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第63話 ユグドラシルの枝

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「うん? あれはもしかしたら...」

 ラキがワンダートレントの亡骸に近寄って何かを探している。やがて、

「おぉっ! これは! 間違いない『ユグドラシルの枝』じゃ!」

 そう言って真っ黒な木刀のようなモノを掲げる。

「ユグドラシルの枝ってなんだ?」

 ユウが至極もっともな疑問を口にする。

「世界樹と呼ばれ、この世界を支えていると言われる巨大な樹の一部じゃ。お主が下げておる安っぽい剣なんぞより、よっぽど頼りになる得物じゃぞ? メチャクチャ硬いらしいからの」

「そうなのか?」

「なにせ滅多にドロップしない希少なアイテムじゃからな。売ってもいいが、それよりも実戦で使ってみてはどうじゃ? 伝説の武器になるかも知れんぞ?」

 そう言われると、ユウの中にある少年の心が擽られる。

「ラキがそこまで言うなら、やってみようかな」

 ユウは満更でもない顔で、いそいそとユグドラシルの枝を腰に下げた。元々あった剣はラキに渡した。

「軽いな。本当にそんな強い武器なのかな...」

 装備したものの、ユウは半信半疑みたいだ。

「試してみれば良い。ほれ、ちょうどいい相手がやって来たじゃろ?」

 ラキが指差す先に居たのは、そこそこ大きく育ったトレントだった。幹回りは約5m程、高さは約20m程だろうか。十分大木と呼べるレベルである。

「ブロゥゥゥッ!」 

 トレントは長い根と枝を伸ばして攻撃して来た。

「うおっと!?」

 ユウは慌ててバリヤを張る。

「ユウ、守ってばかりいたんでは、武器の真価を発揮できんぞ?」

「そ、そう言われても!」

「ほれ! 今じゃ! ヤツの懐に飛び込め!」

 根と枝を攻撃を見切り、ユウの背中を押しながらラキが指示を下す。

「ウオォォォッ!」

 ユウがヤケクソとばかりに、トレントの懐に飛び込んでユグドラシルの枝を振る。

「ブロゥゥゥッ!」 

 なんと! 一撃でトレントが両断された!

「凄い...」

 ユウはユグドラシルの枝を振った体勢のまま固まった。

「フムフム、さすがの威力じゃの」

 ラキは一人満足そうに頷いた。 

「あんな太い木を一振りで...」

『ビックリだね...』

 アリィとリオは只只驚いていた。

「ユウ、どうせ夜まで戻れんのじゃから、しばらくこの森で試し斬りしてはどうじゃ?」

「あ、あぁ、やってみるよ」

 少し自信が付いたユウは、それから夜になるまでオークやホーンラビット、ゴブリンやコボルトなどを相手に戦った。

「ラキ! 確かにこれはめっちゃ強い! 伝説の武器と呼ばれるのも納得だ!」

 ユウは大ハシャギである。ラキ達はそんなユウを温かい目で見守っていた。


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