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4章 文化祭
※ 本当にありがとう
しおりを挟む※茜side
今日は文化祭の日だった。
そして今は演劇部とボランティア部合同で打ち上げをやっている。
俺は朝から所属する演劇部の準備や打ち合わせなどで忙しく動いてて、気が付けばステージに立ち、無事にマジョリーナをやり遂げた。
やった……ちゃんと最後までやり遂げられた……
そう、俺は今日で演劇部を辞めるんだ。
俺が辞める事は顧問、薗田さん、部長の卯月、そして各チームのリーダーには伝えてある。
チームリーダーに選ばれた時、周りと上手くやれずにすぐに外されてからずっと悩んでいたけど、とうとう決意して俺は演劇部を辞める。
最後まで手を抜かずにやって来た事に満足していた。
正直、前の部長の薗田さんから副部長を任された時に葛藤があった。その時点で部活を辞める選択肢は無かったけど、チームリーダーも出来ない俺に副部長が務まるのか?
また自分勝手な事をみんなに押し付けて部をめちゃくちゃにしてしまうんじゃないのか?
でもすぐに引き受けた。
その理由は憧れであった薗田さんから指名されたからだ。
俺にも理想のリーダー像がある。
薗田さんや桐原のように華やかでありつついつでも寛大な心を持ち、周りに平等に接する姿は正に憧れだ。どんな苦難にも立ち向かい周りからの評価を得つつこなしてしまう所は今でも凄いと思う。
でも俺には華やかさもなければ寛大な心も持っていない。地味で頑固で、自分の考えと違うと思えばすぐに怒る我儘な男。
誰がこんな男に付いて行くだろう?
自分でも何度上手くやれずに挫けそうになったか……
でも、秋山と出会い気持ちが軽くなった。
初めてのちゃんとした後輩が出来て、文句を言いながらも慕い付いて来てくれる存在は俺にとってとてもかけがえのないものになった。
理想は理想なんだなと今ではスーパースター達に憧れていた自分が懐かしくて愛おしく感じるな。
秋山の影響じゃないけど、俺は俺だ。二之宮茜だ。
この前までは自分の名前が嫌いだったが、今では「茜ちゃん」と呼ばれても気にならなくなった。
それは、からかわれているんじゃなくて、本当に俺を呼んでくれているからと分かるから。
それを秋山が教えてくれた。
俺にはみんながついて来てくれなくてもいいんだ。
秋山、お前一人でも俺と友達でいてくれればいいんだ。
だから、俺はこれからは秋山と過ごしたくて演劇部を辞める事を決意した。
「茜ちゃーん!また外にいるのかー?」
「もう始まってるんだから中に来いって~!」
スマホ片手にお好み焼き屋のすぐ外で立っていると、中から犬飼と小平が出て来て俺に言う。
俺は遅れて来ると言う秋山を待っていた。
桐原と一緒らしいが、ここでも遅刻して来るなんてな。
秋山らしいと思うけど、俺は何故かこうしてちょくちょく外に出て待ってしまっていた。
「二人は中でやっててくれ」
「やっててくれって茜ちゃんいないとつまんねぇじゃん」
「そうそう!二之宮も大活躍したんだから!今日はいーくんと二之宮が主役なんだぞ!」
こうして俺を気に掛けてくれる人も増えたのも秋山のおかげだと思っている。
元々二人からは嫌われていたのは知っている。
だけど、今では俺とこうして普通に話して、俺の事を好きだと言ってくれるんだ。
ずっと言われたかった言葉だった。それがとても嬉しくて俺は自然と笑顔になれた。
「はは、分かったよ。今行くよ」
「茜ちゃーん♡可愛いー♡」
「二之宮ぁ!そんな風に笑ったらダメー!今日はいつもみたいに鬼の顔してろー!」
「どうしてだ?もう文化祭も終わったし、打ち上げじゃないか。笑った方がいいと思うけど」
「茜ちゃんの笑顔は殺傷能力高いからだよ♡俺は笑顔のが好きー♡」
犬飼は好きって言ってくれるけど、殺傷能力って……良くないんじゃないか?
自分の顔を触って改めて笑顔を意識してみるけど、やっぱり難しいな。
「あ、百面相してる。七海ちゃんが変な事言うから茜ちゃんが気にしちゃったじゃん」
「俺は二之宮にこれ以上余計な虫が寄って来たら嫌だから言っただけだっ!」
「あのさ、二人共……」
良い機会だ。二人にもお礼を言おう。
初めの頃こそ俺達は最悪な関係だったけど、演者チームのエース小平はいつも笑顔で明るく振る舞いみんなからも好かれている人気者。俺の後に副部長をやってくれる頼れる男だ。
裏方リーダーの犬飼は頭も良くて統率力がずば抜けている縁の下の力持ち。おまけに裏方でいるには勿体無いような綺麗な容姿をしている羨ましい男だ。
後半俺がここまでやって来れたのには二人の協力もあったからだ。
「俺は今日で辞めるけど、ここまで来れたのは二人のおかげだ。本当にありがとう。感謝してる。それと、部活での関わりは無くなってしまうが、これからも友達として仲良くしてくれたら……その、嬉しいんだ……」
最後の方は恥ずかしさと、断られたらという不安で小さな声になってしまった。
俺の言葉に二人は黙って聞いてくれていた。
そして犬飼は優しく笑って、小平は驚いたような顔をしていた。
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