ファザコンな娘とマザコンな息子をくっ付けようとした結果

真理亜

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 スミス伯爵にはカレンという今年15歳になる一人娘が居る。

 母親であるダリアはカレンを産んですぐ、産後の肥立ちが悪く儚くなってしまった。ダリアの忘れ形見であるカレンは、幼い頃から亡き母親にそっくりだと周りから良く言われた。

 そんな娘をとにかくスミスは溺愛した。これでもかというくらい甘やかして育てた。男手一つで育てるのは大変だろうと、周りから勧められた再婚話も全て断って只ひたすら娘に愛情を注いだ。

 再婚を断っていた最たる理由は、愛娘のこともさることながら、未だに亡き妻のことが忘れられないということの方が大きい。

 貴族にしては珍しく恋愛結婚だったスミスとダリアは、それはもう周り中が引くぐらいのバカップルとして有名だった。

 若い頃から伯爵家の嫡男としての身分の高さに加え、誰もが振り返る程に整った容姿をしていたスミスは、とにかく若い貴族令嬢達からモテまくった。

 自分を巡って争奪戦を繰り広げ醜い争いを繰り返している令嬢達に、ほとほと嫌気が差していたスミスの前に現れたのがダリアだった。幼馴染みのアマンダから友達なんだと紹介されたのが初対面だった。

 ダリアは最初からスミスのことなど眼中にないかのように、スミスに対して自然に接して来た。そんなダリアの反応が新鮮だったスミスは、気付けばダリアと一緒に過ごすようになっていた。ダリアの側は居心地が良かったからだ。

 やがてその思いは恋へと発展し、スミスは熱烈なアプローチを繰り返してダリアのハートを射止めた。

 やがてダリアと結婚し、カレンを授かった時はスミスにとって人生最大の幸福な瞬間だった。だからこそ、そんなダリアが残してくれた娘であるカレンは、スミスにとってかけがえのない存在なのである。これで溺愛しない方がおかしい。

 カレンは成長するにつれ、本当にダリアそっくりになっていった。まるで双子の姉妹のように。嬉しくなったスミスは、ますます溺愛した。毎日愛を囁いた。その結果...

「ねぇん、お父様ん♪ カレン、今夜はお父様と一緒に寝たいですわぁ~♪ 良いでしょう~?」

 一体そんなものどこで買って来たんだ? と、小一時間くらい問い詰めたいシースルーのネグリジェを着て、体をクネクネとさせている娘を見たスミスは頭を抱えた。

「か、カレン、その...随分と斬新なデザインだね...風邪引かないようにね...」

 そう言うのが精一杯だった。
 
「大丈夫ですわぁ~♪ 寝る前にホットミルクを飲みますから~♪ お父様もご一緒しましょう~?」

 そう言ってカレンはスミスにも勧めて来たのだが...スミスは匂いを嗅いで確信する。媚薬入りだと...実の父の寝室にやって来て媚薬を盛って何をするつもりなんだ...

「あ~...済まないが、お父様は急ぎの仕事があるのを思い出したんだ」

 スミスはそう言って、カレンが何か言う前に寝室を後にした。まさかいくら母親のダリアにそっくりだからと言って、思考までそっくりにならなくても...今のカレンは間違いなく実の父親を一人の愛する男として見ているんだろう...スミスは頭が痛くなった。

 育て方を間違えた...

 
 
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