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2章 球技大会
桃山ぁ!打ち返せるもんなら打ち返してみな!
しおりを挟む9月も終わる頃、そして今日金曜日!とうとう球技大会がやって来た。
俺は藤野との特訓で普通にラリーが出来るようにはなっていた。幸いうちの学校はスポーツは強くない。稀になっちとか伊織とか桃山みたいな化け物はいるけど、他はインドアな奴らばっかだから、問題は桃山チーム、紘夢チーム、茜チームと当たった時だ。俺が知る強敵はこの3チームだ。藤野も同じく思っているらしく、俺達の作戦を再確認している所だ。
「秋山、もし3チームとぶつかる事があったら無理はしない事。基本的に秋山が前、俺が後ろ。秋山は行けそうならガンガン攻めていいから、俺もサポートしながら取れそうな球あったら打ち込むから」
「おう!頑張ろうな藤野!」
藤野は本当にテニスが上手い。俺の後ろにいたかと思えば俺が取れない球を前に出て来てネットギリギリに打ち込んだり、後ろに飛んでった球は必ず拾って打ち返すし、初心者の俺にとってとても頼もしかった。
俺が元気良く返事をすると、藤野はニッコリ笑って頷いた。
テニスコートには他の学年、クラスの奴らがたくさんいて、その中に見知った顔が何人かいた。
そして集まっていた茜達を見付けて俺と藤野は声をかけた。
「ようお前ら~!今日は正々堂々やろうな!」
「秋山!ああお互い頑張ろうな!」
「それにしても貴ちゃん、いきなり可哀想だね」
紘夢が俺を見て哀れむように言った。何の事だ?
俺が頭にハテナを浮かべてると、隣にいた雉岡が教えてくれた。
「もしかしてリーグ表見てねぇのか?お前らの第一試合、一年A組は二年A組とだよ」
「リーグ表!?なんだそれ!」
「まだ見てませんでした。確か二年A組は……」
「まさかいきなり貴哉と藤野をボコれるなんてちょーラッキーなんだけどぉ♪」
「桃山かぁ!!」
上下黒の長袖のジャージを着てる桃山がニヤニヤしながら前に出て来て俺達に言った。
くそー!いきなり強敵と当たっちまったか!
「藤野!桃山をボロボロにしてやろうぜ!」
「そうだな!頑張ろう!」
「秋山、くれぐれも怪我だけはしないようにな?」
「茜!見ててくれよな♪俺頑張るから♪」
茜にとっては俺も桃山もどちらも応援したいところだろうな。
第一試合が始まる為、俺達は指定されたコートに入る。この学校にはコートは四つある。だから合計八つのチームが一気に試合を始める。リーグ戦らしいから勝ち残って行けば優勝だ!
桃山はテニスは趣味程度とか言ってたけど、普通に上手いからな。自由なスタイルで動いてくるから予想出来ない球が飛んで来るから俺は苦手だった。藤野は平気で打ち返すけどな。
相手コートには桃山がど真ん中に立っていた。そして相方であろう男は俺達からみて桃山より左の端っこの方にポツンと立っていた。
「面白い陣形だな。これじゃ右がガラ空きだ」
「あいつの事だから何か企んでるな」
「あ、もしかして!」
「俺も思った。あいつらしいけどよ」
俺と藤野の予感は当たってると思う。
あの桃山だ。誰かと手を組むなんて野暮ったい事はしねぇだろ。
そして桃山は自分の相方をギロッと睨んだ。睨まれた相手は「ヒィッ」と怯えた悲鳴を上げて震えていた。
多分、いや確実に桃山は一人でプレイする気だ。あの相方の事もダブルスじゃないと出場出来ないから、無理矢理脅したりでもしたんだろう。
でもそれならこっちにも勝ち目はあるよな!?
「秋山、なるべく桃山さんを動かしてバテさせよう。打てそうな球来たらどんどん入れていいからな」
「あいつの体力は無限な気もするけど、やってみるか!」
そうして始まった桃山との対決。
サーブは俺達からで、藤野がやる事に。
藤野はやっぱり桃山の右側を狙っていた。桃山は読んでいたかのように軽々と球に追い付き打ち返して来た。
それから桃山と藤野のラリーが続いたが、先に息を切らしたのは藤野だった。それでも懸命に動いているけど、明らかに疲れていた。それに対してマスクを付けているにも関わらず顔色ひとつ変えずにコートを端から端へ動く桃山はやはり化け物だった。
だけど、こっちは二人いる!俺はそろそろ動こうと、藤野に声を掛ける。
「藤野!次俺行く!」
「秋山!頼んだ!」
「へー、貴哉が遊んでくれんの?嬉し~♡」
俺達のやり取りを聞いて桃山が余裕そうに言った。正直俺は体力に自信はねぇ。だから速攻で倒す!
桃山が打ち返した球は真っ直ぐ俺に向かって飛んで来た。あいつ舐めやがって!
俺は飛んで来た球を教わった通りのフォームで打ち返す。それは綺麗に相手のコートに飛んで行き、桃山がすぐに追った。
「やるじゃん貴哉♪」
「次で倒す!」
「やってみな♪」
再び俺に目掛けて打ってきた。くそー!桃山のやつ、俺に打ちやすい球ばかりよこしやがる!
桃山にとって打ち返しにくい球を打つしかねぇ!そうだ!桃山の相方だ!今も震えながら突っ立ってるあいつを狙えば、あいつが障害になって打ちにくくなるだろ!
俺は思い切り桃山の相方の足元目掛けて打ち返す。すると、桃山の相方はいきなり自分の方へ来たものだから驚いてラケットを構えるのも忘れているようだった。
桃山は素早く相方の方へ移動しながら大声で言った。
「テメェしゃがめぇ!!」
「はいぃぃぃ!!」
男は桃山の命令に頭を守りながらその場にうずくまった。そして男が立っていた所にラケットを思い切り振って何とか球を返して来た。
さすが桃山だ。やるな。
でもその球はチャンスボールだった。
桃山もギリギリだったのか大きく打ち上げられた球は大きな弧を描いて俺達のコートに入って来ようとしていた。ロブショットってやつだな!
「秋山!決めろ!」
「おうよ!」
これはあのスマッシュを決める時だ!あの気持ちいいやつだ!
俺は頭上から落ちて来る緩い速度の球を迎えるようにラケットを構えて、その時を待つ。打つ方向は桃山とは正反対の右後ろだ!
「桃山ぁ!打ち返せるもんなら打ち返してみな!」
「貴哉のスマッシュなんて余裕だもんね~!」
俺が打つ前に桃山が動き出す。やはり俺が打とうとしていた方向だ。そして俺は構えていたラケットを振らずに、横へ移動する。すかさず藤野が俺の後ろから現れて俺がやろうとしていたスマッシュを決める体勢をとった。
「藤野!頼んだぞ!」
「秋山ナイスフェイント!」
そう、俺と藤野の連携プレイだ。ダブルスの場合はこういう面白いプレイ方法もあるんだって藤野に教えてもらったんだ。これをやるなら絶対桃山にだと思っていたから、チャンスボールを待っていた。
藤野の放ったスマッシュは桃山が向かった方向とは逆の、まだうずくまっている男の真横に決まった。
「嘘……点取られちった」
これには桃山も驚いてた。ザマァ見ろだ!ダブルス舐めてっからこうなるんだ!
俺達一年チームが点を入れたからか周りからの歓声が多く聞こえた気がした。
「秋山ー!藤野ー!ナイスプレー!」
「二人共やる~♪息ピッタリじゃん!」
茜と紘夢からも褒められた!ちょー楽しいなコレ!
「藤野やったなぁ♪このままあんな変態野郎やっつけちゃおうぜ!」
「ああ!俺達なら出来る!」
俺と藤野はお互いに手でグーを作ってそれをぶつけ合った。
このまま桃山をぶっ倒して、テニスで優勝だー!!
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