僕と先生は、終わった。

Mind

文字の大きさ
11 / 15
第1章 同棲生活始まります!?

another 2

しおりを挟む
俺は決して天才ではない。
勉強が好きなわけでもないし、そこまでできるわけでもない。
しかし、彼女は俺のことを頭がいいと言う。
「今日もなんか本読んでるの?」
電車内なので、小声で喋ろうとするところも、放課後だからと言って着崩さずに、恐ろしいほどの化粧もしないところも。
この子はいい子なんだろうなと思える。
「あー、今日の朝読み終わって図書館行けなかったから今日は何も持ってないんだよ。」
そう言うと彼女は、いつもよりご機嫌そうに笑った。
彼女は帰りしなに小説を読んでいても、ただ黙ってくれる。
なんだか申し訳なくて本を置いて何か話そうとすると、彼女はまるで俺の頭の中を覗いたみたいな顔をしてにっこりする。
そして、本を読んでる俺が一番好きだからと言ってそのまま読ませてくれる。

恋人にそう言われて嬉しくない男などいるだろうか。

二人で終電まで揺られている。
雨の日も、嵐の日も、嫌なことがあった日でも、どんな日でも、あの日隣同士で座って以来、二人はずっと同じこの席のままだ。
彼女は、小声で今日学校であったことを嬉しそうに話していた。
テストで良い点を取ったとか、友達と心理テストをして盛り上がったとか。
俺は半分上の空だった。
彼女の話は聞こうとしているが、触れそうな白い手や、黒い髪の先が当たる感触にドキドキしてしまって、話が入ってこないのだ。
「ふー、今日は人が少ないね。」
なにが一番やばいかと言うと、目が合った時にときどき香る甘い香りだ。
「そうだね。」
思わず目をそらして、すぐに後悔した。
傷つけただろうか。
いや、まさか。
「あ、中井くん見て。夕焼け綺麗。」
あたたかいオレンジの夕焼けが、夜の闇に溶けていく。
二人を運んでいく。


本を読みたくて読んでいるわけじゃないんだ。
たしかに読書は好きだけど、ほんとは秋ちゃんともっと話したい。
だけど、どうすれば良いのか分からなくて。
どんな顔で見れば良いのか。
下手に向き合えば、壊してしまうような気がして。
だから、本を読んでるフリをして、気づかないフリをして、近くで触れる指のあたたかさを計ってるんだ。


こんな本心言えるわけがない。
めちゃくちゃ奥手だってバレる…。
キモいと思われるかもしれない。
嫌だ…!



いつも考えることをぐるぐる考えている内に、終電についたらしい。
今日は本当に人が少ない。
もうすっかり夜の空になっていた。
俺の故郷の、どこにでもあるような田舎町。特別な遺産とかがあるわけじゃない。
だけど、帰ってくるといつもほっとする。
そして可愛い彼女と手を繋いで帰る道は、あっという間に終わる気がした。
秋ちゃんは最近ここら辺に引っ越してきたらしい。
「じゃあね、中井くん。また明日。」
俺は秋ちゃんを呼び止めた。
「明日も部活あるの?たしか手芸部だったよね?」
彼女の指には、絆創膏や傷がたくさんあ
る。

「あるよー!もうちょっとで展示祭だから忙しくて~。今お人形作ってるから、終わったら見せる!」
いつも言葉一つ一つがふわふわ浮いて、動作もゆっくりな彼女だが、手芸のことを話す時は少し体に力が入るのが分かる。
好きなことがあるのは良いことだ。

「じゃ、明日も一緒に帰れるね!
嬉しい。」
我ながら、なんて恥ずかしいことを言ってるんだろうか…。
秋ちゃんといるとどうも自分じゃないみたいな人間になってしまう。
しかし彼女は頬を染めて微笑んだ。
心臓が大きく高鳴った。

「あ、そうそう。秋でいいからね!」
「あ、じゃあ俺も優希でいいから。」

二人で照れ笑いをした後、簡単な挨拶をして別れた。

その直後、
「帰ったら明日のターゲットの下調べ」
と聞こえた気がしたが、振り返っても秋ちゃんはいなかった。

すぐ隣の民家からドラマの声でも聞こえてきたんだろう。

明日もまた、彼女に会える。









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

休憩時間10分の内緒の恋人チャージ(高校生ver)

子犬一 はぁて
BL
俺様攻め×一途受け。学校の休み時間10分の内緒の恋人チャージ方法は、ちゅーとぎゅーの他にも内緒でしています。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

『定時後の偶然が多すぎる』

こさ
BL
定時後に残業をするたび、 なぜか必ず同じ上司が、同じフロアに残っている。 仕事ができて、無口で、社内でも一目置かれている存在。 必要以上に踏み込まず、距離を保つ人―― それが、彼の上司だった。 ただの偶然。 そう思っていたはずなのに、 声をかけられる回数が増え、 視線が重なる時間が長くなっていく。 「無理はするな」 それだけの言葉に、胸がざわつく理由を、 彼自身はまだ知らない。 これは、 気づかないふりをする上司と、 勘違いだと思い込もうとする部下が、 少しずつ“偶然”を積み重ねていく話。 静かで、逃げ場のない溺愛が、 定時後から始まる。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

天の求婚

紅林
BL
太平天帝国では5年ほど前から第一天子と第二天子によって帝位継承争いが勃発していた。 主人公、新田大貴子爵は第二天子派として広く活動していた亡き父の跡を継いで一年前に子爵家を継いだ。しかし、フィラデルフィア合衆国との講和条約を取り付けた第一天子の功績が認められ次期帝位継承者は第一天子となり、派閥争いに負けた第二天子派は継承順位を下げられ、それに付き従った者の中には爵位剥奪のうえ、帝都江流波から追放された華族もいた そして大貴もその例に漏れず、邸宅にて謹慎を申し付けられ現在は華族用の豪華な護送車で大天族の居城へと向かっていた 即位したての政権が安定していない君主と没落寸前の血筋だけは立派な純血華族の複雑な結婚事情を描いた物語

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

処理中です...