9 / 130
第9話 ドラゴン襲来
しおりを挟む
何はともあれ腹が減ったので朝食を取ることにした。
スクランブルエッグにカリカリベーコン、トーストとコーヒーという定番の朝食メニューを平らげた二人は、今後どうするかの話し合いをしていた。
「フゥッ、ご馳走様でした。まさか異世界でこんな美味しい朝食を食えるとは思わなかったよ」
「本当に」
二人揃って苦笑する。
「さて、まずはこの世界のことを知る上で、人里に降りてみようと思う」
「そうですね。ただ...」
アリィが言い淀む。
「そうなんだよな ...山の中、どっちに進めばいいのか見当がつかない。コンパスがあっても無意味だろうし」
日本っていうか地球とは磁場が違うだろうし、そもそも方角が分かっても、どっちに進めばいいのかも分からない。
「えっ? コンパスってあの円を描く?」
アリィがボケたことを言い出した。
「いやそっちじゃなくて方位磁石の方」
「あぅ、すいません...」
アリィが羞恥で赤くなった。まぁ学生ならそっちを想像しちゃうだろう。
「ところでアリィ、これから異世界を旅するにあたり、丸腰ってのは怖いと思うんだ。剣や槍、弓矢なんかをイメージ出来るかな? 若しくは拳銃とか」
「やってみます」
結論から言うと全滅だった。辛うじてイメージ出来たのは、包丁や果物ナイフなどの金物類だけだった。武器と言えなくもないが心許なさ過ぎる。包丁一本サラシに巻く訳にもいかない。
「う~ん、やっぱり実際に手にした物じゃないと厳しいみたいだな」
「すいません...」
「いやいや、謝るとこじゃないよ。アリィのチートのお陰でこうして快適にいられるんだから。あ、そうだ。金槌はどうかな?」
「イケそうな気がします」
今度は成功した。
「うん、これは武器になりそうだな」
「良かったです...」
アリィがホッと一息ついた。
「じゃあ、行こうか」
「はい」
◇◇◇
家の外に出た時、ユウは一つ気になっていたことをアリィに尋ねてみた。
「なあ、アリィ。一度転送出来た物って何度でも転送出来るのかな?」
「あ、そうですね。一度消して試してみます」
そう言ってアリィが目を閉じる。すると今まであった家が忽然と姿を消す。またイメージしてみる。再び現れた。
「凄いな...アリィのチート最強なんじゃ...」
「そ、そんなこと~」
照れるアリィ。と、その時だった。地面が揺れ出した。
「な、なんだ!? 地震!?」
「い、いえ、何かが近付いて来るような...」
その通りだった。
「グオォォォォッーーーーー!!!!!」
洞窟中に響き渡る怒号と共に現れたのは、
「ど、ドラゴン!?」
銀色に輝く巨大なドラゴンだった。
「アリィ! 俺の後ろにっ!」
咄嗟にアリィを庇ってユウが前に出た瞬間だった。
「うわぁっ!!」
視界が真っ白に染まった。ドラゴンがブレスを吐いたのだ。強烈なブレス攻撃に耐えられた者はかつて一人も居ない。ドラゴンは勝利を確信したのだが、
「グオッ?」「ん?」
ドラゴンとユウの声が被った。両者共にキョトンとしてる。先に気を取り直したのはドラゴンだった。
「グオッ! グオッ!」
短い前足で殴る。後ろ足で蹴り上げる。それでもユウの張ったバリヤはビクともしない。
「グオオッッッ!」
今度は鋭い牙で噛みついてきた。重さに耐えられなくなったのか、バリヤが内側に凹んできた。ドラゴンの鋭い牙が眼前に迫ってくる。
「ヒィッ!」
アリィが悲鳴を上げた。ユウは焦る。その時、さっきアリィに出して貰った金槌のことを思い出した。ドラゴンの牙目掛けておもいっきり振り下ろす。
「ウリャァッ!」
パキーン
乾いた音が響き、ドラゴンの牙が一本折れた。
「グオォォッッッ!」
一際高く鳴いたドラゴンは、逃げるように去って行った。
「ハァハァ、アリィ、無事か!?」
「こ、腰が抜けた...」
二人はクタクタになって地面に座り込んだ。
スクランブルエッグにカリカリベーコン、トーストとコーヒーという定番の朝食メニューを平らげた二人は、今後どうするかの話し合いをしていた。
「フゥッ、ご馳走様でした。まさか異世界でこんな美味しい朝食を食えるとは思わなかったよ」
「本当に」
二人揃って苦笑する。
「さて、まずはこの世界のことを知る上で、人里に降りてみようと思う」
「そうですね。ただ...」
アリィが言い淀む。
「そうなんだよな ...山の中、どっちに進めばいいのか見当がつかない。コンパスがあっても無意味だろうし」
日本っていうか地球とは磁場が違うだろうし、そもそも方角が分かっても、どっちに進めばいいのかも分からない。
「えっ? コンパスってあの円を描く?」
アリィがボケたことを言い出した。
「いやそっちじゃなくて方位磁石の方」
「あぅ、すいません...」
アリィが羞恥で赤くなった。まぁ学生ならそっちを想像しちゃうだろう。
「ところでアリィ、これから異世界を旅するにあたり、丸腰ってのは怖いと思うんだ。剣や槍、弓矢なんかをイメージ出来るかな? 若しくは拳銃とか」
「やってみます」
結論から言うと全滅だった。辛うじてイメージ出来たのは、包丁や果物ナイフなどの金物類だけだった。武器と言えなくもないが心許なさ過ぎる。包丁一本サラシに巻く訳にもいかない。
「う~ん、やっぱり実際に手にした物じゃないと厳しいみたいだな」
「すいません...」
「いやいや、謝るとこじゃないよ。アリィのチートのお陰でこうして快適にいられるんだから。あ、そうだ。金槌はどうかな?」
「イケそうな気がします」
今度は成功した。
「うん、これは武器になりそうだな」
「良かったです...」
アリィがホッと一息ついた。
「じゃあ、行こうか」
「はい」
◇◇◇
家の外に出た時、ユウは一つ気になっていたことをアリィに尋ねてみた。
「なあ、アリィ。一度転送出来た物って何度でも転送出来るのかな?」
「あ、そうですね。一度消して試してみます」
そう言ってアリィが目を閉じる。すると今まであった家が忽然と姿を消す。またイメージしてみる。再び現れた。
「凄いな...アリィのチート最強なんじゃ...」
「そ、そんなこと~」
照れるアリィ。と、その時だった。地面が揺れ出した。
「な、なんだ!? 地震!?」
「い、いえ、何かが近付いて来るような...」
その通りだった。
「グオォォォォッーーーーー!!!!!」
洞窟中に響き渡る怒号と共に現れたのは、
「ど、ドラゴン!?」
銀色に輝く巨大なドラゴンだった。
「アリィ! 俺の後ろにっ!」
咄嗟にアリィを庇ってユウが前に出た瞬間だった。
「うわぁっ!!」
視界が真っ白に染まった。ドラゴンがブレスを吐いたのだ。強烈なブレス攻撃に耐えられた者はかつて一人も居ない。ドラゴンは勝利を確信したのだが、
「グオッ?」「ん?」
ドラゴンとユウの声が被った。両者共にキョトンとしてる。先に気を取り直したのはドラゴンだった。
「グオッ! グオッ!」
短い前足で殴る。後ろ足で蹴り上げる。それでもユウの張ったバリヤはビクともしない。
「グオオッッッ!」
今度は鋭い牙で噛みついてきた。重さに耐えられなくなったのか、バリヤが内側に凹んできた。ドラゴンの鋭い牙が眼前に迫ってくる。
「ヒィッ!」
アリィが悲鳴を上げた。ユウは焦る。その時、さっきアリィに出して貰った金槌のことを思い出した。ドラゴンの牙目掛けておもいっきり振り下ろす。
「ウリャァッ!」
パキーン
乾いた音が響き、ドラゴンの牙が一本折れた。
「グオォォッッッ!」
一際高く鳴いたドラゴンは、逃げるように去って行った。
「ハァハァ、アリィ、無事か!?」
「こ、腰が抜けた...」
二人はクタクタになって地面に座り込んだ。
15
あなたにおすすめの小説
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。
彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
修学旅行のはずが突然異世界に!?
中澤 亮
ファンタジー
高校2年生の才偽琉海(さいぎ るい)は修学旅行のため、学友たちと飛行機に乗っていた。
しかし、その飛行機は不運にも機体を損傷するほどの事故に巻き込まれてしまう。
修学旅行中の高校生たちを乗せた飛行機がとある海域で行方不明に!?
乗客たちはどこへ行ったのか?
主人公は森の中で一人の精霊と出会う。
主人公と精霊のエアリスが織りなす異世界譚。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる