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5章 兄妹に出来た溝
※ もう逃げないんだ
しおりを挟む※紘夢side
俺の妹である芽依は幼い頃から兄である俺の事をずっと尊敬し、慕ってくれていたのは分かっていた。それは父さんに対しても同じで、本当に良い妹だと思っていた。
だけど、俺は幼い頃から父さんに復讐する為に計画を立てていた。勿論それには芽依が犠牲になる事も分かっていた。それでも実行したのには芽依に嫉妬していたからだ。
天才だからと言って周りから過大評価され続けて来た俺は、一切の失敗は許されなかった。幸い要領良く振る舞えていたから大事になった事はないけど、もしも父さんの思い通りにいかないような事があれば酷く叱られただろう。
でも、妹の芽依は第二子で女の子ってのもあって甘やかされていた。その結果我儘が目立つ子になってしまったが、その事で叱られる事は無かった。
俺はそんな芽依が羨ましかった。
両親からの愛情も受けて、好きな事もやらせてもらって、それでも懐いてくれる芽依は妹として可愛いかったから、俺は普通にしていた。
心のどこかでは同じ親から生まれた兄妹なのに何で芽依はって思っていたんだ。
だから芽依が犠牲になっても良いと思って父さんへの復讐を実行して巻き込んだんだ。
「芽依には本当に悪い事をしたと思っている。ごめんなさい」
「あら」
深々と頭を下げて謝る俺に、少し驚いたような声を出す芽依。
「謝って済む話じゃないのは分かっている。もし芽依が望むのなら俺に出来る事はやるよ」
「お兄様、頭を上げて?」
「…………」
俺が気まずそうに顔を上げると、芽依は笑顔のままそこにいた。
ふんわりと優しい女性の笑顔だった。
「そんな風に謝られるとは思っていなかったから驚いたけれど、お兄様からの謝罪受け入れるわ」
「芽依」
「そうね、私が望む事。お父様とちゃんとお話ししてもらおうかしら♪」
「……ああ、するよ。近々俺から連絡して会いに行く。でも少し時間をくれないか?いろいろ整理したいから」
「ええ。約束してくれれば結構よ」
芽依は嬉しそうに両手を合わせてニッコリ笑った。
そして俺に近寄り、少し顔を俯かせて言った。
「お兄様、私もごめんなさい」
「何で芽依が謝るんだよ?」
「今までのお兄様の立場になって分かったわ。一番大切にされる喜びがある反面、プレッシャーも凄いのね。お兄様が家を出たくなった気持ち、今なら分かるわ」
「っ……」
「でも私は逃げたりしないわ!そんな状況も利用してやるんだから。それじゃあお話しは済んだから行くわね。またねお兄様……それと、やっぱりお兄様は黒髪が似合っているわ♪」
最後は「あはは」とお嬢様らしくない無邪気な女の子の笑い方だった。
芽依があんな風に笑うのなんて初めて見たな。
芽依が部屋から出て行った後、俺は気が抜けたように地面に膝を付いた。
久しぶりに話した妹は変わってないようで変わっていた。それも大きく良い方へ。
兄としては喜ぶべき事だけど、また嫉妬してしまいそうになって焦った。
芽依は強いな。
俺なんかより全然強い心を持ってるよ。
はは、俺もこうしちゃいられないな。
腹を括ってしっかり向き合わなくちゃいけない。
もう逃げないんだ。
父さん、待ってて下さい。
俺はまだ一条紘夢です。
あの時伝える事が出来なかった俺の気持ち、今度はちゃんと伝えるので聞いて下さいね。
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