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「やっかましわぁ! このスケコマシ野郎がぁ! 何が導くだ! てめえがあのビッチとラブホに出入りしてんのはみんな知ってんだよ! 知らねぇと思ってんのはてめえだけだ! このスイカ頭がぁ! 何が筆頭公爵家だ! てめえはその家の恥晒しじゃねぇか! 顔も悪い頭も悪い女癖も悪い! オマケにスキル無しときた! どこに取り柄があるってんだ? ああん? 何を勘違いして偉そうにしてるか知らねぇがな、教えといてやるから耳の穴かっぽじってよおく聞いとけや! いいか? てめえが筆頭公爵家を名乗れんのはな、アタシと婚約してっからだ! アタシとの婚約が無くなった時点で、てめえは家からおん出される運命なんだよ! 分かったか? ああん? そこんとこよおく肝に銘じておけやぁ! このボンクラがぁ!」

 ビビアンの口撃はガラが何倍も悪くなるのだった。

「ハッ!? わ、私ったら何を!?」

 我に返ったビビアンの側には、魂の脱け殻状態になったバレットが崩れ落ちていたとさ。

 ビビアンはどうしていいか分からず、ただオロオロしていた。


◇◇◇


 家に帰ったビビアンは父親であるグラントの部屋に呼び出された。グラントは射殺さんばかりの鋭い眼光で娘を睨み付けた。

「なぜ呼び出されたか分かっているな?」

「は、はい...」

 ビビアンは縮こまりながら小さく呟いた。

「バレット様に無礼を働いたそうだな?」

「い、いえ、あれはその...」

「言い訳をするな!」

「ひいっ!」

「このバカ娘がぁ! 筆頭公爵家を怒らせたらどうなるか分かってんのかぁ!」

 グラントは愛娘であるビビアンの頬を平手打ちしようと腕を振り回した。だが...

 ススッ! パチーン!

「へぶぅっ!」

 グラントの平手打ちをスルッと躱し、ビビアンの見事なカウンターパンチが顎にヒットした。グラントはもんどり打ってひっくり返った。

「はわわわっ! す、すいません! お父様! すいません! すいません!」

 ビビアンはコメツキバッタのようにペコペコとお辞儀を繰り返して謝った。

「...あぁ、分かってる分かってる...ビビアン、お前に悪気は無い...全てはカウンタースキルの発動したせいだってことだよな?」

「は、はい...」

「分かっちゃいるけど納得いかないし、痛いもんは痛い~!」

 グラントの絶叫が部屋に轟いた。

 ...というか、婚約者であるバレットはともかく、父親であるグラントはビビアンの能力をよおく知っているはずなのにこの体たらくとは...

 学習しないにも程があると言わざるを得ないだろう。愚かな父親である。

 
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