使用人に選ばれるにはそれなりの学歴や経歴が無ければ門前払いだ。
　的羽みたいな今時の若い使用人は見た事ない。


「お給料良かったからですよ。一応俺大学生なんですよ。カテキョのバイトしようかと思ってたら良い求人出てたんで、応募してみたら受かっちゃったーみたいな？」

「素直だな。まぁいいんじゃない。どうせ俺が卒業するまでしかいれないだろうし。あと一年とちょっとか？ちょうどいいじゃん。一緒に就職先でも見つける？」

「あと一年もいられるんです？お坊ちゃんすぐ学校辞めると思ってましたよ」

「失礼な奴だな……まぁ俺もそう思ってたけどね」


　今までは何とも感じなかった的羽との会話も今日はとても楽しく感じた。

　きっと貴ちゃんのお陰だ。
　ありがとう貴ちゃん。
　暗かった俺の進む道に光を差してくれて。

　俺は久しぶりの黒髪と共に城山高校の制服に腕を通して笑顔で家を出た。