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3章 漆原千景
25.その余裕は?
しおりを挟むクラス会があってから一週間が経った頃、俺と神居は教室でも二人で行動するようになっていた。たまにクラスメイトが琴葉に声を掛けるけど、琴葉はすぐに俺の所に戻って来た。
そして山田だけど、あれから俺とは関わろうとせず、体育の時も寄って来なくなった。
山田は一人でいて、誰かに声を掛けられるのを待っていた。
だからあの時の事は特に話してはいない。
「千景何読んでるのー?」
「参考書」
「うえ、休み時間でも勉強かよ。千景ってガリ勉くん?」
授業の復習も兼ねて参考書を読んでると、紙パックのジュースを飲みながら琴葉が聞いて来た。
「そこまでじゃないけど、成績は落としたくないんだ」
「確か千景って毎回10位以内に入ってたよね。凄いね~、毎回張り出される順位表に名前が載るのってどんな気分~?」
「良く知ってたな、一応10位以内はキープしてるよ。気分は……毎回ホッとしてるかな」
「そんな上位にいたら余裕でしょ、なぁ勉強もいいけど、俺にも構ってよな~」
「琴葉は勉強は得意じゃないのか?」
「普通かな~?順位は真ん中ら辺をウロウロしてる~」
机に肘を付いてニコニコ機嫌良さそうにしている神居。
俺は一応大学入試を目指しているので勉強はキチンとしていた。
中学の頃恋と同じ高校へ行きたかったけど、恋の志望校があまりにもレベルの低い所で両親に反対されたんだ。大学へ行けない事はないけど、俺が不良になってしまうとか何とか……
逆にガチガチの進学校へ行ってしまうと、恋との時間が減ると思って中間辺りのこの高校を選んだんだけど、お陰で毎回希望する順位内をキープ出来るからありがたい。
それもあってこうして琴葉にも出会えたしな。
「神居は卒業したら進学か?就職か?」
「んー、一応進学って事にしてるけど、正直まだ未定~。このままなら適当に行けるとこ行ければいいやって思ってる」
「そっか、同じ進学同士頑張ろうな」
「……千景って行きたい大学とかあるの?」
ここで琴葉は何かを考えるような顔をした後、俺に聞いて来た。
一応良い大学を目指していて、今の成績なら問題ないとは言われているけど、もしかして琴葉も目指したりしてくれるかな?
同じ大学へ行けたら嬉しいな。さすがに強要は出来ないけどな。
俺が少し期待も込めて、素直に希望する大学を伝えると、琴葉はギョッとした顔をしていた。
「げぇ!?そんな良いとこ目指してんの!?それならもっと良い高校行けば良かったのに~」
「いや、このぐらいが俺にはちょうどいいよ。無理せずに自分のペースで勉強出来るからな。琴葉はどこを目指してるんだ?」
「そこまでは決めてなかったけど……今決めた♪俺も千景と同じとこ行く♪」
「はは、琴葉と同じとこ行けるのは嬉しいけど、そんな簡単に決めていいのかよ」
「大学は別にどこでも良かったし、どうせなら千景いた方がやる気出るからさ♡」
「琴葉がいいならいいけど、でもそれならもう少し頑張った方がいいんじゃないか?せめて30位とかには入らないと厳しいと思うぞ」
「そうね~、ちょっと頑張ってみるよ♪」
何だろう?
あっさりと進路を決めていつもの感じで笑ってるけど、俺と同じ大学を目指すってふざけて言ってるのかな?
琴葉が俺に冗談を言うとは思えないけど、本当に中間辺りの順位にいるのならもう少し成績を上げなきゃ厳しいと思うんだ。
まぁ、将来に関わる事だから琴葉には無理せず自分に合った学校を選んで欲しいな。
たとえ進路が分かれても俺は琴葉とはずっといられればそれで良かったから。
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