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1章 異色のメンバー
こうなったら全部ストライク取りに行くわ!
しおりを挟む自販機でジュースを買ってると、空が機嫌良さそうに話し出した。
「さっきの惜しかったな~。二人がいなかったらしちゃってたよな♡」
「黙れチャラ男……俺は何もしようとしてねぇ」
「えー、認めなって。俺とチューしようとしてたじゃん♡」
「してねぇ!それ以上言ったらもう遊ばねぇぞ!!」
俺が脅しても機嫌の良いまま。
くそー。別にしてもいいんだけど、伊織とは中途半端なままだからあんまそういうのはしたくねぇ。
だから誘惑に負けそうになった自分に腹が立った。
やっぱ空と会うのはまずかったか……
「なぁ、お前帰るか?」
「酷!!俺来たばっか!!まだ投げてもねぇし!!」
「だってよー、お前といると調子狂うんだって~」
「いいじゃん狂っても♡貴哉は今フリーなんだし♡」
「ダメだダメ!お前これ以上俺を誘惑したら帰すからな!」
「えー、じゃあ控えるよ。フリーになったのに、その指輪はしたままなのか?」
空はやっと分かったのか、少し残念そうに言った後に、俺の左手を指差して聞いて来た。
伊織に買って貰ったペアリングだ。
正直外すか迷った。だけど俺は外さずにそのままいつも通り過ごしていた。
「ん、これにも慣れたし今更外しても周りにうるさく言われそうだから付けたままだよ」
「……俺と付き合ったら外してよな」
多分空は良く思ってねぇな。
俺に帰れって言われたくないから渋々我慢してる感じだった。
茜と七海の分も飲み物を買って戻ると二人共ぐったりしてベンチに座ってた。
スコアを見るとガーターのマークが見えて大体予想できた。
「二之宮ってマジ頑固……俺は違うって言ってるのに……」
「うるせぇ……秋山がやってた通りにやっただけだ……お前の教え方が悪いんだ……」
「二人共お疲れ様♪まぁまぁジュースでも飲んで休んでろって♪次は一年チームのチャラ男が行くからよ」
「出来るかな~?まぁクソ真面目さんよりはマシだと思うよ~」
空は自信なさ気だったけど、フォームはちゃんとしていた。そして投げ方も普通。球はストレートに転がってったけど、あれなら何ピンか倒れるだろ。
空が倒したのは真ん中の五本。
もう少しスピードがあれば良いとこ行ってたんじゃね?
「両端に残っちゃった!アレどーやって倒すんだぁ?」
「とりあえずどっちか狙って少しでも倒しゃいいよ。お前真っ直ぐ投げられるから立ち位置変えてみ~」
「よし!やってみる!」
俺の指示通り空は右端に寄った。
そしてさっき投げたように球を放つ。よし、そのまま行けば右に寄った三本は倒せるな……ん?何か微妙にカーブしてね?おいおい、それじゃガラ空きの真ん中に……
「お前っ!何で今回カーブさせんだよっ!!」
「やってないよ!普通に投げただけだよ!!」
球は見事にさっき倒した所に行って、結局二投目はガーターだった。
無意識でカーブさせるとか逆に凄くね!?
「あ、チャラ男くんも得意じゃないんだぁ?」
「あまりボーリングとかやらないんですよ。次チワワさんですよ~」
「よし!張り切っちゃうもんね~♪」
七海の意気込みはバッチリ。
んでもたかが知れてる。やっぱりこの中でダントツ上手いのは俺だ。もう両サイドのベンチに両腕乗せて足組んで余裕で見ていた。
ヒラヒラミニスカート姿の七海はふんすと球を持ち上げて歩いて行く。
両手投げとかしちゃうんじゃね?きゃーとか言って転んだりして?
そんな俺の期待を裏切るかのように女子の格好をした七海は、堂々と斜めから助走を付けて独特なフォームで球を放った。
え?投げ方とか球の軌道とかめっちゃ綺麗じゃね?たまにいる一人で投げてる上手いおっさんみてぇだ!
七海の投げた球は綺麗にカーブして、真ん中のやや右へ進み、カコーン!っと良い音を鳴らして見事ストライク。
これに俺は驚いて空いた口が塞がらなかった。
「小平凄いな!なんかプロっぽかったぞ!」
「こんなの普通でしょ!見てて!俺が華麗なターキー見せてあげるから!」
「なっ!?聞いてねぇぞお前がそんなに上手いなんて!」
「言ってないもーん♪さぁ次は遅刻魔さんだよ~」
これはヤバいぞ!
本当に七海がターキーを出せば一気に追い付かれて余裕が無くなる!
焼肉を食うなら奢りの焼肉がいい!
くそー、次もストライク取らなきゃじゃねぇか。
「うし!こうなったら全部ストライク取りに行くわ!」
「おおー!貴哉すげぇ」
「出来るもんならやってみなよ♪ちなみに俺も全部狙ってるから♪」
「二人共かっこいいな。俺もあんな風に投げてみたいな」
余裕が無くなったって事で俺は集中していた。
球を持ったまま構えて、少し時間をかけてから助走を始める。
いつも通りにやればいい。
それでも俺は今まで二回連続はあったけど、三回連続のターキーは成し遂げた事がなかった。
出来たら母ちゃんにも自慢出来るんだけど、とにかく今は奢りの焼肉を食う事を目標に頑張るのみ!
俺は全神経を右腕、右手に集中させて完璧に球を放つ……
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