殿下、人違いです。殿下の婚約者はその人ではありません

真理亜

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『水よ。軽く降れ』

 業を煮やしたミランダは魔法で水を出して、未だに怒鳴り合っている夫婦の頭の上からぶっ掛けた。

「ひゃあっ! つ、冷た~い!」

「うおっぷ! な、なにをする! ミランダ!」

「少しは頭冷えた?」

 ミランダはずぶ濡れになった両親を見下ろすように冷たく言い放った。

「全くもう...みんなの見てる前で恥ずかしい真似しないでよね...」

「うぅ...」

「ぐぅ...」

 恥ずかしいという自覚はあったのか、アマンダとガストンは途端に静かになった。

「パパ、そんなにママのことが心配なら一緒に行けばいいじゃない?」 

「い、一緒に!? だ、だがそれだと...」

「砦の管理くらい私一人居れば十分よ。気にしないで行って来なさいな?」

「いや、しかしだな...」

 まるで自分は必要無いと言われたようでガストンは鼻白んだ。

「ずっとって訳じゃないでしょう? 短期間なら私一人でも回せるって言ってんのよ。でも、なるべくなら早く帰って来て欲しいわ。だから二人で協力して頑張ってちょうだいね?」

 そんな父親の心情を慮ってか、ミランダはそう付け加えた。

「そこまで言われちゃ仕方ないな...分かった。ミランダ、後のことは任せる。アマンダもそれでいいな?」

「しょうがないわね...」

 二人は渋々といった感じで頷いた。

「それとマリウス殿下。南の砦に行きたいとか言ってましたけど、前にも言ったと思うんですがそんなに早死にしたいんですか?」

「うぇっ!?」

 いきなり振られたマリウスはビックリして声が上ずった。

「リリアナ、説明してあげて?」

「分かったわ。マリウス殿下、ご存知無いようだから教えて差し上げますけど、南の砦はここと同じくらい、いやもしかしたらここよりも激戦区かも知れないんですよ? 今の殿下が行ったら半日持つかどうかです」

「そ、そんなに!?」

 北の砦に来た当初、ミランダに言われた事とほとんど同じような事を言われたマリウスはビビり捲った。

「リリアナの言う通りだ。マリウス、悪い事言わないから止めとけ。俺はお前の葬式を出すなんて真っ平ゴメンだからな」

 クラウドにまでそう言われたマリウスは無言で首をコクコクと縦に振った。

「話は纏まりましたね。それじゃあピストン輸送を開始しましょうか。シオン、ファルファル、あなた達には負担を掛けちゃって申し訳無いけどヨロシク頼むわね?」

「グオッ!」

「クエッ!」

 こうして北の砦から南の砦への魔道部隊のピストン輸送が開始された。

『第一陣、出発!』

 アマンダはシオンに、リリアナはファルファルに跨がって空に舞い上がった。それぞれ5人の魔道部隊員を乗せている。
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