1 / 4
1
しおりを挟む
「聖女テレサよ! 貴様の悪行は丸っとお見通しだ! 貴様のように性根の腐った女は聖女として相応しくない! よって今日からこのインランを新しい聖女にする! そして貴様との婚約は破棄して、インランを俺の新しい婚約者にする! 貴様はもう用済みだ! この国から出て行け!」
王太子のエロスがまたなんかバカなことを言い出したな...本当に勘弁して欲しいんだけど...
聖女としての朝のお務めである、この国全土を覆う聖域結界を張り終えて疲れた体を引き摺って自室に帰ってみればこれである。
面倒だけど相手するしかないか...
「はあ...私の悪行というのは?」
「貴様は聖女見習い時代にこの可愛いインランを虐めたそうだな! 大方、インランの膨よかな体に嫉妬したんだろう! 貴様のそのみすぼらしい貧相な体では無理もないな! オマケに年中目の下に隈を作っていつも暗そうな顔をしおって! 貴様が側に居るだけでこっちまで憂鬱な気分になる! もうウンザリだ!」
「エロス様ぁ~♪ インラン、とっても怖かったんですぅ~♪」
「おぉ~! 可哀想なインランよ! もう大丈夫だ! 心配要らんぞ! なにせ俺達は真実の愛で結ばれているんだからな!」
「エロス様ぁ~♪ インランは嬉しゅうございます~♪」
エロスに淫らな格好でしなだれ掛かっているこのインランって女は、私と同期の聖女見習いだった女だ。
素行が悪く修行も真面目に行わず、男漁りばかりに精を出すような阿婆擦れだからすぐに聖女見習いをクビになった。
聖女になるには聖力を高めるため、断食を含めた厳しい修行が課せられる。私の体が痩せているのはそのためだ。そうやって聖力を高めないと、聖域結界を張ることが出来ない。
そして聖女としてもっとも重要な点は、清らかな乙女であるということだ。要するに処女でなければならない。
その点を何度も説明したのだが、このエロスにはどうしても理解できなかったようで、私に対して何度も何度も体を要求して来た。どうやら下半身でしか物を考えられない生き物らしい。
もちろん全て断った。次の聖女が育つまで私が聖女の座を下りる訳にはいかないからだ。
だから節操なく簡単に股を開くインランに走ったのだろう。厳しい修行から逃げ出し処女でもなくなったであろうインランに、間違っても聖女としての務めが熟せるはずもない。
そして私の目の隈が酷いのは、エロスがこのように公務をサボッているのを、婚約者として私がフォローしているからだ。お陰で万年寝不足状態にある。
そんな自分勝手なエロスからの一方的な婚約破棄と追放宣言に腹が立つやら呆れるやらだが、これだけはちゃんと言っておかねばならない。
「エロス様、残念ですが婚約破棄はともかく、あなたに私を追放する権限はありませんよ?」
王太子のエロスがまたなんかバカなことを言い出したな...本当に勘弁して欲しいんだけど...
聖女としての朝のお務めである、この国全土を覆う聖域結界を張り終えて疲れた体を引き摺って自室に帰ってみればこれである。
面倒だけど相手するしかないか...
「はあ...私の悪行というのは?」
「貴様は聖女見習い時代にこの可愛いインランを虐めたそうだな! 大方、インランの膨よかな体に嫉妬したんだろう! 貴様のそのみすぼらしい貧相な体では無理もないな! オマケに年中目の下に隈を作っていつも暗そうな顔をしおって! 貴様が側に居るだけでこっちまで憂鬱な気分になる! もうウンザリだ!」
「エロス様ぁ~♪ インラン、とっても怖かったんですぅ~♪」
「おぉ~! 可哀想なインランよ! もう大丈夫だ! 心配要らんぞ! なにせ俺達は真実の愛で結ばれているんだからな!」
「エロス様ぁ~♪ インランは嬉しゅうございます~♪」
エロスに淫らな格好でしなだれ掛かっているこのインランって女は、私と同期の聖女見習いだった女だ。
素行が悪く修行も真面目に行わず、男漁りばかりに精を出すような阿婆擦れだからすぐに聖女見習いをクビになった。
聖女になるには聖力を高めるため、断食を含めた厳しい修行が課せられる。私の体が痩せているのはそのためだ。そうやって聖力を高めないと、聖域結界を張ることが出来ない。
そして聖女としてもっとも重要な点は、清らかな乙女であるということだ。要するに処女でなければならない。
その点を何度も説明したのだが、このエロスにはどうしても理解できなかったようで、私に対して何度も何度も体を要求して来た。どうやら下半身でしか物を考えられない生き物らしい。
もちろん全て断った。次の聖女が育つまで私が聖女の座を下りる訳にはいかないからだ。
だから節操なく簡単に股を開くインランに走ったのだろう。厳しい修行から逃げ出し処女でもなくなったであろうインランに、間違っても聖女としての務めが熟せるはずもない。
そして私の目の隈が酷いのは、エロスがこのように公務をサボッているのを、婚約者として私がフォローしているからだ。お陰で万年寝不足状態にある。
そんな自分勝手なエロスからの一方的な婚約破棄と追放宣言に腹が立つやら呆れるやらだが、これだけはちゃんと言っておかねばならない。
「エロス様、残念ですが婚約破棄はともかく、あなたに私を追放する権限はありませんよ?」
54
あなたにおすすめの小説
婚約破棄したのに断罪されそうなんですけど....?
神々廻
恋愛
私は明日、海の向こうの国に嫁ぎます。そして、王家主催のパーティでお別れ会をする予定があのバカ王子のせいで台無しになりそうなんですけど!?断罪する気ならもっと前にしろやぁぁ!!聖女と結婚?出来るわけ無いでしょ!!それでもお前は王族か!!!
全2話完結
聖女が帰らなかったので婚約は破棄された
こうやさい
恋愛
殿下はわたくしとの婚約を破棄して聖女と結婚なさるそうです。
いや『聖女は帰らなかったけど婚約は破棄された』の時に、聖女が帰らない婚約破棄の場合はふつー違うよなと考えた話。けどこれもなんかずれてる気が。
直接的に関係はないです。
プロフィール少し編集しました。
URL of this novel:https://www.alphapolis.co.jp/novel/628331665/678728800
この国を護ってきた私が、なぜ婚約破棄されなければいけないの?
柊
ファンタジー
ルミドール聖王国第一王子アルベリク・ダランディールに、「聖女としてふさわしくない」と言われ、同時に婚約破棄されてしまった聖女ヴィアナ。失意のどん底に落ち込むヴィアナだったが、第二王子マリクに「この国を出よう」と誘われ、そのまま求婚される。それを受け入れたヴィアナは聖女聖人が確認されたことのないテレンツィアへと向かうが……。
※複数のサイトに投稿しています。
婚約破棄が私を笑顔にした
夜月翠雨
恋愛
「カトリーヌ・シャロン! 本日をもって婚約を破棄する!」
学園の教室で婚約者であるフランシスの滑稽な姿にカトリーヌは笑いをこらえるので必死だった。
そこに聖女であるアメリアがやってくる。
フランシスの瞳は彼女に釘付けだった。
彼女と出会ったことでカトリーヌの運命は大きく変わってしまう。
短編を小分けにして投稿しています。よろしくお願いします。
聖女はただ微笑む ~聖女が嫌がらせをしていると言われたが、本物の聖女には絶対にそれができなかった~
アキナヌカ
恋愛
私はシュタルクという大神官で聖女ユエ様にお仕えしていた、だがある日聖女ユエ様は婚約者である第一王子から、本物の聖女に嫌がらせをする偽物だと言われて国外追放されることになった。私は聖女ユエ様が嫌がらせなどするお方でないと知っていた、彼女が潔白であり真の聖女であることを誰よりもよく分かっていた。
愛情がないと婚約破棄された聖女は、ある日『真実の鏡』で公爵様の本心を知りました
冬月光輝
恋愛
「メリルリア。君の功績は素晴らしいものがある。だが、それだけではダメなんだ。なんというか、君からは俺に対する愛情を感じない」
婚約をして半年。メリルリアは婚約者であるベルダンデ公爵の邸宅に呼ばれる。
アレンデール・ベルダンデ――先代の公爵が亡くなりその爵位を引き継いだ若き公爵。
そんな彼はメリルリアが自分を愛していないとして婚約を破棄したいと口にする。
当然抗議するメリルリアだが、アレンデールはそれを聞き入れない。
「これは『真実の鏡』だ。この鏡は本当の気持ちを見ることができる」
それどころか『真実の鏡』というモノまで持ち出して、メリルリアに愛情がないことを証明しようとする。
「やはりそうか。お前は人を愛することを知らないのだ」
『真実の鏡』はメリルリアに人を愛する心がないと証明した。
アレンデールの意思は変わらず彼女は強引に婚約破棄されてしまった。
しかし数日後、メリルリアはひょんなことから本物の『真実の鏡』を手に入れる。そう、アレンデールの『真実の鏡』は偽物だったのだ。
そしてメリルリアは知ることとなるアレンデールが強引に婚約破棄した驚愕の理由を……。
その婚約破棄喜んで
空月 若葉
恋愛
婚約者のエスコートなしに卒業パーティーにいる私は不思議がられていた。けれどなんとなく気がついている人もこの中に何人かは居るだろう。
そして、私も知っている。これから私がどうなるのか。私の婚約者がどこにいるのか。知っているのはそれだけじゃないわ。私、知っているの。この世界の秘密を、ね。
注意…主人公がちょっと怖いかも(笑)
4話で完結します。短いです。の割に詰め込んだので、かなりめちゃくちゃで読みにくいかもしれません。もし改善できるところを見つけてくださった方がいれば、教えていただけると嬉しいです。
完結後、番外編を付け足しました。
カクヨムにも掲載しています。
護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜
ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。
護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。
がんばれ。
…テンプレ聖女モノです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる