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1章 写真ばら撒き事件
毎日家で元気にダラダラしてたぜ
しおりを挟む紘夢の指示でスイーツ勝負の件で気まずくなった空気が一変し、スーツ姿やメイド姿のキチっとした人達がどんどん運んでくる旨そうな料理達にこの場にいたみんなは釘付けになった。
簡単なデリバリーでも頼んだのかと思っていたが、とんでもない。
なんと、料理を持って来たのはあの戸塚だったんだ。
紘夢と戸塚は従兄弟同士で親戚だからか。
「春樹、急だったのに悪かったね。是非春樹も楽しんで行ってよ」
「ああ、大丈夫だ。訳を話したら父さんが張り切ったんだ。心配してるから今度顔を出してくれ」
「叔父さんは優しいな~♪お礼も兼ねて今度ちゃんと伺うね」
「喜ぶよ。それとその頭に驚くな」
二人がドアの所で立って話をしていた。
俺は次から次へと並ぶ料理達を見てよだれが出そうだった。
前に戸塚んちで直登の誕生パーティーやったけど、テーブルの上はそん時みたいなご馳走でいっぱいになった。
「さぁみんなパーティー始めるよ~♪乾杯するから好きな飲み物持って~」
紘夢が言うとみんなは言う通り各々好きな飲み物が入ったグラスを手に持った。
俺は生クリームの味を流したかったからお茶にした。
そして紘夢が話し出した。
「みんな、この場を借りて少しだけ話をさせて下さい。俺が住むこの家の掃除に手を貸してくれて、本当にありがとうございました。今まで散々やりたい放題して来た俺なんかに協力してくれた事、心から感謝しています。ささやかですが、お礼の意味も込めて料理を用意しました。この後は自由に楽しんでもらえたら嬉しいです。今まで本当にすいませんでした。そして、ありがとう!」
紘夢は最後に頭を深々と下げてそう言った。
もうここにいる奴らで紘夢の過去の事を気にしてる奴なんていないだろうけど、ケジメをつけたかったんだろう。
後は時間を掛けて分かってもらうしかねぇと思う。
目が合った紘夢に親指を立てて笑ってやると、照れたように笑っていた。
そしてパーティーが始まり、すぐに空が近寄って来た。
「よっしゃー!食うぞー♪」
「貴哉ー♪あっちに美味しそうな肉あったぞ」
「まじ?取って来てくれよ」
「それなら持って来たぞ。ほら」
空の反対側に伊織が旨そうな肉が乗った皿を出して言った。
気が利くね~。
「マジだ。旨そうじゃん」
「あー!桐原さんズルいです!俺が見つけたのに」
「紳士ならこういうのは皿に取って運んでやるんだよ。覚えとけよな~」
「二人共今ぐらいは喧嘩すんなよなー」
せっかくの楽しい席を壊したくねぇからな。
二人に釘をさすと、嫌々返事をしていた。
そこへ、茜が入って来た。
「秋山!元気にしてたか?」
「してたしてた。毎日家で元気にダラダラしてたぜ」
「秋山らしいな!実は演劇部もいろいろあったんだよ。今度ゆっくり話を聞いてくれ」
「別に今でもいいけど?」
「なになに?俺も聞きたい」
伊織が俺と茜の間に入って来た。
空は俺の後ろで聞いていた。
「桐原……二人に関わる事だしな。よし、話そう」
「?」
「二人が謹慎や停学になって、演劇部の奴らが二人を外したがっていたんだ。もちろん俺は反対だった。そこへ同じく二人を外すのに反対の薗田さんが……うん、まぁ、ちょっと意地悪して来たんだ」
「詩音さんが?何したんだ?」
「文化祭で公演する予定の脚本を取り上げるって言い出してな。そして新しい脚本なんだが……それが酷い物だったんだ」
「やばいじゃん。どんな話だったんだ?」
「三匹の子豚……って知ってるよな?」
「あはは!詩音やべーな!意地悪過ぎるだろ!」
「で、どうなったんだ?」
「その時はもう演劇部にはまとまりなんてなくて大パニックさ。俺も二人の事もあるし、脚本の事もあるしで正直どうしたらいいのか分からなくなっていたんだ。そこへ一条が助け舟を出してくれたんだ」
茜は嬉しそうに笑って少し離れた所にいる紘夢を見て言った。
あの紘夢が人助けだと?
詩音の新しい脚本もだけど、それは気になるな!
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