5 / 51
第1章 聖女誕生
第5話 聖女の片鱗
しおりを挟む
「あ、セイラ、ちょっと待ってくれ」
リシャールは先を急ごうとするセイラを呼び止めた。
「なんだよ?」
「教会に寄ってから行こう」
「教会? なんで?」
「『聖女認定の儀』に必要な聖水を作るためだ」
「聖水ってあれか? アンデッドにぶっかけるヤツ?」
「そう、それだ。聖水を作れることが聖女になる条件の一つでもある」
「どうやって作んだよ?」
「それは教会に行ってから説明する」
この町の教会は小ぢんまりとしていて、大理石造りの白い外壁が荘厳な雰囲気を醸し出していた。
「あれ? 誰も居ないのかな?」
教会の中は無人だった。神父もシスターの姿も無い。
「どうせ昼間っから飲んだくれてんだろ」
そう言ってセイラは、勝手知ったるかのように奥へ進んで行く。
「お、おい、セイラ!?」
リシャールが慌てて後を追う。やがて神父の控え室と思われる部屋に着くと、セイラはノックもせずドアを開けた。
「おい! この生臭神父! とっとと起きやがれ!」
セイラが一喝した先には、酒瓶を抱えてだらしなくソファーに寝そべる赤ら顔の神父の姿があった。
「ふにゃあ...もう飲めねぇっての...ヒック!」
◇◇◇
「うぅ...頭痛てぇ...み、水」
「ったく、しょうがねぇな、ホラよ。酒も程々にしねぇと早死にすんぞ!?」
セイラが水を渡すと、神父はひったくるようにして呷った。
「バカモン! いつも言っとるだろ! これは酒ではなく般若湯だと!」
「ハイハイ、じゃあ、私が飲んでも平気なんだよな、ゴクゴク、プハ~♪」
セイラは一気飲みした。
「こ、こら、止めんか! ガキのクセに何考えとる!」
「安い酒飲んでやがんなぁ。つまみはねぇのかよ?」
「居酒屋みたいに寛ぐんじゃないわ!」
リシャールはこのやり取りを呆然と見詰めるしかなかった。口を挟む余地がない。
「んで? 何者だ? コイツは?」
神父がやっとリシャールの存在に気付いた。
「王子様」
「へっ!?」
このやり取り何回目だろう? そう思いながらもリシャールは神父に説明するのだった。
◇◇◇
「はぁ!? コイツが聖女だぁ!? なんかの間違いだろう!?」
「うん、私もそう思うよ」
「まぁでも、やってみなけりゃ分からないだろ? 聖水を作るのに協力して欲しい」
「聖水ねぇ。コイツに作れるとは思えんが、まぁ良かろう。連いて来い」
神父に案内されたのは、奥に女神像が飾ってある小さな部屋だった。
「ここは『祈りの間』だ。ここで女神像に祈りを捧げて聖水を作るんだ」
そう言って神父は、水差しを持って女神像の頭の上から水を掛け始めた。その水は女神像を循環し、足元にあるバケツに滴り落ちている。
「ほれ、セイラ。さっさと祈りを捧げんか。水が無くなる」
「やったことねぇのにどうやんだよ?」
「魔力を集中させるんじゃ」
「回復魔法を掛けるみたいにか?」
「そうじゃ。早くせい」
『グランドヒール』
ギルドの時と同じように、セイラが呪文を唱えると、部屋中に光が溢れた。
「こ、これは!? 凄い魔力量じゃな!?」
光が収まった後、女神像の足元にあるバケツの水が虹色に輝いていた。
「なんと! これは驚いた! こんな輝き見たことないわい!」
「成功したのか?」
リシャールが期待を込めて見詰める。
「分からん。だが、王都の鑑定スキル持ちの神官に見て貰えばハッキリするじゃろ」
スキルとは、生まれながらに神から授かる特殊な能力のことで、ギフトとも呼ばれる。様々なスキルがあるが、特に鑑定スキルは、王都にある神殿の神官になるためには必須と言っていいスキルである。
「良し! じゃあ早く王都に行こう!」
リシャールは弾んだ声でそう言った。
リシャールは先を急ごうとするセイラを呼び止めた。
「なんだよ?」
「教会に寄ってから行こう」
「教会? なんで?」
「『聖女認定の儀』に必要な聖水を作るためだ」
「聖水ってあれか? アンデッドにぶっかけるヤツ?」
「そう、それだ。聖水を作れることが聖女になる条件の一つでもある」
「どうやって作んだよ?」
「それは教会に行ってから説明する」
この町の教会は小ぢんまりとしていて、大理石造りの白い外壁が荘厳な雰囲気を醸し出していた。
「あれ? 誰も居ないのかな?」
教会の中は無人だった。神父もシスターの姿も無い。
「どうせ昼間っから飲んだくれてんだろ」
そう言ってセイラは、勝手知ったるかのように奥へ進んで行く。
「お、おい、セイラ!?」
リシャールが慌てて後を追う。やがて神父の控え室と思われる部屋に着くと、セイラはノックもせずドアを開けた。
「おい! この生臭神父! とっとと起きやがれ!」
セイラが一喝した先には、酒瓶を抱えてだらしなくソファーに寝そべる赤ら顔の神父の姿があった。
「ふにゃあ...もう飲めねぇっての...ヒック!」
◇◇◇
「うぅ...頭痛てぇ...み、水」
「ったく、しょうがねぇな、ホラよ。酒も程々にしねぇと早死にすんぞ!?」
セイラが水を渡すと、神父はひったくるようにして呷った。
「バカモン! いつも言っとるだろ! これは酒ではなく般若湯だと!」
「ハイハイ、じゃあ、私が飲んでも平気なんだよな、ゴクゴク、プハ~♪」
セイラは一気飲みした。
「こ、こら、止めんか! ガキのクセに何考えとる!」
「安い酒飲んでやがんなぁ。つまみはねぇのかよ?」
「居酒屋みたいに寛ぐんじゃないわ!」
リシャールはこのやり取りを呆然と見詰めるしかなかった。口を挟む余地がない。
「んで? 何者だ? コイツは?」
神父がやっとリシャールの存在に気付いた。
「王子様」
「へっ!?」
このやり取り何回目だろう? そう思いながらもリシャールは神父に説明するのだった。
◇◇◇
「はぁ!? コイツが聖女だぁ!? なんかの間違いだろう!?」
「うん、私もそう思うよ」
「まぁでも、やってみなけりゃ分からないだろ? 聖水を作るのに協力して欲しい」
「聖水ねぇ。コイツに作れるとは思えんが、まぁ良かろう。連いて来い」
神父に案内されたのは、奥に女神像が飾ってある小さな部屋だった。
「ここは『祈りの間』だ。ここで女神像に祈りを捧げて聖水を作るんだ」
そう言って神父は、水差しを持って女神像の頭の上から水を掛け始めた。その水は女神像を循環し、足元にあるバケツに滴り落ちている。
「ほれ、セイラ。さっさと祈りを捧げんか。水が無くなる」
「やったことねぇのにどうやんだよ?」
「魔力を集中させるんじゃ」
「回復魔法を掛けるみたいにか?」
「そうじゃ。早くせい」
『グランドヒール』
ギルドの時と同じように、セイラが呪文を唱えると、部屋中に光が溢れた。
「こ、これは!? 凄い魔力量じゃな!?」
光が収まった後、女神像の足元にあるバケツの水が虹色に輝いていた。
「なんと! これは驚いた! こんな輝き見たことないわい!」
「成功したのか?」
リシャールが期待を込めて見詰める。
「分からん。だが、王都の鑑定スキル持ちの神官に見て貰えばハッキリするじゃろ」
スキルとは、生まれながらに神から授かる特殊な能力のことで、ギフトとも呼ばれる。様々なスキルがあるが、特に鑑定スキルは、王都にある神殿の神官になるためには必須と言っていいスキルである。
「良し! じゃあ早く王都に行こう!」
リシャールは弾んだ声でそう言った。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
急に王妃って言われても…。オジサマが好きなだけだったのに…
satomi
恋愛
オジサマが好きな令嬢、私ミシェル=オートロックスと申します。侯爵家長女です。今回の夜会を逃すと、どこの馬の骨ともわからない男に私の純潔を捧げることに!ならばこの夜会で出会った素敵なオジサマに何としてでも純潔を捧げましょう!…と生まれたのが三つ子。子どもは予定外だったけど、可愛いから良し!
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる