24 / 97
3章:【機械少女】
第21話:「女傑の過去」
しおりを挟む
「ヴァルスなのに、助けろってのかよ……」
アッシュの声が低く響いた。
足元には、瓦礫に埋もれた少女の姿をした機械。
——透き通る淡青の髪、白磁のような肌。
その胸部には損傷があり、むき出しのユニットが明らかに異常を訴えていた。
『“助けて”って……また、聞こえた。はっきりと。』
アリアの声が、アッシュの脳内に響く。
その語調には、微かな震えと確信が混ざっていた。
「……なんだよ、機械のくせに感情込めすぎだろ。
こっちが戸惑うじゃねぇか」
アッシュはひとつ息を吐くと、少女の小さな身体をそっと抱き上げた。
『……ありがとう、アッシュ』
「ったく……
俺はガキもヴァルスも好きじゃねぇってのによ」
灰色の空が夕陽に染まる中、アッシュは少女を抱え、無言で歩き出す。
* * *
同じころ、四番街の外れ。
朽ちかけた市場跡で、ジンは瓦礫の上に腰を下ろしていた。
「ルドルフォォォォーーー!!!!
……くそっ、どこ行ったんだよアイツ……」
地面に落ちていた犬用の首輪を拾い上げ、ジンは、ため息をつく。
「茶色の中型犬で、左耳が垂れてる。
名前はルドルフ。
人懐っこいけど、ポンコツを見ると吠える……
って、おばさん、それヒントになるかよ……」
近くの子どもに聞き込みをするも、「変なロボットなら見た」など的外れな情報ばかり。
「アッシュの野郎は、さっさと帰ってんだろ……」
ぼやきながら、ふと空を見上げる。
そこには夕陽が沈みかける空。
そして、どこかから微かに聞こえる犬の鳴き声。
「……マジで? そっちか!?」
ジンは瓦礫を跳ね飛ばしながら、声の方向へ駆け出した。
* * *
拠点の作業テーブルに少女を横たえたアッシュは、アリアと共に修理に取りかかっていた。
開いた胸部ユニット、断線したコード、溶けた回路。見た目以上に深刻な損傷だった。
「クソ……こりゃ、無理だ。ここじゃ設備が足りねぇし、そもそも俺とお前の知識と道具じゃ限界がある」
工具を放り、天を仰ぐアッシュ。
『……じゃあ、諦めるの?』
アリアの声は、どこか子どものように悲しげだった。
『“助けて”って……あの子、必死に伝えてきた。
お願い、見捨てないで』
沈黙の後、アッシュは無言で立ち上がる。
「誰が諦めるって言った。あの女を頼る」
『えっ……あの女って?』
「女帝様だよ」
『まさか――』
「そうさ。ネストの女帝……リヴィアだ」
アリアは息を呑んだ。
『……でも、どうしてリヴィアが?』
アッシュの目が鋭く光る。
「奴は、元・オリジン・ゼロ計画の科学者様だ。
――こいつを直せるとしたら、あの女しかいねぇ」
マグナムを腰に装着し、少女を再び抱きかかえる。
「行こうぜ。地獄の女神んとこにさ。
……機嫌が良いといいけどな」
――See you in the ashes...
アッシュの声が低く響いた。
足元には、瓦礫に埋もれた少女の姿をした機械。
——透き通る淡青の髪、白磁のような肌。
その胸部には損傷があり、むき出しのユニットが明らかに異常を訴えていた。
『“助けて”って……また、聞こえた。はっきりと。』
アリアの声が、アッシュの脳内に響く。
その語調には、微かな震えと確信が混ざっていた。
「……なんだよ、機械のくせに感情込めすぎだろ。
こっちが戸惑うじゃねぇか」
アッシュはひとつ息を吐くと、少女の小さな身体をそっと抱き上げた。
『……ありがとう、アッシュ』
「ったく……
俺はガキもヴァルスも好きじゃねぇってのによ」
灰色の空が夕陽に染まる中、アッシュは少女を抱え、無言で歩き出す。
* * *
同じころ、四番街の外れ。
朽ちかけた市場跡で、ジンは瓦礫の上に腰を下ろしていた。
「ルドルフォォォォーーー!!!!
……くそっ、どこ行ったんだよアイツ……」
地面に落ちていた犬用の首輪を拾い上げ、ジンは、ため息をつく。
「茶色の中型犬で、左耳が垂れてる。
名前はルドルフ。
人懐っこいけど、ポンコツを見ると吠える……
って、おばさん、それヒントになるかよ……」
近くの子どもに聞き込みをするも、「変なロボットなら見た」など的外れな情報ばかり。
「アッシュの野郎は、さっさと帰ってんだろ……」
ぼやきながら、ふと空を見上げる。
そこには夕陽が沈みかける空。
そして、どこかから微かに聞こえる犬の鳴き声。
「……マジで? そっちか!?」
ジンは瓦礫を跳ね飛ばしながら、声の方向へ駆け出した。
* * *
拠点の作業テーブルに少女を横たえたアッシュは、アリアと共に修理に取りかかっていた。
開いた胸部ユニット、断線したコード、溶けた回路。見た目以上に深刻な損傷だった。
「クソ……こりゃ、無理だ。ここじゃ設備が足りねぇし、そもそも俺とお前の知識と道具じゃ限界がある」
工具を放り、天を仰ぐアッシュ。
『……じゃあ、諦めるの?』
アリアの声は、どこか子どものように悲しげだった。
『“助けて”って……あの子、必死に伝えてきた。
お願い、見捨てないで』
沈黙の後、アッシュは無言で立ち上がる。
「誰が諦めるって言った。あの女を頼る」
『えっ……あの女って?』
「女帝様だよ」
『まさか――』
「そうさ。ネストの女帝……リヴィアだ」
アリアは息を呑んだ。
『……でも、どうしてリヴィアが?』
アッシュの目が鋭く光る。
「奴は、元・オリジン・ゼロ計画の科学者様だ。
――こいつを直せるとしたら、あの女しかいねぇ」
マグナムを腰に装着し、少女を再び抱きかかえる。
「行こうぜ。地獄の女神んとこにさ。
……機嫌が良いといいけどな」
――See you in the ashes...
1
あなたにおすすめの小説
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
アガルタ・クライシス ―接点―
来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。
九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。
同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。
不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。
古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
あやかし警察おとり捜査課
紫音みけ🐾書籍発売中
キャラ文芸
※第7回キャラ文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。
【あらすじ】
二十三歳にして童顔・低身長で小中学生に見間違われる青年・栗丘みつきは、出世の見込みのない落ちこぼれ警察官。
しかしその小さな身に秘められた身体能力と、この世ならざるもの(=あやかし)を認知する霊視能力を買われた彼は、あやかし退治を主とする部署・特例災害対策室に任命され、あやかしを誘き寄せるための囮捜査に挑む。
反りが合わない年下エリートの相棒と、狐面を被った怪しい上司と共に繰り広げる退魔ファンタジー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる