20 / 51
3章 漆原千景
19.電車で待ち合わせ
しおりを挟む土曜日、今日はクラス会がある日だ。俺は神居に会うと言う目的の為だけに準備をして家を出て駅にいた。
昨日神居が家に来た時に二人でお互いの気持ちを伝え合ったけど、あれから神居とは連絡を取っていなかったから顔を合わせるのは気恥ずかしい気もした。
だけど会いたかったから俺は時間通りに到着するように行動していた。
神居に俺の気持ち、上手く伝えられたかな。
神居には隠したくなかったから、恋の事を話したけど、あんなに怒るとは思わなかったな。あと、泣きそうな目をしてたな。
他人と関わる事を避けていたせいで、コミュニティ能力が無さ過ぎる自分の事が、初めて情けなく感じたよ。
これからはもっと上手く伝えられるようにもっと大切にしたい。
駅のホームで電車を待っていると、メッセージがあった。あ、神居からだ!
神居からと言うだけでこんなにも嬉しい気持ちになるなんて、恋以外に対して初めての感情だからまだ困惑してしまう。
いや、素直に喜ぼう。じゃないと神居に伝わらないからな。
『おはー!千景電車乗った?』
『今からだよ。神居は何分のに乗る?』
『次のやつ~。千景間に合う?一緒に行こ♪』
『もうホームで待機中。二両目に乗るから』
そんな感じで乗る電車を合わせる事にした。
神居は今日どんな服を着て来るのかな。
いつもは青いジャージを愛用しているけど、まさか普段から着てたりしないよな?それはそれで似合ってるからいいけど。
靴はスニーカーかな?暖かくなって来たからサンダルの可能性もあるか。
帽子は被ったりするのかな?青みがかった髪が綺麗だと思うからそのままでいてもらいたい気もするな。
ああ俺は神居の事ばかり考えてしまうな。
電車に乗って次の駅に到着するのを楽しみに待っていた。運良く座れたから、神居が乗って来たら譲ろうと思う。
程なくして一気に人が乗車して来て混み出す駅、神居が使っている駅に到着した。
俺は乗って来る人の中から神居を探す。
すると、サングラスを掛けて、ワイヤレスのイヤホンを耳に付けた若者が俺の前に立った。
「よう♪昨日振り♪」
「神居?」
サングラスを外して、着ていた大きめの白のTシャツの首元に下げて、イヤホンも外した。白のTシャツの袖は肘ぐらいまであり、折り返した部分がチェック柄になっていてお洒落に見えた。下はカーゴパンツでゆとりのある物、それをダボっと緩く履きこなしていた。そして黒のスニーカー。
うわ、私服姿を見ただけなのに、こんなにドキドキするなんて……
「あ!座ってくれ」
「え、いいのー?ラッキー♪」
予定通りに神居に席を譲ると、機嫌良く座ってくれた。良かった。
それにしてもあの神居が目の前にいるなんて、ちょっと恥ずかしいな。
俺は神居の前に立ち、吊り革を掴んで自然と窓の外を見てると、神居に腹部をツンツンと突かれて呼ばれた。
軽く下を向いて顔を見ると、俺を見上げる神居と目が合ってドキッとした。
上目使い可愛い……♡
「千景の私服姿かっけぇな♪身長あるからどんな服でも似合っちゃうんだろうな」
「そうか?普通だろ」
神居に褒めれた!
でも俺は黒いカットソーに黒のトレンチコート。下は普通のスキニーだし、別段お洒落をした訳でもないのに褒められて恥ずかしくなった。
神居に見られるなら、お洒落には疎いから今度からはファッションの事も勉強するべきか……
「はは、そのセリフ俺も言ってみて~」
「神居こそ似合ってて、可愛いよ」
「かわっ!男にそれは褒めてないって~!まぁ千景が言うなら嬉しいけど♪」
へへと子供のように笑って見せる神居は、とても楽しそうだった。
そんな神居の笑った姿を見てるだけで俺も楽しい気持ちになれた。
その後、たまたま同じ電車に乗っていたと言うクラスメイトに声を掛けられて神居はいつも通りに明るく会話し始めていたけど、俺は黙ってずっと立ち尽くしていた。
幸せな時間を取り上げられたようでとても居心地が悪かった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話に、真紀ちゃん(攻)視点を追加して、倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学で逃げ出して後悔したのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる