Ashpunk Blues−灰燼世界のマシンシティ−

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4章:【Desperado】

第33話:「ならずもの」

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――地下ネストシティ。
 腐臭の漂う空気が淀むスラム。
 ネオンは灯っているが、誰もそれを希望とは見なさない。街路の片隅で火を囲む若者たちの目は、常に獣のように光っていた。  

 アッシュは吸い殻をかかとで潰し、歩き出す。背後からジンの足音と煙草の匂いが追いかけてくる。拠点での穏やかな時間は、ここでは幻に過ぎなかった。  

 そこは、古びた廃倉庫。  
 チンピラたちが数人、古びたソファにふんぞり返り、銃やパイプを膝に置いている。  

 扉が軋んで開き、アッシュ達が薄暗い倉庫へと姿を現す。

「依頼内容はお前らを大人しくさせろ、だと」  

 低く言いながら、アッシュは倉庫の中央まで歩く。  

「お前ら、相当嫌われてんな?」  

「なんだ? てめぇら!  
 正義の味方のつもりかよ、おい!」  

 一人のチンピラが吠えるように立ち上がる。  

 ジンが肩をすくめた。  

「なぁアッシュ、俺たちって正義の味方か?」  

 アッシュは鼻で笑い、返す。  

「んなわけねぇだろ。俺たちは、ならずものだよ」  

 瞬間、倉庫の空気が張り詰める。  
 チンピラたちが一斉に立ち上がり、武器を構える。  

「やる気か……」  

 アッシュの拳が鳴った。  

 ――次の瞬間、鉄パイプが振り下ろされるが、アッシュは身を捻ってそれをかわす。  
 そのまま相手の腕からパイプを奪い、別の男の腹に叩き込んだ。  

 悲鳴、転倒、そして怒号――

 後方でナイフを構える男に、アリアが注意を促す。  

『ナイフだよ、アッシュ』  

 アッシュは片手でパイプをジンに放る。  

「ジン、ナイフだってよ」  

 ジンは受け取りながら笑う。  

「了解っと!」  

 パイプが男の手首を弾き、ナイフが宙を舞う。  
 乱戦の中で、アッシュとジンは流れるような動きで次々と相手を倒していく。  

 * * *

 数分後、血と埃の中に数人が転がっていた。  

 その中の一人、口の端から血を垂らしながらふらつき立ち上がる。  

「ふざけやがって……誰が、こんな奴らに……!」  

 震える手でポケットから小さな銀色のケースを取り出す。中には黒く濡れたような光を放つ錠剤が一粒。  

「おい……やめとけ、それ……」  

 ジンが思わず声をかけるも、男はそれを無視して一気に飲み込んだ。  

 ――数秒の沈黙。  

 次の瞬間、男の身体が跳ね上がる。  
 全身の筋肉が異様に膨張し、皮膚が裂ける寸前のように血管が浮かび上がった。  
 目は血走り、泡を吹く口元が痙攣けいれんしていた。  

「うおおおおおッ!!」  

 獣じみた雄叫びをあげ、男が突っ込んでくる。  

 アッシュは静かに一歩踏み出し、鉄パイプを振り抜いた。脳天に直撃したそれで、男は地面に叩きつけられる。  
 
 ――しかし、男の体が痙攣しながら再び動き出す。

 ジンが、リボルバーを取り出し、男の脳天を貫く。
 そこで……ようやく糸が切れた。 

「……何なんだよこの薬は」  

 アッシュが転がったケースを拾い上げる。  
 アリアの声が静かに頭に響く。  

『この成分……初期の遺伝子操作薬に似てる。  
 粗悪品だけど、起源は“あれ”なんじゃない?』  

 アッシュは拳を握り、残った薬をケースごと潰した。  
 その破片を放るように捨て、荒んだ街並みに目を向ける。  

「誰が正義だっての……」  

 低く呟いて、背を向ける。  




――See you in the ashes...
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