1 / 6
1
しおりを挟む
スミス伯爵にはカレンという今年15歳になる一人娘が居る。
母親であるダリアはカレンを産んですぐ、産後の肥立ちが悪く儚くなってしまった。ダリアの忘れ形見であるカレンは、幼い頃から亡き母親にそっくりだと周りから良く言われた。
そんな娘をとにかくスミスは溺愛した。これでもかというくらい甘やかして育てた。男手一つで育てるのは大変だろうと、周りから勧められた再婚話も全て断って只ひたすら娘に愛情を注いだ。
再婚を断っていた最たる理由は、愛娘のこともさることながら、未だに亡き妻のことが忘れられないということの方が大きい。
貴族にしては珍しく恋愛結婚だったスミスとダリアは、それはもう周り中が引くぐらいのバカップルとして有名だった。
若い頃から伯爵家の嫡男としての身分の高さに加え、誰もが振り返る程に整った容姿をしていたスミスは、とにかく若い貴族令嬢達からモテまくった。
自分を巡って争奪戦を繰り広げ醜い争いを繰り返している令嬢達に、ほとほと嫌気が差していたスミスの前に現れたのがダリアだった。幼馴染みのアマンダから友達なんだと紹介されたのが初対面だった。
ダリアは最初からスミスのことなど眼中にないかのように、スミスに対して自然に接して来た。そんなダリアの反応が新鮮だったスミスは、気付けばダリアと一緒に過ごすようになっていた。ダリアの側は居心地が良かったからだ。
やがてその思いは恋へと発展し、スミスは熱烈なアプローチを繰り返してダリアのハートを射止めた。
やがてダリアと結婚し、カレンを授かった時はスミスにとって人生最大の幸福な瞬間だった。だからこそ、そんなダリアが残してくれた娘であるカレンは、スミスにとってかけがえのない存在なのである。これで溺愛しない方がおかしい。
カレンは成長するにつれ、本当にダリアそっくりになっていった。まるで双子の姉妹のように。嬉しくなったスミスは、ますます溺愛した。毎日愛を囁いた。その結果...
「ねぇん、お父様ん♪ カレン、今夜はお父様と一緒に寝たいですわぁ~♪ 良いでしょう~?」
一体そんなものどこで買って来たんだ? と、小一時間くらい問い詰めたいシースルーのネグリジェを着て、体をクネクネとさせている娘を見たスミスは頭を抱えた。
「か、カレン、その...随分と斬新なデザインだね...風邪引かないようにね...」
そう言うのが精一杯だった。
「大丈夫ですわぁ~♪ 寝る前にホットミルクを飲みますから~♪ お父様もご一緒しましょう~?」
そう言ってカレンはスミスにも勧めて来たのだが...スミスは匂いを嗅いで確信する。媚薬入りだと...実の父の寝室にやって来て媚薬を盛って何をするつもりなんだ...
「あ~...済まないが、お父様は急ぎの仕事があるのを思い出したんだ」
スミスはそう言って、カレンが何か言う前に寝室を後にした。まさかいくら母親のダリアにそっくりだからと言って、思考までそっくりにならなくても...今のカレンは間違いなく実の父親を一人の愛する男として見ているんだろう...スミスは頭が痛くなった。
育て方を間違えた...
母親であるダリアはカレンを産んですぐ、産後の肥立ちが悪く儚くなってしまった。ダリアの忘れ形見であるカレンは、幼い頃から亡き母親にそっくりだと周りから良く言われた。
そんな娘をとにかくスミスは溺愛した。これでもかというくらい甘やかして育てた。男手一つで育てるのは大変だろうと、周りから勧められた再婚話も全て断って只ひたすら娘に愛情を注いだ。
再婚を断っていた最たる理由は、愛娘のこともさることながら、未だに亡き妻のことが忘れられないということの方が大きい。
貴族にしては珍しく恋愛結婚だったスミスとダリアは、それはもう周り中が引くぐらいのバカップルとして有名だった。
若い頃から伯爵家の嫡男としての身分の高さに加え、誰もが振り返る程に整った容姿をしていたスミスは、とにかく若い貴族令嬢達からモテまくった。
自分を巡って争奪戦を繰り広げ醜い争いを繰り返している令嬢達に、ほとほと嫌気が差していたスミスの前に現れたのがダリアだった。幼馴染みのアマンダから友達なんだと紹介されたのが初対面だった。
ダリアは最初からスミスのことなど眼中にないかのように、スミスに対して自然に接して来た。そんなダリアの反応が新鮮だったスミスは、気付けばダリアと一緒に過ごすようになっていた。ダリアの側は居心地が良かったからだ。
やがてその思いは恋へと発展し、スミスは熱烈なアプローチを繰り返してダリアのハートを射止めた。
やがてダリアと結婚し、カレンを授かった時はスミスにとって人生最大の幸福な瞬間だった。だからこそ、そんなダリアが残してくれた娘であるカレンは、スミスにとってかけがえのない存在なのである。これで溺愛しない方がおかしい。
カレンは成長するにつれ、本当にダリアそっくりになっていった。まるで双子の姉妹のように。嬉しくなったスミスは、ますます溺愛した。毎日愛を囁いた。その結果...
「ねぇん、お父様ん♪ カレン、今夜はお父様と一緒に寝たいですわぁ~♪ 良いでしょう~?」
一体そんなものどこで買って来たんだ? と、小一時間くらい問い詰めたいシースルーのネグリジェを着て、体をクネクネとさせている娘を見たスミスは頭を抱えた。
「か、カレン、その...随分と斬新なデザインだね...風邪引かないようにね...」
そう言うのが精一杯だった。
「大丈夫ですわぁ~♪ 寝る前にホットミルクを飲みますから~♪ お父様もご一緒しましょう~?」
そう言ってカレンはスミスにも勧めて来たのだが...スミスは匂いを嗅いで確信する。媚薬入りだと...実の父の寝室にやって来て媚薬を盛って何をするつもりなんだ...
「あ~...済まないが、お父様は急ぎの仕事があるのを思い出したんだ」
スミスはそう言って、カレンが何か言う前に寝室を後にした。まさかいくら母親のダリアにそっくりだからと言って、思考までそっくりにならなくても...今のカレンは間違いなく実の父親を一人の愛する男として見ているんだろう...スミスは頭が痛くなった。
育て方を間違えた...
13
あなたにおすすめの小説
記憶を無くした、悪役令嬢マリーの奇跡の愛
三色団子
恋愛
豪奢な天蓋付きベッドの中だった。薬品の匂いと、微かに薔薇の香りが混ざり合う、慣れない空間。
「……ここは?」
か細く漏れた声は、まるで他人のもののようだった。喉が渇いてたまらない。
顔を上げようとすると、ずきりとした痛みが後頭部を襲い、思わず呻く。その拍子に、自分の指先に視線が落ちた。驚くほどきめ細やかで、手入れの行き届いた指。まるで象牙細工のように完璧だが、酷く見覚えがない。
私は一体、誰なのだろう?
触れると魔力が暴走する王太子殿下が、なぜか私だけは大丈夫みたいです
ちよこ
恋愛
異性に触れれば、相手の魔力が暴走する。
そんな宿命を背負った王太子シルヴェスターと、
ただひとり、触れても何も起きない天然令嬢リュシア。
誰にも触れられなかった王子の手が、
初めて触れたやさしさに出会ったとき、
ふたりの物語が始まる。
これは、孤独な王子と、おっとり令嬢の、
触れることから始まる恋と癒やしの物語
好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が
和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」
エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。
けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。
「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」
「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」
──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
駄犬の話
毒島醜女
恋愛
駄犬がいた。
不幸な場所から拾って愛情を与えたのに裏切った畜生が。
もう思い出すことはない二匹の事を、令嬢は語る。
※かわいそうな過去を持った不幸な人間がみんな善人というわけじゃないし、何でも許されるわけじゃねえぞという話。
義兄のために私ができること
しゃーりん
恋愛
姉が亡くなった。出産時の失血が原因だった。
しかも、子供は義兄の子ではないと罪の告白をして。
入り婿である義兄はどこまで知っている?
姉の子を跡継ぎにすべきか、自分が跡継ぎになるべきか、義兄を解放すべきか。
伯爵家のために、義兄のために最善の道を考え悩む令嬢のお話です。
馬小屋の令嬢
satomi
恋愛
産まれた時に髪の色が黒いということで、馬小屋での生活を強いられてきたハナコ。その10年後にも男の子が髪の色が黒かったので、馬小屋へ。その一年後にもまた男の子が一人馬小屋へ。やっとその一年後に待望の金髪の子が生まれる。女の子だけど、それでも公爵閣下は嬉しかった。彼女の名前はステラリンク。馬小屋の子は名前を適当につけた。長女はハナコ。長男はタロウ、次男はジロウ。
髪の色に翻弄される彼女たちとそれとは全く関係ない世間との違い。
ある日、パーティーに招待されます。そこで歯車が狂っていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる