聖女になんかなりたくない少女と、その少女を聖女にしたがる王子の物語

真理亜

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第2章 聖女と聖獣

第40話 輪廻

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~~ 時は少し遡り ~~


 弓の手入れを終えたセイラは頭の中の声に話し掛ける。

「あ~えっと、アンジュ? だっけ?」

『なに?』

「いや、結局どこに向かっているのかな~? なんて」

『あなたの仲間を助けに行くって言ったじゃない?』

 あぁ、やっぱりね...エインツの町に向かっているんだぁ...

「目的地は分かった。それで私は何をすればいいんだ?」

『邪竜と戦って貰うわ』

「は、はいぃぃ!? 何言ってんの!? 勝てる訳ないじゃ~ん!」

 普通に死ぬってっ!

『大丈夫よ、私がサポートするから。あなたは私の言う通りに戦って頂戴』

「い、いやでもさ~...」

『あなたの仲間を助けたいんでしょ?』

「...分かった、やってみる。それと私の名前はセイラ。あなたじゃなくてセイラだ」

『知ってるけど?』

「うぐっ! そ、それとこのトカゲの名前はクロウだ。覚えておけ」

『......』

「どうかしたのか?」

『...いえ、あなた...じゃない、セイラもクロウって名付けたのよね...』

「いや、名付けたの私じゃねぇけど、それってどういう意味だ?」

『そうね、まだ時間もあるし。少し昔話でもしましょうか』

「昔話?」

『まずセイラ、あなたは私の生まれ変わり...だと思うわ』

 セイラはズッコケル所だった。

「いや、生まれ変わりって時点でビックリなんだけどさ、確証はねぇんだな...」

 そっちもビックリだよ!

『だって調べようが無いもの』

「まぁそりゃそうなんだけどさぁ」

 なんだこの残念感は。

『だからまずは根拠を上げて行くわね。セイラ、あなたはこの国じゃ珍しい黒髪でしょ?』

「まぁ確かに。私以外で見た事無いかも」

『私の居た国じゃ黒髪が普通だったのよ』

「なんて国だ? 聞いた事ねぇんだけど?」

『もう存在しない国よ。千年くらい前に滅んだから』

「そんな昔に!?」

 なんだかスケールが大きくなって来たぞ!

『その国で私は、あなたに夢で見せた通り梓巫女として働いていた』

「あぁ、神のお告げを聞いて悪と戦ってたんだっけ?」

『ま、まぁそんな所よ。戦ってたのは主に魔人や邪竜だったけどね』

「魔人って?」

『魔獣が人型になった者。この国じゃ魔の者って言い方してたわね』

「あぁ、確か魔獣を作り出したり使役したりするんだっけ?」

『えぇ、そうよ。知能が高くて魔力も高い厄介な存在だったわ』

「その上更に邪竜とも戦ってたんだ...アンジュって凄かったんだな...」

『凄くなんかないわよ。邪竜と戦って命を落としたんだから』

「...その邪竜ってのはまさか...」

『えぇ、そのまさかよ』

 マジかぁ~!? それじゃ私が戦っても勝てないんじゃないの!?

 セイラは天を仰いだ。



 
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