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1章 二学期中間テスト
神社
しおりを挟む俺が楓に本当の事を打ち明けると、「あはは」と笑っていた。はぁ、マジで楓がいてくれて助かったぜ。楓は頭良くて気が利くから咄嗟でもすぐに助けてくれるから本当に頼りになるんだ。
「なるほどな~。それであんな急いだようなメッセージだったのか。貴哉らしいな。桐原さんもしっかり俺の事確認してたし。でも早川が絡んでるとは思わなかったな。桐原さんに俺との事を疑われてたのかなって思ってた」
「多分初めは疑ってたと思う。楓の彼氏もだけど、伊織もかなりやきもち焼くんだぜ~。だから空と話すのにも一苦労よ」
楓には今回の話の他に、空と別れて伊織と正式に付き合う事になったとも話した。終始落ち着いて聞いてくれたから良かった。
「お互い苦労するな。んで、早川とは何でお忍びで話してぇの?完全に別れたんだろ?」
「別れたよ。空も俺とはもう関わりたくねぇって言ってるし。でも心配なんだよ。最近のあいつ何か変だし。だから少しだけでも直接話したくてよ」
「それなら早く行かないとな。貴哉は貴哉のしたいようにすればいい。スッキリするまで話してこいよ。俺の出来る事なら何でも協力するし、いつでも言ってくれよ」
「楓マジ最高!この礼は必ずするからな!」
「はは、礼がかなりたまってるけど、返し切るのかぁ?早川はどこで待ってるんだ?桐原さんの事もあるから途中まで送るよ」
「場所は決めてねぇんだ。近場で待ってろって言ってあるだけ。あいつの返事も聞かねぇで来ちまったから待ってるかも分からねぇんだ」
「なら連絡してみろって。ずっと待ってたら悪いだろ」
楓に言われて俺はスマホを取り出す。
学校を出てから二時間も経っていた。
こりゃまずいな。空には一切連絡してねぇし、こりゃ帰ったかもな。
慌てて電話を掛けてみる。
しばらく鳴ってから空が出た。
『はい』
「空!待たせて悪かった!今どこだ?」
『……もう家だよ』
「はぁ!?お前帰ったのか!?」
『嘘。でも帰ろうと思ってたとこ』
「まじ?なぁ、どこにいるんだ?今から行くから教えてくれ」
『神社』
「神社?ああ、あそこか!」
一瞬どこだそれと思ったけど、一度だけ空と行った事があるのを思い出した。その時は芽依のストーカー撃退作戦の前で、空と二人で行った小さな神社だ。
あん時の空も様子が変だったなー。忙しかった俺と過ごせなくて寂しかったらしいけど、だからただでさえ遅刻していた俺は待ち合わせをしていた戸塚に怒られるのを覚悟でそこで空と過ごしたんだ。
懐かしいなぁ。
「分かった!すぐ行く!」
電話を切って俺は楓に向き直る。
「場所分かった!楓行くぞ!」
「おう♪」
楓と一緒に店を出て空が待つ神社まで急ぐ。
ここからはそこまで遠くは無い。楓と少し話してたらすぐに到着して、神社の前で楓とは別れた。
神社の中に入るとそれまでの空気とは変わったような気がした。街の中にある神社なのに、ここだけ静かに感じるのは気のせいか。
あの時のような大きく伸びた木の枝や葉っぱが風に揺れて擦れ合う音だけが聞こえていた。
神社の中を歩いて行くと、チャラ男号を見つけた。そしてその少し先のベンチに空が一人座っていた。あの日、二人で座ったベンチだ。
「空!」
「…………」
俺が声を掛けると、俯いていた空が顔を上げて俺を見ていた。その顔は無表情で、ただ俺をじっと見ていた。少し怖くも感じた。
「遅くなって悪かった」
「ほんと、どんなけ待たせんだよって感じ」
空はその場に立ち上がって俺の方を向いた。クリーム色のカーディガンを羽織ってる空は両手をポケットに入れたまま、ダランと立っていた。
怒ってるのか……そりゃそうだよな。もう関わりたくない奴に二時間も待たされたんだもんな。
「ごめん。本当にごめん」
俺は謝るしか出来なかった。
ここに来るまでは楓といたから強気にちゃんと話をして危ない事をしていたら止めてやろうと思っていたけど、今は上手く言葉が出て来なかった。
今度は俺が下を向いてどうしようと思っていたら、空が歩いて近付いて来るのが分かって、顔を上げるとすぐ目の前にまで来ていた。
そして空はニコッと笑った。
あ、俺の知ってる空だ……
「ごめんなんて、貴哉らしくねぇじゃん?」
「空ぁっ」
「言うほど怒ってねぇよ。帰ってもやる事ねぇし。ただ少し寂しいなぁって思ってただけ」
「もう寂しくねぇよな!?俺がいるもんな!」
「そうだな。貴哉が来てくれたから寂しくねぇよ」
空が笑ってくれた事が本当に嬉しくて俺はまた前みたいに話せるんじゃないかと期待しちまった。
これならちゃんと話せそうだ。
「良かった。あのさ、空最近何かあった?俺がこんな事聞くのもあれだけどよ」
「ココから聞いたんだろ?俺がハッテン場にいたって」
「それ!なぁ、もしかしてまた危ない事してんじゃないよな?」
「もし俺がしてたとしても貴哉には関係ないよな?」
「そんな事ねぇだろっ!心配してんだぞ!」
「心配なんかしなくていい。貴哉は桐原さんの事だけ考えてろよ。じゃないと怒られるぞ」
「そんな事出来ねぇよっ!俺は空がっ……」
「貴哉さ、それありがた迷惑ってやつだよ。ハッキリ言うけど、俺はもう貴哉とは友達にも戻るつもりもない。二年になってクラスも変われば顔も合わせなくなるだろ。それまではクラスメイトとしては接するけど、仲良くするつもりはない」
「何で……空……」
期待したばかりだと言うのにあっさり否定された。まさか空にそんな風に言われるなんて……
俺は何て言ったらいい?
俺はどんな顔したらいい?
怒る?
泣く?
笑う?
どれが正解なのか分からねぇよ。
「何でって、理由知りてぇの?ほんと、お前はどこまでも勝手だな。俺は貴哉の事がまだ好きだ。けど、もう諦めようとしている。俺にも俺の生活があるからな。だから好きにやってるだけだ。自分で他の男の所に行った癖に俺を振り回すのはやめろよ」
「…………」
「今日は待ってたけど、もうこういうのもやめろ。次は帰るからな」
「……やろう」
「あ?聞こえねぇよ」
「クソ野郎!!」
「はぁ?何だよそれ!」
「分かったよ馬鹿野郎!!もうお前とは話もしねぇよ!お望み通り他人になってやる!もうお前がやる事にも口出ししねぇよ!これで満足か!?」
「ふんっ偉そうに言ってんじゃねぇよ!散々人の事振り回しておいてよ!大体お前はいつも偉そうなんだよ!馬鹿はお前だ!調子乗んな!」
「んだとコラぁ!?テメェなんか秒で泣かす事出来んだぞああ!?」
神社内に二人の男の怒鳴り声が響いていた。
俺は反抗して来た空についカッとなり、遂には空の胸ぐらを掴んでいた。空は相変わらず見下したような目で俺を見てた。
そして、その目から一粒の涙が溢れて、空の頬を伝って落ちた。
「だろうなっ!貴哉には何度も泣かされたよっ!辛くて泣く事のが多かったけどっ……こうして嬉しくて泣く事もあったよっ」
「なっ!これが嬉しいだぁ?」
「嬉しいよっ貴哉とこうして話せる事が!また言い合えて、俺を見てもらえてっ……だって、今だけでも貴哉は俺の事考えてくれてんだろ?桐原さんじゃなくてっ俺の事をっ」
今度は空の両目から涙が溢れ出た。
俺は空の本音を聞いて居た堪れずに抱き締めていた。すると、空は泣きながら抱き返して来て、深く強く引き寄せ合った。
「空のバカ!泣くんじゃねぇよ!泣き虫が!」
「泣かせたのは貴哉だろ!いじめっ子が!」
「はは、でも良かったー!俺、空に嫌われたと思ってたか……」
言い終わらない内に空にキスをされた。
俺はビックリしたけど、そのまま受け入れていた。抵抗もせずに、目を閉じて、一度離れて行く空を俺から追うようにまたキスをした。
まるで付き合っていた頃のように、二人で何度も何度も……
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