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8章
茜〜帰っちゃうとか寂しい事言うなよ
しおりを挟む午後、俺と紘夢、そして茜と双葉が合流してどこかで蕎麦を食いながら時間を潰した後、23時過ぎになり四人でカウントダウン花火が行われる会場へ来てみた。途中まで的場に送ってもらったんだけど、渋滞が凄くて人混みの中を歩いて来てみた。
これだけ人が多かったら桃山に遭遇する事もねぇだろ!
「凄い人だな。離れるとはぐれそうだな」
「茜小さいから迷子になりそうだな♪」
一生懸命に人混みを掻き分けて俺の隣を歩いている茜が可愛いくて揶揄うと、ジーッと俺を見て来た。え、怒るのか?
「ちょ、冗談じゃん。笑ってくれよ」
「いや、秋山って俺と同じぐらいだったよな?」
「は?何が?」
「身長だよ。俺と出会った時は目線が同じだったのに、今はお前の方が上に見えるんだ」
「確かに、貴ちゃん背伸びたよね~」
そう言う紘夢とは大差ない気がする。
もちろんこの中でダントツ背が高いのは中学三年生の双葉だけど。
「双葉お前何センチあんの?」
「最後に測った時は186でした」
「高っ!俺お前目指すわ!」
「それは無理があるだろ」
「てか貴ちゃんはそのままでいいよ~♪」
「貴哉はこのぐらいがちょうどいいと思いますよ」
「えー、俺も双葉ぐらい高くなりてぇよ」
身長が伸びたとは周りからちょくちょく言われてっから嬉しいんだけど、多分本当に数センチだ。双葉とか伊織とか背の高い奴と並ぶとあんま変わらない気もするんだ。
もう伸びねぇのかなぁ?
「なぁ双葉~、類っていつ身長伸びたんだ?あいつ俺より低かったんだけど」
「さぁ?類の事は中学からしか知らないです。その時は俺と同じぐらい……180近くはありましたね」
「中1で!?化け物かよお前ら!」
「そう言えば類くんは元気~?一緒に城山受けるんでしょ?」
「元気ですよ。今日も来たがりましたけど、断りました」
双葉は俺を見てニッコリ笑った。類の事が苦手な俺に、一応気を使ってくれてんのか。
「類って言うのは浅野の友達か?」
「はい。同じクラスです」
「別に来ても良かったんじゃない?どうして断ったの?」
「えっと、俺が貴哉を独り占めしたかったからです!」
「あはは~♪双葉くんてば可愛い~♪類くんも貴ちゃんに懐いてるんだぁ?」
「たくさんの後輩からも好かれるなんて、さすが秋山だな♪」
「ハ、ハハハ~……」
せっかく双葉が誤魔化してくれたからそう言う事にしちまえ!
実際俺は類のことが苦手だ。この事を二人は知らないから、いちいち話すのも面倒だしな。
そんな話をしながら歩いていたら人混みは更に増えて、もうこれ以上進めない所まで来た。
「この辺でも見れるかなぁ?もう少し早ければ近くのホテル取ってそこから見れたんだけどね~」
「この時期だとどこもいっぱいだろうな」
「あー、人がうぜぇ」
「貴哉、大丈夫ですか?」
人が多過ぎてちょっと嫌になって来た俺を心配そうに見て来る双葉。いや、大丈夫じゃねぇよ。寒ぃし、腹減ったし、カウントダウンまでまだ時間あるし、俺何でこんな思いしなきゃなんねぇの。
「俺も人混みは嫌いです。俺が道を開けさせましょうか?」
「あ、寒いのも空腹もカウントダウンまでの待ち時間も我慢しますんで必要ありませーん♪」
やべ!一瞬双葉の顔が本気だった気がする!ここで暴れさせるのはまずいだろ!
俺はニッコリ作り笑いをすると双葉は安心したように笑った。
「俺もお腹は空いたなぁ~。やっぱり蕎麦だけだとね~」
「花火終わったらどっかで何か買って紘夢んちでパァッとやろうぜ♪俺酒飲みたい」
「秋山は飲酒するのか!」
「うん。母ちゃんに怒られるから家では飲まないけどな。茜は苦手なのか?」
「苦手と言うかアルコールは飲んだ事がない。第一俺達はまだ未成年だぞ」
「茜ちゃんは真面目くんだもんね~♪今日ぐらい羽目外してもいいでしょ♪家にいろんなお酒置いてあるからみんなで楽しもうよ」
「いや、良くないだろ。浅野だってまだ中学生だし……」
「一条さん、日本酒ありますか?俺、ワインとか苦手なんです」
「双葉、酒強いのか?」
「酔った事ありません♪」
「こ、こら!未成年で飲酒はダメだ!」
「まぁまぁ♪茜ちゃんはノンアルでいいからさ♪的羽にノンアル頼んどこ♪あいつ日付け変わったらもう使用人じゃないんでとか言ってバックれそうだから」
「お前達っそんなの絶対ダメだっ!俺は帰るからな!」
まさかの茜のクソ真面目が出て、一人で猛反対した。更には帰るとか言う始末。えー、こういう時って酒飲んだ方が楽しくね?
俺もこの前の失態があるからあんま飲まないようにしなきゃだけど、少しくらいいいだろ。
「茜~帰っちゃうとか寂しい事言うなよ。今日はみんなで紘夢んち泊まろうぜ?絶対楽しいからさ♪」
「そうだよ♪飲む飲まないのは別として一緒に楽しもうよ♪俺、友達と年越しした事ないから凄く楽しみにしてるんだよ~」
「俺だって初めてだよ……でも……」
「そりゃ初めてじゃ怖いよな~不安だよな~?でもみんな一緒になら怖くないらしいぜ?」
「ん?」
「え?」
俺、紘夢が乗り気じゃない茜を説得してると、もう一人の声が聞こえて来た。もう一人いるとしたら双葉だけど、今の双葉が言うセリフかぁ?
俺は双葉を見るけど、ニコニコ笑って立っていた。いや、今のは双葉じゃない。
俺と紘夢はほぼ同時に声のした方を見る。
するとそこには双葉と同じぐらい背の高いヒョロっとした金髪の男、桃山が満面の笑みで立っていた。
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