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2章 球技大会
俺は前みたいな友達に戻れたらって思ってるよ
しおりを挟む伊織と別れて教室に行くと、すでに来ていた直登が慌てた様子で近寄って来た。
何を言われるのか大体想像つくけどな。
「貴哉!一体何があったのー!?今日桐原さんと来てたよな?空くんは?それと、みんな桐原さんがヤバいって話してるけど、どういう事!?」
「ちょ、一気に喋るな。まず席に座らせろ」
直登を避けて自分の机に座る。
数馬も心配そうに見てた。
てか伊織がヤバいって、さっきのやつか?だとしたら噂が広まるの早くね?
あいつがヤバいのは今に始まった事じゃねぇけど。
そしてソワソワしながら俺からの答えを待つ二人に向かって正直に話そうと思った。
「結論から言うと俺と伊織は今付き合ってるんだ」
「そっか。じゃあ空くんとは?」
「金曜に別れた」
「え!?」
「そんな……」
「待ってよ!空くんと別れたって嘘だろ?空くんが貴哉を手放す筈ないじゃんっ」
「初めは別れたくないって言われたんだ。だけどこのままじゃ傷付けるだけだってちゃんと話したら分かったって」
「何それ!空くんってばそんな軽い気持ちで俺から貴哉を取ったって事ぉ!?許せないっ」
「直登落ち着いて!それと声大き過ぎっ」
数馬の言う通りだぜ。クラスの奴らが何だ何だとこっち見てるじゃねぇか。
今にも空に文句を言いに行きそうな直登を落ち着かせて、話を続けた。
「伊織がヤバいってのは、多分朝のやつだ。あいつといると目立つからそれが嫌だって言ったら、その辺で自分の事を見てた女子高生達にそれ以上見たら殴るぞ。周りにも言っとけって直接言ってたんだ。もしかしたらその時の目撃情報と脅された女子高生達が話したのが広まってるのかもしれない」
「はぁ、初めて会ったであろう人にそんな事を言う桐原さんもだけど、貴哉も桐原さんみたいな超有名人と付き合うならそれなりの覚悟と我慢は必要でしょ。桐原さんが目立っちゃうのは仕方ないと思うし、そこは我慢してあげなよ」
「お、俺は貴哉の気持ち分かるっ!普通に歩いていてジロジロ見られるのは嫌だ。怖いもん……」
「数馬くんはもっと自分に自信を持つ事だね!見られるのなんて初めだけで慣れてくればそこまで見られたりしなくなるんだから。周りの目なんか気にしないで堂々としてりゃいいんだよ」
「やだね。ぶん殴りたくなる!」
「俺もやだ!怖いからっ」
「まったく二人は本当に似てるなぁ!」
俺と数馬が直登に何故か説教されてると、教室に入って来た空が目に入った。
あ、ちゃんと来たんだ。いつもと変わらない空だった。それに俺は少しホッとしていた。
「あ、空くんだ」
「貴哉ぁ、空は二人が付き合ってる事知ってるのか?」
数馬が不安そうに聞いて来た。
多分知ってるだろうな。別れ話をした時に俺が伊織を選ぶって分かってたみてぇだからな。
「付き合ってるってのはどうだか知らねぇけど、俺が伊織を選んだのは理解してるよ」
「そっか」
「まぁいいんじゃない?実際空くんだって俺から貴哉を取ったんだし。あの時のバチが当たったんだよきっと。ザマァだからちょっと茶化して来る~♪」
「あ、やめろって!」
直登の奴、何も知らないからって勝手な事言いやがって。
俺は直登の後を追わずにそのまま座っていた。だって俺から無理に声かけるのもあれじゃん?一応振ったの俺だし……
やっぱり気まずいんだよな。
すると、隣にいた数馬が慌てた様子で俺に言った。
「おい貴哉、空がこっち来る!」
「はぁ!?なんで!?」
数馬の方を振り向くと、本当に空がこちらに向かって歩いていた。つかもうそこまで来てた。
何でだ!?表情は普通?いや、何か落ち着いていていつもの空に見えるけど……直登の奴、何言いやがったんだ!?
そして空は俺の側まで来てニッコリ笑った。
「おはよう貴哉」
「は、はよ……」
「中西から聞いたぞ?桐原さんと付き合う事になったんだって?」
「ごめーん貴哉ぁ!茶化そうと思ったら全然動じなくて~」
「ごめんじゃねぇよ!人を無闇に茶化すんじゃねぇ!」
「あのさ、少し向こうで話せないか?二人きりがマズいならここでもいいけど」
空が俺に話?見た感じいつもと変わらない空みてぇだけど、一体どんな話をする気だ?
考えたら怖ぇな。いや、でもみんながいる所でヤバい話は出来ねぇし、内容も気になる。
「いいよ。向こう行こうぜ」
「行ってら~」
直登達に見送られて俺は空に付いて行く。廊下に出て少し開けたスペースまで歩いて行く。
そして空は俺に向き直って真っ直ぐ見て来た。
久しぶりの空に、俺は直視出来なくて窓の外を見て誤魔化してしまった。
「まず、おめでとう」
「え?何が?」
「桐原さんと付き合った事だよ」
「……おう」
「あと、貴哉が嫌じゃなければもうちっと普通に接して欲しいかな~?」
「普通にって?」
空の言う事が上手く理解出来なくて聞き返すと、空は俺から少し離れて笑顔のまま答えた。
「俺とだよ。気まずいのは分かるけどさ、お互い同じクラスなんだし、せめて一年でいる間だけでも今まで通り普通にしててくれね?じゃないと周りがおかしく思ってうるせぇだろうからさ」
「でも、お前は平気なのか?俺はてっきりお前が嫌がるかと思って……」
「平気だよ~♪俺は前みたいな友達に戻れたらって思ってるよ」
空は窓の外を見てそう言った。
あまりにも普通に話してるから本心なのかは分からない。俺が空の言う事が素直に受け入れられなかったのは、あの空がそんな前向きな事を言うからだ。
あんなに俺の事が好きで、あんなに俺と別れたがらなかった奴が、別れた後に友達になんて言うのか?
俺だったら、無理だ。
でも空が言う事も分かる。俺と空が教室で険悪な雰囲気を出していても周りが気を使うだろうしな。俺は空の意見を受け入れる事にした。
「分かった。空が言うなら」
「良かった~♪んじゃ先に戻るわ~!」
「…………」
パァッと笑って俺の横を通り過ぎようとした空が「あ」と声を出して、立ち止まった。まだ何かあるのか?
「そうだ。お互いの家に置いてある私物だけど、あまり長く置いておかない方がいいから今日の夜貴哉の物まとめて届けるよ。そっちに置いてある俺の物はその時に受け取るから、まとめておいてくれると助かるな~?なんて♪」
「…………」
夏休み中に結構泊まりとかしてたから俺の部屋には空の私物がたくさんあるのは確かだ。
そうか、空は本当に吹っ切れたんだな。
俺もいつまでも気にしてたらダメだと思い、頷いた。
「分かった。来る時連絡くれよ」
「はーい♪」
その後空は先に教室へ戻って行った。
残された俺は授業開始の鐘が鳴るまでそこに立って窓の外を見ていた。
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