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3章 年下の友達
※ 類に頼まれたからやってただけだ
しおりを挟む※双葉side
朝、学校の自分の机で、昨日塾でやった所を復習していると、後ろの席の類がいつものように声を掛けて来た。
「双葉おっはよーって、朝から何やってんの!?お前熱でもあるのか!?」
「勉強だよ。成績落ちてるから親に怒られたんだ」
これは嘘。成績が落ちた事を心配はされたけど、怒られはしてない。
こう言えば自然に流せると思ったからだ。
類も来たし、俺は勉強道具をしまって真っ直ぐに類を見る。
すると、「ん?」と言った顔をしてニコッと笑った。
俺は類にハッキリ言おうと思ったんだ。
今回の遊びは辞めようって。
貴哉が嫌がる事はしたくないから。類を止めるのは俺しかいないと思ったんだ。
「どうしたんだよ?双葉~」
「類、話がある」
類は自分の机に鞄を置きながらそのまま机の上に座って話していた。俺も後ろを向いて類に向き直る。
こうしていると類は良い奴だ。
いつも笑顔だし、明るくて楽しくさせてくれる。
ただ趣味が変わってるだけ。
そこさえなければ俺もこんな気持ちにはならなかったのに。
「話って何ー?」
「赤い髪の男だけど、今回は辞めないか?」
「は?いきなり何でだよ?」
俺が話を切り出すと、類はいつもの感じで笑いながら聞いて来た。
「少し前から思ってたんだ。他人を不幸にするのはやっぱり気が引けるなって。俺達ももう中学生じゃなくなるんだし、そろそろちゃんとしないと……」
「今更何言ってんだよ~?双葉だってノリノリだったじゃん。いろんな奴と付き合えたし、良い思いもしたんだろ?」
「類に頼まれたからやってただけだ」
「何それ?俺が命令したみてぇな言い方だな」
「そうは言ってない。類も城山受けるなら生活態度も見直した方がいいって言ってんの」
「何言ってんの?俺って良い子じゃん♪先生達にも城山行くって言ったら、お前なら大丈夫だって太鼓判押されたし♪まぁさすがにこの髪色は戻すけどさ~。てかヤバいのは双葉、お前だろ?逆恨みされたからって学校で喧嘩するわ、別れたくないって言われてんのに冷たく突き放して自殺未遂させるわ、問題起こしまくりじゃん」
「…………」
「もっと俺みたいに上手くやらないと~」
類の言う事は嘘じゃない。
俺が類の遊びに付き合って、不幸にさせて来た人達との出来事の一部だ。
そう。類の遊びでは悪役はいつも俺だった。幸せそうなカップルの間に入って別れさせて、その気にさせて、振られた方は傷付いてる時に類が優しく声を掛けて手を差し伸べる。
類が次のターゲットを見つけたらその人達を切るんだけど、円満に別れられる訳ねぇだろ。だって本気で好きじゃねぇんだから。
俺は今までの事とか類に言われた事で頭に血が上るのが分かった。
俺が悪かったんだ。
類といるのが楽しくて、もっと類に笑って欲しくてやって来た結果がこれだ。
たった一つの俺の居場所だった類の為に、何でも言う事を聞いてしまった己の過ち。
自業自得だった。
それでも俺は類以外の居場所を見つけてしまった。
今度はその居場所を守る為に俺は生きる。
「そうだな。類みたいに上手くやれたら良かったな」
「そう思うだろ~?双葉も分かったなら良かった……」
「そんなに自分に自信があるなら一人でやってみろよ。誰の手も借りずに、手に入れてみろよ」
「は?」
俺の作り笑いに類の笑顔が凍った。
ずっと言いなりだった俺にいきなり挑発するように言われたからか、ポカンと口を開けていた。
「とにかく俺はもう手を引く。今までありがとう類」
「何その最後みたいなの」
「…………」
俺はその後前を向いて勉強を再開した。
類もそれ以上は何も言って来なかった。
ずっと仲良く二人で過ごして来たのに、俺と類に亀裂が入った瞬間だった。
その日から俺と類は顔を合わせても挨拶すら交わさなくなった。
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