私を虐めたりしたらカウンターが発動してあなたは酷い目に遭いますよ?

真理亜

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 客間では筆頭公爵家の当主であるヘンリーが、息子であるバレットを伴い、イライラした様子でライオスが来るのを待っていた。
 
「ヘンリー卿、待たせたな」

「ライオス殿下、これはどういうことですか!?」

 挨拶も無しにいきなり用件を切り出すとは、筆頭公爵家が聞いて呆れる。ライオスは内心で毒突いた。それでも表面上は穏やかに切り返した。

「どういうこととは!?」

「このバレットの婚約者であるビビアン嬢を王宮で匿っていると聞きました。どのような権限でもってそのようなことをなさるのか、納得できる説明を伺いたいものですな! いくら王族であっても行き過ぎた行為でしょうが!」

「ビビアンは実家で虐げられていた。使用人以下の扱いで朝から晩までこき使われていた。屋根裏部屋に押し込められ、ドレスも靴もアクセサリーも何も買って貰えず、貴族としての教育も受けさせて貰えなかった。家の中ではいつも侍女服を着て動き回り、学園へ通学する時は馬車を使わせて貰えず徒歩で通っていた。そんなビビアンの現状を卿はご存知なかったか!?」

「なっ!? そ、それは...おい! 本当なのか!? お前は知っていたのか!?」

 ヘンリーは慌ててバレットを問い詰める。

「あ、あの...その...」

 バレットはしどろもどろになる。もちろん知らない訳が無い。知っていて敢えて放置していたのだ。

 バレットにとってビビアンは政略目的の結婚相手であり、情の欠片もなかったから、ビビアンがどんな状況に置かれていようと知ったことではなかった。

 それを今この場でぶっちゃける訳にはいかない。バレットは言葉に窮した。

「このバカ者がぁ! 自分の婚約者がそんな状況に陥っていたのを放置していたのかぁ! 恥を知れぃ!」

「ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ!」

 ヘンリーに叱られてバレットは涙目になった。

「ヘンリー卿、親子喧嘩なら家に帰ってからやってくれないか?」

 ライオスは呆れたような口調でそう言った。

「し、失礼しました! 愚息には後でよおく言って聞かせますので、どうかご容赦を!」

「あぁ、そうしてくれ。とにかくこれで、俺がビビアンを匿った理由は分かって貰えたと思う。国としてスキル持ちを保護するのは当然の義務だからな。スキル持ちが冷遇されるなどあってはならないことだ。そうだろう?」

「えぇ、もちろんですとも。その点に関して異論はございません。ですがそれならビビアン嬢は、我が公爵家で保護するべきではないでしょうか? 愚息の婚約者であるなら当然だと思いますが?」

「それはどうかな? 少なくともバレット殿はそうしたくないんじゃないか? なぁ、バレット殿?」

 ライオスの意味深な問い掛けにバレットは真っ青になった。
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