6 / 12
6
しおりを挟む
「それだけですか? 他には?」
そんなフリードリヒの態度には目もくれず、アンジュは淡々と問いを重ねた。
「えっ!? あ、あぁ、他になんか言われたかな?...」
フリードリヒは首を捻って思い出そうとするが、上手く行かないらしい。
「そうですか...」
するとアンジュは明らかに落胆したような表情を浮かべてそう呟いた。
「まぁ、もうどうでもいいですね...とにかく退職金はしっかり払って貰いますよ? 王族たる者、まさか約束を反古にしたりなんかしませんよね?」
「ま、待て! ま、待ってくれ! ちゃ、ちゃんと払う! ちゃんと払うが一度にこれだけの大金はいくらなんでも無理だ! せ、せめて分割にして貰えないだろうか?」
フリードリヒは縋り付くようにしてそう懇願した。
「えぇ、構いませんよ。それじゃ分割して月毎に払って下さいな」
「月毎か...そこをなんとか年毎って訳には...」
フリードリヒは尚も譲歩を引き出そうとするが、
「いきません。そんなに時間が掛かるのは却下です」
アンジュに鰾膠も無く断られた。
「だよな...フゥ...分かったよ...なんとかしよう...」
さすがにこれ以上は無理だと悟ったのか、フリードリヒは大きなため息を一つ吐いてそう言った。
「期待してますよ。金の送り先は後で連絡しますから」
「あぁ、分かった...」
「それでは王太子殿下、ご機嫌よう。シン、行こうか」
アンジュはシンを従えて颯爽とその場を後にした。一人残されたフリードリヒは、なんとも言えない後味の悪さを感じて佇んでいた。
◇◇◇
アンジュが去ってから一週間後。
「王太子殿下! 大変です! 結界の一部が崩れてそこから魔物が侵入して来てしまっているとのことです!」
近衛兵が慌ただしくやって来てフリードリヒにそう告げた。
「な、なんだとぉ!?」
一部とはいえ結界が崩れるなどあってはならないことだ。国の存亡に関わる。アンジュが聖女だった時は当然ながらこんなことは一度もなかった。
「騎士団を向かわせろ! なんとかして魔物の侵入を防ぐんだ! それで足りなきゃ傭兵ギルドに連絡して傭兵共を雇え!」
「わ、分かりました! 王太子殿下!? どちらに!?」
「俺は神殿に向かう!」
言うが早いかフリードリヒは神殿へと駆け出していた。
◇◇◇
「おい、神官長! 結界が一部崩れたぞ! 一体どうなっているんだ!」
神殿に着くや否やフリードリヒは神官長を怒鳴り付けた。
「王太子殿下、ご自分の目でお確かめになったら如何です?」
だが神官長は恐れ入る様子も無く粛々と指差した。
「な、なんだこれは!?」
そこにはフリードリヒがアンジュの代わりに選んだ5人の女達が泡を吹いてぶっ倒れていたのだった。
そんなフリードリヒの態度には目もくれず、アンジュは淡々と問いを重ねた。
「えっ!? あ、あぁ、他になんか言われたかな?...」
フリードリヒは首を捻って思い出そうとするが、上手く行かないらしい。
「そうですか...」
するとアンジュは明らかに落胆したような表情を浮かべてそう呟いた。
「まぁ、もうどうでもいいですね...とにかく退職金はしっかり払って貰いますよ? 王族たる者、まさか約束を反古にしたりなんかしませんよね?」
「ま、待て! ま、待ってくれ! ちゃ、ちゃんと払う! ちゃんと払うが一度にこれだけの大金はいくらなんでも無理だ! せ、せめて分割にして貰えないだろうか?」
フリードリヒは縋り付くようにしてそう懇願した。
「えぇ、構いませんよ。それじゃ分割して月毎に払って下さいな」
「月毎か...そこをなんとか年毎って訳には...」
フリードリヒは尚も譲歩を引き出そうとするが、
「いきません。そんなに時間が掛かるのは却下です」
アンジュに鰾膠も無く断られた。
「だよな...フゥ...分かったよ...なんとかしよう...」
さすがにこれ以上は無理だと悟ったのか、フリードリヒは大きなため息を一つ吐いてそう言った。
「期待してますよ。金の送り先は後で連絡しますから」
「あぁ、分かった...」
「それでは王太子殿下、ご機嫌よう。シン、行こうか」
アンジュはシンを従えて颯爽とその場を後にした。一人残されたフリードリヒは、なんとも言えない後味の悪さを感じて佇んでいた。
◇◇◇
アンジュが去ってから一週間後。
「王太子殿下! 大変です! 結界の一部が崩れてそこから魔物が侵入して来てしまっているとのことです!」
近衛兵が慌ただしくやって来てフリードリヒにそう告げた。
「な、なんだとぉ!?」
一部とはいえ結界が崩れるなどあってはならないことだ。国の存亡に関わる。アンジュが聖女だった時は当然ながらこんなことは一度もなかった。
「騎士団を向かわせろ! なんとかして魔物の侵入を防ぐんだ! それで足りなきゃ傭兵ギルドに連絡して傭兵共を雇え!」
「わ、分かりました! 王太子殿下!? どちらに!?」
「俺は神殿に向かう!」
言うが早いかフリードリヒは神殿へと駆け出していた。
◇◇◇
「おい、神官長! 結界が一部崩れたぞ! 一体どうなっているんだ!」
神殿に着くや否やフリードリヒは神官長を怒鳴り付けた。
「王太子殿下、ご自分の目でお確かめになったら如何です?」
だが神官長は恐れ入る様子も無く粛々と指差した。
「な、なんだこれは!?」
そこにはフリードリヒがアンジュの代わりに選んだ5人の女達が泡を吹いてぶっ倒れていたのだった。
97
あなたにおすすめの小説
婚約破棄したいって言いだしたのは、あなたのほうでしょ?【完結】
小平ニコ
恋愛
父親同士が親友であるというだけで、相性が合わないゴードリックと婚約を結ばされたキャシール。何かにつけて女性を見下し、あまつさえ自分の目の前で他の女を口説いたゴードリックに対し、キャシールもついに愛想が尽きた。
しかしこの国では制度上、女性の方から婚約を破棄することはできない。そのためキャシールは、ゴードリックの方から婚約破棄を言いだすように、一計を案じるのだった……
【短編完結】妹は私から全てを奪ってゆくのです
鏑木 うりこ
恋愛
お姉様、ねえそれちょうだい?
お人形のように美しい妹のロクサーヌは私から全てを奪って行く。お父様もお母様も、そして婚約者のデイビッド様まで。
全て奪われた私は、とうとう捨てられてしまいます。
そして、異変は始まるーーー。
(´・ω・`)どうしてこうなった?
普通のざまぁを書いていたらなんか違う物になり困惑を隠し切れません。
婚約者は妹を選ぶようです(改稿版)
鈴白理人
恋愛
アドリアナ・ヴァンディール侯爵令嬢には妹がいる。
アドリアナが家格の同じ侯爵家の三男であるレオニード・ガイデアンの婚約者となり半年経つが、最近の彼は妹のリリアーナと急接近し、アドリアナをないがしろにし始める。
どこでも泣き出すリリアーナにアドリアナは嘆息してしまうが、レオニードはリリアーナをかばい続け、アドリアナを非難する言葉ばかりを口にするようになった。
リリアーナのデビュタント会場で、とうとうそれは起こるべくして起こった。
「アドリアナ・ヴァンディール侯爵令嬢!僕は君との婚約を破棄して、妹のリリアーナ・ヴァンディールと婚約を結び直す!」
宜しいのでしょうか、レオニード・ガイデアン侯爵令息?
その妹は──
私と婚約破棄して妹と婚約!? ……そうですか。やって御覧なさい。後悔しても遅いわよ?
百谷シカ
恋愛
地味顔の私じゃなくて、可愛い顔の妹を選んだ伯爵。
だけど私は知っている。妹と結婚したって、不幸になるしかないって事を……
妹に簡単になびいたあなたが、今更私に必要だと思いますか?
木山楽斗
恋愛
伯爵家の令嬢であるルーティアは、ある時夫の不貞を知ることになった。
彼はルーティアの妹に誘惑されて関係を持っていたのだ。
さらに夫は、ルーティアの身の周りで起きたある事件に関わっていた。それを知ったルーティアは、真実を白日の下に晒して夫を裁くことを決意する。
結果として、ルーティアは夫と離婚することになった。
彼は罪を裁かれるのを恐れて逃げ出したが、それでもなんとかルーティアは平和な暮らしを手に入れることができていた。
しかしある時、夫は帰ってきた。ルーティアに愛を囁き、やり直そうという夫に対して彼女は告げる。
「妹に簡単になびいたあなたが、今更私に必要だと思いますか?」
【完結】その巻き付いている女を、おとりあそばしたら?
BBやっこ
恋愛
文句ばかり言う女
それを言わせている理由まで、考えがいたらなお残念な男。
私の婚約者とは情けない。幼少期から今まで、この男の母上と父上は良い人で尊敬できるのに。
とうとう、私はこの男の改革を諦めた。
そのぶら下げたものをどうにかしたら?と言ってやった。
婚約破棄?から大公様に見初められて~誤解だと今更いっても知りません!~
琴葉悠
恋愛
ストーリャ国の王子エピカ・ストーリャの婚約者ペルラ・ジェンマは彼が大嫌いだった。
自由が欲しい、妃教育はもううんざり、笑顔を取り繕うのも嫌!
しかし周囲が婚約破棄を許してくれない中、ペルラは、エピカが見知らぬ女性と一緒に夜会の別室に入るのを見かけた。
「婚約破棄」の文字が浮かび、別室に飛び込み、エピカをただせば言葉を濁す。
ペルラは思いの丈をぶちまけ、夜会から飛び出すとそこで運命の出会いをする──
【完結】姉から全て奪った妹の私は手のひらを華麗にひっくり返す
鏑木 うりこ
恋愛
気がつくと目の前に美少女がいた。その美少女は私の姉だ。
「アマリエ!お前との婚約を破棄し私はベルローズと婚約する!」
私の隣で叫ぶのは姉の婚約者。え!どういう事?!まずいわ!こいつ頭パプリー殿下じゃない?!
(´・_・`) 難しいですねぇ。習作となります……。
いつか立派で壮大なざまぁを書きたいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる