私を虐めたりしたらカウンターが発動してあなたは酷い目に遭いますよ?

真理亜

文字の大きさ
8 / 35

8

しおりを挟む
 その日のビビアンは授業どころではなかった。

 今朝、ライオスに言われたことが頭から離れない。伯爵家から出られる? もう使用人の仕事もしなくても良い? 

 ビビアンがずっと待ち望んでいたことのはずなのに、それが実現するとなるとどうにも現実味が無い。

 ライオスはああ言っていたが、伯爵家であるビビアンの家族はともかく、王宮で暮らすことを婚約者であるバレットの実家の筆頭公爵家が許してくれるんだろうか?

 そう言ったことをつらつらと考えていたら、あっという間に放課後になっていた。言われた通り大人しくライオスの迎えを待つ。すると外が騒がしくなって来た。

「お、おい! ま、待て! アマンダ!」

「待ちません! 今日こそはハッキリと言ってやりますわ!」

 ガラッ!

 勢い良く扉を開けて入って来たのはアマンダとバレットだった。というより、バレットはアマンダを止めようとしている感じだ。

「ちょっとアンタ! よくもバレット様に無礼を働いたわね! 婚約者だからと言って調子こいてんじゃないわよ! このブス!」

 ビビアンを指差していきなり捲し立てるアマンダに、

「えっ!? えっ!?」

 ビビアンは戸惑うばかりだった。そしてアマンダを止めようとしているバレットは、いつビビアンのカウンターが発動するのかと戦々恐々としていた。すっかり心を折られていたのだ。

「騒がしいな。一体何事だ!?」

 そこへビビアンを迎えにライオスが現れた。

「ら、ライオス殿下!?」

 いきなり王族が出て来たことで、さすがにアマンダも畏まった。バレットは青い顔をしている。

「待たせたな、ビビアン。さぁ、帰ろうか」

 ライオスはそんなアマンダ達を興味無さそうにチラッと一瞥しただけで、ビビアンの手を握り連れ出そうとする。

「お、お待ち下さい! ライオス殿下!」

 そんなライオスをアマンダが引き止める。

「なんだ!?」

 ライオスは不機嫌さを隠そうともせずアマンダを睨み付ける。一瞬怯みそうになったアマンダだが、気を取り直して続けた。

「なんでその女の手を取ったりしてるんですか! その女はライオス殿下に相応しくなんかないですよ!」

「その女だと!? 貴様、誰に向かって物を言ってる!?」

 周りが震える程の怒気を発したライオスが、射殺さんばかりの視線をアマンダに向ける。

「ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ!」

 それだけで顔面蒼白になった。アマンダではなくバレットが。だがアマンダはそれでも怯まなかった。

「ライオス殿下! 聞いて下さい!」

 アマンダは毅然として言葉を続けた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

初恋の人と再会したら、妹の取り巻きになっていました

山科ひさき
恋愛
物心ついた頃から美しい双子の妹の陰に隠れ、実の両親にすら愛されることのなかったエミリー。彼女は妹のみの誕生日会を開いている最中の家から抜け出し、その先で出会った少年に恋をする。 だが再会した彼は美しい妹の言葉を信じ、エミリーを「妹を執拗にいじめる最低な姉」だと思い込んでいた。 なろうにも投稿しています。

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。 結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。 アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。 アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?

四季
恋愛
もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

処理中です...