あの子のお祝い

冬生まれ

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その神社には、神様がいた。

地元を守護する氏神様だ。

元は怨霊だったと宮司は云う。

白い着物の若き青年。

彼はいつも地元の人達を見守っていた。

神社へ訪れる者には幸を授け、祀る人には福を授ける。

けれどもある時、花嫁が命を奪われた。

白無垢が赤く染まるまで、百ある石段から転げ落ちたという。

遺族や地元の人々は氏神様の祟りを畏れ、花嫁を弔わなかった。

無縁仏となった花嫁は、あの世に行けず……。

嘆き悲しむ彼女を氏神様は嫁に貰った。

今では二人、仲睦まじく。

いつしか此処は、夫婦【めおと】神社と呼ばれる様になったという。
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