【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ 5thのその後

pino

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4章 空のバースデーパーティー

紘夢、頼むからそれ以上聞かないでくれ

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 程なくして、桃山が帰った後、ドッヂボール大会は再開された。
 俺は、この試合は紫チームの空と、黒チームの伊織と双葉が出るから観戦しようと思い、ベンチは全て埋まっていたからそのまま地べたに胡座をかいて座っていた。

 にしても茜と桃山に何があったんだ?
 あの後茜に聞こうと思ってもどこに行ったのかいなくなってっし。もしかして茜も帰ったのか?
 んー、分かんねぇなぁ。
 どうして桃山が知ってたのか……


「貴ちゃん」

「お?」


 腕を組みながら俺の真ん前に仁王立ちする紘夢。
 表情を見る限りご機嫌斜めって感じだな。


「お前実況はいいのかよ?」

「この後は的羽に任せた。それよりもさっきのどう言う事だ?危うく空くんのバースデーパーティーが台無しになるところだったんだけど」


 怒ってるなー。っても俺に言われても、むしろ俺はフォローして何とかまとめたんだからお礼言われてぇんだけど?


「んー、そもそも何で桃山がキレたんだよ。さっきまで普通だったじゃん」

「試合中に渡辺さんが桃を油断させようとして、犬飼が茜ちゃんを襲ってるって嘘ついたんだよ」

「渡辺が原因かぁ!!」


 あのメガネ!!んな事してやがったのか!!
 

「まぁそれは勝負に勝つ為の戦略の内だからいいとして。貴ちゃん、桃に嘘ついたよね?」

「へ?な、何の事でしょうか?」


 ジーッと俺の目を見て来る紘夢さん。
 こいつはほんっとうに人の心読んで来るよな~!
 でもこればっかりは茜との約束もあるし誤魔化すしかねぇだろ。


「いーくんも一緒になって。犬飼の反応見れば嘘だってバレバレじゃん」

「紘夢、頼むからそれ以上聞かないでくれ。これは茜の為なんだ」


 茜の為でもあるけど、紘夢に嘘つくのもしたくねぇんだ。だからさっきのは忘れて欲しいぐらいなんだ。


「茜ちゃんなら青ざめた顔して体調が悪いからって帰ったよ。桃とは別でね」

「え……そうだったのか」


 やっぱり何かあったんだな。
 そうか、すぐにでも茜の所へ行ってやりてぇけど、今日は空のバースデーパーティーだし、双葉もいる。すぐに抜けるのは出来ねぇな。

 俺は少し困って溜息をつくと、紘夢に手をギュッと握られた。


「えっ何?」

「貴ちゃん、俺はね、茜ちゃんの事も桃の事も大好きなんだ。二人が仲良くしてるのを見るのがとても好きなの。だから二人に何かあったら協力したいとも思ってる」

「紘夢……」


 そうだよな。紘夢にとっても二人は大切な友達だもんな。事情を知らないから何も出来ないから知りたがってんだろうな。
 でも、話したら茜を裏切る事になるしな……

 紘夢は握った俺の手を自分の頬にピトッて付けて愛おしそうに上目遣いで見て来た。


「でもね、俺にとってあの二人よりも大事なのは貴ちゃんなんだ。貴ちゃんの事は何よりも大好きで愛してるの。吉乃よりもね」

「なっお前何言ってんだっ」

「さっきの話を聞く限り貴ちゃんも無関係じゃないんだろ?だとしたら貴ちゃんに火の粉が掛かる事もある。そうなった時に俺が守ってあげたいんだ。だから貴ちゃんの全てを教えて?お願い」

「っ……悪いけど出来ねぇ」


 紘夢の誘惑に負けそうになったけど、俺は何とか断る事ができた。でも紘夢は引かずに、今度はぐいっと顔を近付けて必死になって訴え掛けてきた。


「俺、貴ちゃんのお願いたくさん聞いてるよね!?断った事あった!?たまには貴ちゃんも俺のお願い聞いてくれてもいいだろ!?」

「お前~、それ言われたら俺何も言えねぇよぉ」


 まさか、んな事言われるとは思わなかったよ。実際双葉の事も頼むつもりだしな。
 んー、仕方ねぇか。紘夢なら口堅そうだし、大丈夫かな?


「はぁ、負けたよ!今から本当の事話すけど、絶対に誰にも言うんじゃねぇぞ!?茜にもだ!聞かなかった振りするんだぞ!?約束だ!約束破ったらお前とは二度と口聞かないからな!」

「誰にも言わないよ♪貴ちゃんと俺だけの秘密~♡えへへ」


 俺が負けを認めると、紘夢は嬉しそうに笑って手を離してくれた。
 俺は試合を見ながら紘夢にあの日の出来事を全て話す事にした。


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