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第1章 同棲生活始まります!?
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俺は決して天才ではない。
勉強が好きなわけでもないし、そこまでできるわけでもない。
しかし、彼女は俺のことを頭がいいと言う。
「今日もなんか本読んでるの?」
電車内なので、小声で喋ろうとするところも、放課後だからと言って着崩さずに、恐ろしいほどの化粧もしないところも。
この子はいい子なんだろうなと思える。
「あー、今日の朝読み終わって図書館行けなかったから今日は何も持ってないんだよ。」
そう言うと彼女は、いつもよりご機嫌そうに笑った。
彼女は帰りしなに小説を読んでいても、ただ黙ってくれる。
なんだか申し訳なくて本を置いて何か話そうとすると、彼女はまるで俺の頭の中を覗いたみたいな顔をしてにっこりする。
そして、本を読んでる俺が一番好きだからと言ってそのまま読ませてくれる。
恋人にそう言われて嬉しくない男などいるだろうか。
二人で終電まで揺られている。
雨の日も、嵐の日も、嫌なことがあった日でも、どんな日でも、あの日隣同士で座って以来、二人はずっと同じこの席のままだ。
彼女は、小声で今日学校であったことを嬉しそうに話していた。
テストで良い点を取ったとか、友達と心理テストをして盛り上がったとか。
俺は半分上の空だった。
彼女の話は聞こうとしているが、触れそうな白い手や、黒い髪の先が当たる感触にドキドキしてしまって、話が入ってこないのだ。
「ふー、今日は人が少ないね。」
なにが一番やばいかと言うと、目が合った時にときどき香る甘い香りだ。
「そうだね。」
思わず目をそらして、すぐに後悔した。
傷つけただろうか。
いや、まさか。
「あ、中井くん見て。夕焼け綺麗。」
あたたかいオレンジの夕焼けが、夜の闇に溶けていく。
二人を運んでいく。
本を読みたくて読んでいるわけじゃないんだ。
たしかに読書は好きだけど、ほんとは秋ちゃんともっと話したい。
だけど、どうすれば良いのか分からなくて。
どんな顔で見れば良いのか。
下手に向き合えば、壊してしまうような気がして。
だから、本を読んでるフリをして、気づかないフリをして、近くで触れる指のあたたかさを計ってるんだ。
こんな本心言えるわけがない。
めちゃくちゃ奥手だってバレる…。
キモいと思われるかもしれない。
嫌だ…!
いつも考えることをぐるぐる考えている内に、終電についたらしい。
今日は本当に人が少ない。
もうすっかり夜の空になっていた。
俺の故郷の、どこにでもあるような田舎町。特別な遺産とかがあるわけじゃない。
だけど、帰ってくるといつもほっとする。
そして可愛い彼女と手を繋いで帰る道は、あっという間に終わる気がした。
秋ちゃんは最近ここら辺に引っ越してきたらしい。
「じゃあね、中井くん。また明日。」
俺は秋ちゃんを呼び止めた。
「明日も部活あるの?たしか手芸部だったよね?」
彼女の指には、絆創膏や傷がたくさんあ
る。
「あるよー!もうちょっとで展示祭だから忙しくて~。今お人形作ってるから、終わったら見せる!」
いつも言葉一つ一つがふわふわ浮いて、動作もゆっくりな彼女だが、手芸のことを話す時は少し体に力が入るのが分かる。
好きなことがあるのは良いことだ。
「じゃ、明日も一緒に帰れるね!
嬉しい。」
我ながら、なんて恥ずかしいことを言ってるんだろうか…。
秋ちゃんといるとどうも自分じゃないみたいな人間になってしまう。
しかし彼女は頬を染めて微笑んだ。
心臓が大きく高鳴った。
「あ、そうそう。秋でいいからね!」
「あ、じゃあ俺も優希でいいから。」
二人で照れ笑いをした後、簡単な挨拶をして別れた。
その直後、
「帰ったら明日のターゲットの下調べ」
と聞こえた気がしたが、振り返っても秋ちゃんはいなかった。
すぐ隣の民家からドラマの声でも聞こえてきたんだろう。
明日もまた、彼女に会える。
勉強が好きなわけでもないし、そこまでできるわけでもない。
しかし、彼女は俺のことを頭がいいと言う。
「今日もなんか本読んでるの?」
電車内なので、小声で喋ろうとするところも、放課後だからと言って着崩さずに、恐ろしいほどの化粧もしないところも。
この子はいい子なんだろうなと思える。
「あー、今日の朝読み終わって図書館行けなかったから今日は何も持ってないんだよ。」
そう言うと彼女は、いつもよりご機嫌そうに笑った。
彼女は帰りしなに小説を読んでいても、ただ黙ってくれる。
なんだか申し訳なくて本を置いて何か話そうとすると、彼女はまるで俺の頭の中を覗いたみたいな顔をしてにっこりする。
そして、本を読んでる俺が一番好きだからと言ってそのまま読ませてくれる。
恋人にそう言われて嬉しくない男などいるだろうか。
二人で終電まで揺られている。
雨の日も、嵐の日も、嫌なことがあった日でも、どんな日でも、あの日隣同士で座って以来、二人はずっと同じこの席のままだ。
彼女は、小声で今日学校であったことを嬉しそうに話していた。
テストで良い点を取ったとか、友達と心理テストをして盛り上がったとか。
俺は半分上の空だった。
彼女の話は聞こうとしているが、触れそうな白い手や、黒い髪の先が当たる感触にドキドキしてしまって、話が入ってこないのだ。
「ふー、今日は人が少ないね。」
なにが一番やばいかと言うと、目が合った時にときどき香る甘い香りだ。
「そうだね。」
思わず目をそらして、すぐに後悔した。
傷つけただろうか。
いや、まさか。
「あ、中井くん見て。夕焼け綺麗。」
あたたかいオレンジの夕焼けが、夜の闇に溶けていく。
二人を運んでいく。
本を読みたくて読んでいるわけじゃないんだ。
たしかに読書は好きだけど、ほんとは秋ちゃんともっと話したい。
だけど、どうすれば良いのか分からなくて。
どんな顔で見れば良いのか。
下手に向き合えば、壊してしまうような気がして。
だから、本を読んでるフリをして、気づかないフリをして、近くで触れる指のあたたかさを計ってるんだ。
こんな本心言えるわけがない。
めちゃくちゃ奥手だってバレる…。
キモいと思われるかもしれない。
嫌だ…!
いつも考えることをぐるぐる考えている内に、終電についたらしい。
今日は本当に人が少ない。
もうすっかり夜の空になっていた。
俺の故郷の、どこにでもあるような田舎町。特別な遺産とかがあるわけじゃない。
だけど、帰ってくるといつもほっとする。
そして可愛い彼女と手を繋いで帰る道は、あっという間に終わる気がした。
秋ちゃんは最近ここら辺に引っ越してきたらしい。
「じゃあね、中井くん。また明日。」
俺は秋ちゃんを呼び止めた。
「明日も部活あるの?たしか手芸部だったよね?」
彼女の指には、絆創膏や傷がたくさんあ
る。
「あるよー!もうちょっとで展示祭だから忙しくて~。今お人形作ってるから、終わったら見せる!」
いつも言葉一つ一つがふわふわ浮いて、動作もゆっくりな彼女だが、手芸のことを話す時は少し体に力が入るのが分かる。
好きなことがあるのは良いことだ。
「じゃ、明日も一緒に帰れるね!
嬉しい。」
我ながら、なんて恥ずかしいことを言ってるんだろうか…。
秋ちゃんといるとどうも自分じゃないみたいな人間になってしまう。
しかし彼女は頬を染めて微笑んだ。
心臓が大きく高鳴った。
「あ、そうそう。秋でいいからね!」
「あ、じゃあ俺も優希でいいから。」
二人で照れ笑いをした後、簡単な挨拶をして別れた。
その直後、
「帰ったら明日のターゲットの下調べ」
と聞こえた気がしたが、振り返っても秋ちゃんはいなかった。
すぐ隣の民家からドラマの声でも聞こえてきたんだろう。
明日もまた、彼女に会える。
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