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「おい! ビビアン! どういう事だ!?」

 次の日、ビビアンは学園に着くなりバレットに詰め寄られた。

「と、どういう事とは!?」

「惚けるな! 昨日お前の家に行ったら、お前は王宮に行ったと聞いたぞ!? 一体どういう事なんだ!?」

「そ、それが私にも何がなんだか...」

 ビビアンにも分からないのだから答えようがない。

「ふざけるなぁ! そんなはずがあって堪るかぁ!」

 バレットも収まらない。それも当然で、自分の婚約者がいきなり王宮暮らしになるなんて訳が分からないだろう。

 確かに昨日ビビアンはライオスが連れて帰った。だがそのまま王宮に連れて行かれるとは夢にも思わない。バレットが感情的になるのも無理はない。

 だがビビアンにも分からないのだからどうしようもない。このままだとカウンターが発動する。そんな時だった。

「騒がしいな。朝っぱらからなんの騒ぎだ!?」

 騒ぎを聞き付けてライオスがやって来た。ビビアンと一緒に馬車で来たのだが、所用があってビビアンから離れていたのだ。

「で、殿下! こ、これはどういう事ですか!?」

 ライオスが現れたことで若干慌てたバレットだったが、気を取り直して今度はライオスに詰め寄った。

「どういう事とは!?」

「ひ、ビビアンを王宮に連れて行ったことです! こ、婚約者である私に許可なく黙って連れて行くなんて、お、おかしいじゃないですか!」

「婚約者だと!?」

 ライオスはバレットをギロリと睨み付けた。

「ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ!」
 
 それだけでバレットは震え上がる。

「貴様! 良くそんな偉そうな口を叩けるな! ビビアンが実家でどんな状況に置かれていたか何も知らないクセに! ビビアンは使用人以下の扱いをずっと受けていたんだぞ! 貴様はそれに対して何をしてあげた!? 何もしてないだろ!? 婚約者のこともしっかり守れないようなヤツにビビアンを任せてられるか! 何か文句があるなら言ってみろ!」

 バレットは金魚みたいに口をパクパクさせるだけで言葉を発することが出来ない。

「それにな」

 ライオスは怒りを吐き出して幾分スッキリしたのか、やや穏やかな口調で続けた。

「ビビアンはスキル持ちだ。国としてはスキル持ちを保護する義務がある。俺はビビアンを保護しただけだ。婚約者である貴様が保護しなかったからな。こちらにはちゃんとした理由もある。誰にも後ろ指を指されることはない」

 そう言ってライオスはビビアンの手を握った。

「さぁ、ビビアン。行こうか」

「は、はい...」

 バレットはそんな二人の後ろ姿をただ見送るしかなかった。
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