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ファイナル

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そして、とうとう迎えたポスティング最終日。


残200枚。最後は3人で決める!


誰も異論はなかった。私の仕事終わりの17時半から開始。


「いくぞ!」


最早、プロといっても過言なきくらい個々がテキパキとした動き。自分がやるべき役割を淡々とこなす。


思えば、慣れない当初。


チラシとマグネットタイプの小さなチラシを持ち配っていた時。


「あっ!」


私が欲張り過ぎてチラシを大量に持っていた時。不揃いな大きさのせいで、手を滑らせ50枚くらい落っことした。少し風が吹いていた事もあり、チラシがセグウェイのように移動する。


それを小走りで追う私。


そんな私を見て息子が笑いながら一言。


「みじめさがハンパねー!」


「アホ!お前も手伝えや!(笑)」


あくまでも悲壮感はゼ~ロ~!(笑)


そんな事も今は良き思い出。











「じゃあママ、その筋行って!」


「分かった!」














でもね。














皆、分かってるんだ。














「パパはその筋!」


「分かった!」













彼女が幼い頃、やっかいな病になった事。














その病を抑える為に服用していた薬の副作用でね。















お医者さんから知能に影響が出るかも知れないと言われた事。
















「あ!そこ行ってるわ!隣の筋!」


「分かった!」
















何かの成分を血中濃度ギリギリまで高めないと抑えられない発作。















その副作用は知的障害と認定される一歩手前になる可能性もあると言われた事。














でも皆、彼女にそれは絶対言わないって決めたから。
















「後何枚?」


「後100!」
















でもね。

















パパもママも知ってるよ。

















彼女は口が悪く、それが原因で君とケンカばかりする。
















でもね。



















お兄ちゃん。



















どんなにケンカしても妹の事、絶対“ちゃん”付けで呼んでいること。


















知ってるからね。




















君は妹思いの優しい男だって事。




















「めっちゃ犬に吠えられたんやけど!」


「パパが怪しい動きするからや!(笑)」

















受験に向けて待ったなしなのに、彼女は依存症?ってくらいスマホ触りたくて仕方ない事。
















でも、いいんだよ。

















「後何枚?」


「後50!」


















私立行こうが県立行こうが。



















私立行くとお金がたくさんいる?


















でも、彼女なりに一生懸命頑張って生きているんだ。















お金なんて生きてさえいれば何とかなる!
















生きてさえいれば・・・


















命さえあれば・・・



















無責任な言い方かもしんないけど、なんとかなっちゃうんだよ。



















私の人生、綱渡りだったかもしんないけど、そうやって今まで生きてこれた。


















だから君が元気で笑ってさえいれば、ただそれだけでいい・・・


















「よっしゃ!ラス1っ!」


















症状が酷かった時は、生きた心地がしなかったって妻は言った。


















確か、あの時も私が会社の社長と揉めて、突然、クビになった。

















“まあ見とけって!”


















“私、ず~っとアンタの事見てんやけど!”

















君のあの言葉は効いたな~・・・・















そして、KグループのK社長の会社に20年振りに単身赴任という形でお世話になった。

















そして、私が単身赴任で不在の時。

















「アンタ!Yちゃんが意識なくなって倒れた!」
















妻からの突然の電話。



















“なんやねん!何で俺ばっかりこんな目にあわないかんねん!”



















そう言って天を睨みつけ神を呪ったっけ。


















小学5年生だった息子の君。


















不安でパニックになっているママに「大丈夫!大丈夫だから!」って、不在だった私の代わりに支えてくれた事。



















ありがとな、息子よ・・・・

















「終わったーー!」


やっと・・やっと戦いが終わった。何なんだろう、この達成感。


このポスティングの報酬は3000円弱。


しかし、その価値。






プライスレス!






銭金じゃない、それ以上の価値は絶対にあったといえる。家族の団結力が前より強まった気がする。


因みに、最後の地区に入れていたチラシ。何のチラシか配る前に見た。






“ポスティングスタッフ募集!”






誰が誰の為にポスティングしてんねん!(笑)


そして近くの吉野家で家族揃ってお疲れ会を兼ねての夕食。会計3000円オーバー!


なに小さなコップの中で経済回しとんねん!ってね。(笑)

















でもね。

















妻よ。

















ゴメンな、こんな浮き沈みの激しい人生に付き合わせてしまって・・・















「君は仕事なんかしなくていいから!」
















そう言って、水商売から君を上げたのに約束破るはめになってしまって・・・

















でも、これだけは絶対言える。

















あ~楽しかった!っていう人生にしてあげるから!



















最後に私が好きな曲。


関取花さんの『もしも僕に』の歌をエンドロールとさせていただきます。


人生なんてそうさネタ探し!












♪もしも僕に子供ができたら






どんなことを伝えるだろう






期待してるよ 頑張れよ






そんなこと まず言わないだろう






一日三食飯食って






よく笑いよく泣き遊べ






そして他人を褒められる人になれ







努力は大抵報われない






願いはそんなに叶わない






それでもどうか腐らずに






でかい夢見て歩いて行くんだよ






もしも僕に子供ができたら






どんな恋をするのだろう






父さんと母さんみたいになれよ






そんなこと言えたらいいな






一度や二度の過ちも






いつかはきっとするのだろう






立つ鳥跡を濁さずでうまくやれよ







初恋なんてまぼろしで






思いは大体届かない






それでもどうか忘れずに






胸の端っこで大事にするんだよ






うまくいかないことばかり






なぜいつもあいつばっかり






隣の芝はいつだって青いけれど






知りたくないこと知ったり






優しい嘘を覚えたり






いらない荷物は増えてしまうけれど






それもこれも 最後には






笑い話に変えられるように






人生なんてそうさネタ探し






楽しんだもん勝ち そういうものだよ





もしも僕に子供ができたら






そういうことを伝えたい






でもまだきっとずっと先の話






だからそれまで自分に言い聞かす






とりあえず自分に言い聞かす♪









でも人の歩幅にダメ出しって。(笑)

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