【番外編追加】冷酷な氷の皇帝は空っぽ令嬢を溺愛しています~記憶を失った令嬢が幸せになるまで~

柊木ほしな

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第2章

16・それはまるで媚薬のように


「…………ええと」

 ふとヴィエラが目を開けると、ベッドの上だった。
 東の空へ太陽が昇り、雲にさえぎられた柔らかな陽の光が部屋の中に入ってきている。
 ヴィエラはきょろきょろと周りを見回す。室内の内装には見覚えがあった。

「ここは……私の部屋……?」

  白いアンティーク調で揃えられた調度品。天井まで続く大きな窓。続くバルコニー。サイドボードにはアネモネの花が飾られている。
 そこはルーンセルンの王城に与えられた、ヴィエラの部屋に違いなかった。

(私、どうやって戻って来たんだろう)

 自室に戻ってきた記憶がなくて、ヴィエラはゆっくりと記憶をさかのぼる。
 そして思い出した。
 意識を失う前に、何があったのかを。
 誰に、何を、されたのかを。

「……っ!!」

 瞬間、ヴィエラの頬にかっと熱がのぼる。
 顔から火が出るとは、まさにこの事だろう。
 部屋には誰もいないというのに、ヴィエラは誰にも見られないようにと思わず手で頬を押さえた。
 
(私……っ、 私……っ!)

 オズウェルにされたことを、すべてはっきりと思い出してしまった。
 甘やかで、飲み込まれてしまいそうなほどの熱を与えられて、淫らな姿を晒した自分を。
 オズウェルにされるがままに愛撫されて、体に力が入らなくなって。
 それから……。
 
(……いやあぁあ!)

 最後に上げた自分の高い嬌声が、脳内で自動再生されて、ヴィエラは思わず手で耳を塞いだ。
 自分のものとは思えないほど、甘く高い声。
 まるで何かを誘うような。
 
 だが、それを最後にふっつりと記憶がない。
 
(私……もしかして、最後までされてしまったの……?)

 男女が結婚したら、どんなことをするのか。
 しなくてはならないのか。
 ヴィエラとて経験はなくとも、知識としては知っている。

 オズウェルとの結婚を控えている以上、いずれオズウェルと体を重ねることを覚悟はしていたつもりだった。
 ヴィエラは皇妃となる。世継ぎは必要だ。

 それでも、どんどんオズウェルに乱されていく自分の姿に、今はまだ耐えられそうになかった。
 思い出すだけで、恥ずかしくてたまらない。
 ただ、どこまでされたのか記憶がないのはいかがなものか。

(……だいたい結婚前なのよ? 処女を捧げるにしても、初夜だと思っていたのに)

 ヴィエラの祖国メーベルでも、ここルーンセルンでも、婚前交渉はあまりよしとはされていない。
 最後までされていなくとも、あれだけ体を愛撫されては奪われたも同然だろう。

(いや別に婚約者であるオズウェルにされたのだから、奪われても問題ないといえば問題ないのだけれど)

 どの道、オズウェルはもうじきヴィエラの夫となる相手だ。
 メーベルとの国際関係もある以上、簡単に婚約破棄も離婚もできない。
 それにこの婚約自体、オズウェルの側から持ちかけてきたものだ。
 関係が揺らぐことがないから、処女を喪失しても次の嫁ぎ先の心配などをしなくても大丈夫ではあるが……。

(だからって、私にも心の準備くらいさせて欲しかったわ)

 果たして時間が与えられたところで心の準備が出来たかは怪しいところではあるが、ヴィエラはぷうと唇を尖らせる。
 そもそもたとえ心の準備ができたとしても、ドキドキしすぎて壊れそうなほどに心臓が鳴るのは間違いないけれど。
  
(私……嫌じゃなかった)

 オズウェルに熱を引き出すように触れられて、心の奥から湧いてきたのは嫌悪ではなく……。
  
 求められていることに対する、女としての悦び。

 それはまるで媚薬のように。
 甘くじんわりと。
 心の奥深くまで浸透していく。

 オズウェルに触れられた時に宿った熱は、今もまだヴィエラの中でくすぶっていた。
 
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