15 / 75
第2章 Fall between two stools.1 1995年 崇直編 春
落花情あれども流水意なし4 The love to no avail.
しおりを挟む
3人で亘の部屋に行くのって、何年ぶりだろう。
直樹が死んで以来だから、紅緒は5年は行ってないのか。
紅緒は両親を早くに事故で亡くしている。
その事故で紅緒自身も事故以前の記憶を一部失っていた。
亘も中学で両親を亡くしている。
そしてオレは双子の弟を病で。
あれ以来、何をしてもぜーんぶ裏目に出る。
あいつさえ生きてたら、と詮の無いことばかり考えてしまう。
くそっ。
オレと紅緒はハトコとはいえ、血は繋がっていない。
戦時中のゴタゴタで、戦災孤児だった家の爺さんが笠原家へ養子に来たからだ。
跡を継ぎたくなかったまー爺は、これ幸いと神社を兄になる輝爺に押し付けたらしい。
そのせいかは知らないが、 家は隣同士と言うより同じ敷地に建っている。
母屋にオレら家族が、新宅にまー爺一家が住んでいる。
紅緒は両親が亡くなってから中学まで家で暮らしていた。
まー爺たち夫婦は仕事で帰りが遅いうえに、家を空けることが多いからだが。
それより、母親が紅緒の母と友人だったことと、娘を欲しがっていた事が大きいけどな。
さて、降りる準備しなきゃ、だ。
またこいつを背負うのかよ。
やれやれだ。
鼻先を腹たち紛れに指で弾いてやった。
「うわっ、痛そう」
紅緒が代わりに痛そうな顔をする。
当の本人は顔を一瞬歪めたが、また寝息を立てて知らん顔だ。
「嵩ちゃん、チケットもらってるから、大丈だよ」
オレが財布を取り出すと、紅緒がそう言って微笑んだ。
店からもらったタクシーチケットをバックから出し、運転手に渡す。
さてと、もうひと踏ん張りがんばりますか。
ハイヤーから再び亘を背中にかかえ、マンションのエントランスに入る。
入口の暗証番号を押してドアが開くと紅緒が先に走って、エレベーターを呼びに行った。
左にオレのリュック、右に亘と自分のバッグを下げてるのに、フットワーク軽いなぁ。
オレのは白表紙に資料突っ込んだから、かなり重いはずだが。
「べー、エレベーターの鍵、亘の鞄に」
「オッケー」
オレのリュックを軽く揺すって肩にかけ直し、亘の鞄を胸に抱えて中に手を突っ込んだ。
亘は最上階に住んでいるが、このエレベーターはボックスの解除キーを使わないと最上階へ行けない仕様になっている。
紅緒がキーホルダーを出し、鍵を刺した。
最上階のボタンが点灯し、逆に他の階のライトが消える。
「毎回これやってるんだ、わーちゃん。めんどくさくないのかな」
「家の鍵開けるのと同じ感覚じゃないの」
「家にエレベーター無いよ普通」
用がなくても最上階に興味があるやつは居るからな、用心なんだろうが。
絶対面白がって作った気がしてんだよな。要人用のセキュリティモデルとかなんとか。
まー爺ならやりかねん。
「あ、着いた。先、玄関開けとくね」
紅緒にドアを支えてもらい、中に入る。
そのまま三和土に降ろしてやろうかとも思ったが、紅緒が甲斐甲斐しく亘の靴なんか脱がすから中まで連れて行ってやることにした。
うーん。
やっぱりムカつくので、リビングの長椅子に背中から倒れ込んでやる。
「嵩ちゃん、お疲れ~」
ふぅ。あー肩凝ったぜ。
しばらく亘の上で体を休めて、起き上がる。
こいつは着替えさせたほうが良いのか、やっぱり。
「亘の着替え見繕ってくるよ」
「うん」
脱衣所のリネン室にパジャマとか入れてあったよな。
中に入ると今朝脱いだと思われるシャツと短パンが無造作に、洗濯機横の棚に脱ぎ捨ててあった。
ふーん。
こりゃ使えるな。
直樹が死んで以来だから、紅緒は5年は行ってないのか。
紅緒は両親を早くに事故で亡くしている。
その事故で紅緒自身も事故以前の記憶を一部失っていた。
亘も中学で両親を亡くしている。
そしてオレは双子の弟を病で。
あれ以来、何をしてもぜーんぶ裏目に出る。
あいつさえ生きてたら、と詮の無いことばかり考えてしまう。
くそっ。
オレと紅緒はハトコとはいえ、血は繋がっていない。
戦時中のゴタゴタで、戦災孤児だった家の爺さんが笠原家へ養子に来たからだ。
跡を継ぎたくなかったまー爺は、これ幸いと神社を兄になる輝爺に押し付けたらしい。
そのせいかは知らないが、 家は隣同士と言うより同じ敷地に建っている。
母屋にオレら家族が、新宅にまー爺一家が住んでいる。
紅緒は両親が亡くなってから中学まで家で暮らしていた。
まー爺たち夫婦は仕事で帰りが遅いうえに、家を空けることが多いからだが。
それより、母親が紅緒の母と友人だったことと、娘を欲しがっていた事が大きいけどな。
さて、降りる準備しなきゃ、だ。
またこいつを背負うのかよ。
やれやれだ。
鼻先を腹たち紛れに指で弾いてやった。
「うわっ、痛そう」
紅緒が代わりに痛そうな顔をする。
当の本人は顔を一瞬歪めたが、また寝息を立てて知らん顔だ。
「嵩ちゃん、チケットもらってるから、大丈だよ」
オレが財布を取り出すと、紅緒がそう言って微笑んだ。
店からもらったタクシーチケットをバックから出し、運転手に渡す。
さてと、もうひと踏ん張りがんばりますか。
ハイヤーから再び亘を背中にかかえ、マンションのエントランスに入る。
入口の暗証番号を押してドアが開くと紅緒が先に走って、エレベーターを呼びに行った。
左にオレのリュック、右に亘と自分のバッグを下げてるのに、フットワーク軽いなぁ。
オレのは白表紙に資料突っ込んだから、かなり重いはずだが。
「べー、エレベーターの鍵、亘の鞄に」
「オッケー」
オレのリュックを軽く揺すって肩にかけ直し、亘の鞄を胸に抱えて中に手を突っ込んだ。
亘は最上階に住んでいるが、このエレベーターはボックスの解除キーを使わないと最上階へ行けない仕様になっている。
紅緒がキーホルダーを出し、鍵を刺した。
最上階のボタンが点灯し、逆に他の階のライトが消える。
「毎回これやってるんだ、わーちゃん。めんどくさくないのかな」
「家の鍵開けるのと同じ感覚じゃないの」
「家にエレベーター無いよ普通」
用がなくても最上階に興味があるやつは居るからな、用心なんだろうが。
絶対面白がって作った気がしてんだよな。要人用のセキュリティモデルとかなんとか。
まー爺ならやりかねん。
「あ、着いた。先、玄関開けとくね」
紅緒にドアを支えてもらい、中に入る。
そのまま三和土に降ろしてやろうかとも思ったが、紅緒が甲斐甲斐しく亘の靴なんか脱がすから中まで連れて行ってやることにした。
うーん。
やっぱりムカつくので、リビングの長椅子に背中から倒れ込んでやる。
「嵩ちゃん、お疲れ~」
ふぅ。あー肩凝ったぜ。
しばらく亘の上で体を休めて、起き上がる。
こいつは着替えさせたほうが良いのか、やっぱり。
「亘の着替え見繕ってくるよ」
「うん」
脱衣所のリネン室にパジャマとか入れてあったよな。
中に入ると今朝脱いだと思われるシャツと短パンが無造作に、洗濯機横の棚に脱ぎ捨ててあった。
ふーん。
こりゃ使えるな。
0
あなたにおすすめの小説
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる