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第4章
46話
リーナの突然の謝罪に、エフェルはリーナが何を言っているのかすぐに理解することが出来ないようだった。
幾分かの間を空けて、エフェルが口を開く。
「思い……だしたの……?」
問う声は掠れていて、とても弱々しかった。
エフェルの唇が、わなわなと震える。
「前の時も、その前の時も……。僕のことなんて思い出さなかったくせに……今更……!」
「エフィー……ごめんなさい」
エフェルはどんな気持ちで、この長い年月を過ごしてきたのだろうとリーナは考える。
リリアが結晶で自害してから、リーナに転生するまでの正確な期間は分からない。
だがリリアとリーナの間には、既に二人経ているのは確かだった。
「最初の時、何度も過去のことを教えてあげても君は思い出してくれなかった……。次の時もそうだ……! 忘れているくせに、僕からいつも逃げる……!」
あの運命の日から、どれくらいの月日が過ぎ去ったのだろう。
どれほどの長い時間を、エフェルは一人で過ごしたのだろう。
リーナは瞼を伏せた。
エフェルがリーナの両腕をぎゅっと握ってくる。
まるで縋られているようにリーナには感じられた。
それは甘い檻のように、リーナを動けなくさせる。
「謝罪なんていらない。そんなものいらないから……僕とずっと、一緒にいてよ」
「エフィー……」
エフェルの細い腕が、リーナの身体を抱きしめる。
もう、リーナはそれを完全に突き放すことが出来なかった。
だけど、どうしても伝えておきたいことがある。
リーナはエフェルの金の瞳を見つめた。
「思い出したけれど、それでも私はリリアじゃないわ。リリアにはなれない」
リリアにとって、エフェルがヴィンスの代わりにはなれなかったように。
エフェルの身体が強ばる。
しかし、リーナもこれだけは譲れなかった。
「あなたがリリアを愛しているように、私だってヴィンスを愛している。あなたのものにはならない!」
リリアの記憶を思い出しても、どうしても変わらなかったものがある。
それは、ヴィンスに逢いたいという気持ちだ。
リリアの気持ちに引きずられていると言われればそれまでだが、リーナがヴィンスにどうしようもなく惹かれているのは事実だった。
リーナは自分の意思で、ヴィンスを選ぶ。
リリアと違うのは、そこに迷いがないことだ。
(……本音を言えば、少しだけある)
けれどそれはリリアを思ってのものであり、エフェルに同情する気持ちこそあるが、自身の願いを諦めようなんてさらさら思わない。
「また、ヴィンス、ヴィンス、ヴィンス!! もううんざりだ!!」
「きゃ……っ」
エフェルはリーナの腕を引くと、鏡の前まで連れていった。
金に縁どられている、あの姿見だ。
「君は僕のものだ……! その目に焼きつければいい!」
「いや……っ」
エフェルはリーナを後ろから抱きしめ、首筋に口付けた。
リーナの白い肌を、きつくきつく吸い上げる。
ピリッとした僅かな痛みに、リーナはビクリと身体を跳ねさせた。
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